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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は海から上がる

 舟はゆっくりと進路を変えて、港町から離れて行く。

 また崖沿いに、今度は舟は西に進む。港町から遠ざかる分にはそれほど危険はない。ハバラとヒナダは交互に仮眠をとった。

 朝にできることと言えば、ハバラが指示したように3人分の荷物を分け直して纏めておくぐらいで、それほど時間はかからない。あとは時折、舟の揺れに響かないように、ヒナダに教えて貰いながら体を伸ばしてほぐす。ヒナダは話し方は雑だが、教え方が上手い。ちょっとした事でも誉める。海の上で体を柔らかくするコツを教えて貰う事になるとは、朝もさすがに思いもしなかったが。



 舟を下ろした崖を通り過ぎ、丸1日を越え、再び太陽がすっかり隠れた後に、舟は森伝いだと2つ離れた町、ハバラが行ったことがあると話していた町の狭い浅瀬に辿りついた。

「あの奥だ。狭いが入り江がある」

 朝を岸辺に下ろした後、ヒナダはハバラと舟を隠した。それほど待つこともなく、ふたりは戻ったし、海岸線で動く物はなにもない。

「どこへ行くか聞いてもいい?」

「ちょっくら見てくるから、まずはここで待っててくれ」

 ヒナダは言い終える前に闇に紛れていく。振り向くとハバラは荷物を背負ったまま、海岸線と崖を分ける低い茂みへと朝を導く。

「おそらくまだあの町の騒動は届いていない」

「わかるの?」

「ああ。届いていればこれほど静かではない。もしくはもぬけの殻という事も考えられなくはないが、あっちの木立の向う」

 ハバラが指示した木立ちの上のとっぷり暮れた空に、うっすらと白い筋が何本か上がって見える。

「まだ起きていて火を使っている家があるということだ。誰もいないわけじゃない。そして煙は竈を使っている程度の細さだ。騒動が起きて燃えているわけでもない」

「なるほど」

 感心しきりに頷く朝に、ハバラが苦笑を浮かべた時、走る音も気にせずにヒナダが戻ってきた。

「まだなんも届いてねぇ。大丈夫だ。とりあえず、紹介したい奴がいるから、そこへ行こう」

 立ち上がった朝の背後で、ハバラが「空か」とぼそりと、しみじみ嫌そうに呟いた。



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