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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は驚く

 森は見通しが悪いが、町は海岸線からそう離れてはいないため、暗闇に目が慣れた頃には小さな門にたどり着いた。門と言っても丸太が2本建てられているだけで、塀もなにもないから、おままごとのようなもので、これが門ですと言われただけだが、そう言われればその先は町であるような気がするから不思議なものだ。周囲とさほど変わらない砂地に近い地面に1歩だけ足をホイと出しただけなのに、森から抜け出たような気になる。

「こっちこっち」

 ヒナダはなんだか楽しそうに朝とハバラを手招き、ハバラの顰め具合は大きくなっているが、朝はどちらかと言えば好奇心の方が勝っているので、斜め後ろの渋面を見ないようにヒナダについて行く。

「入れよ」

 連れていかれたのは、それでも少ない町の家々を外れた、森の果てにある小さな空き地の、さらに端にある、大型の物置小屋のような建物で、小さな窓がいくつかあるがどれもから明かりが漏れ、室内の騒めきが聞こえてくる。

「早く早く」

 ヒナダは我が家に案内するように遠慮なく扉を開けた。

「連れてきた。実験体だ」

「え?」

「おまえ」

 朝とハバラの声に重なるように、開いた扉の向うから大きな歓声が沸き上がった。

「やったっ!」

「でかした、ヒナダっ!」

「ヒナダさん、最高っす!」

「ふたりもいるの? 重量的にどうかな。え、ヒナダちゃんも乗るの?」

「ちゃんは止めろ。俺がいかないでどうするんだ」

「ヒナダさん、剛毅っす!」

 その轟の中から、ハバラとその背後に庇われた朝にひとりの男が近づいてきた。

「……そうか、行ってくれるか……」

 小柄で細面で見たことのない四角い眼鏡を、朝は眼鏡はすべからく楕円で分厚いものと思っていたので、この時は眼鏡とわからず変な仮面と思っていたが、つけた男は、感極まったようにハバラに深々と礼をした。

「ありがとう。これでようやく……!」

 悪意は感じられなかった。

 ハバラは後から、ぽつりと朝に言った。

 それは手を握り締められた後、それでも足りないとばかりに抱きしめられて茫然としたことに対する、ハバラなりの言い訳で、朝は「うん、わかった」としか答えられなかった。







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