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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は黙っている

 崖に隠れるように海を行くうちに日が昇り、出てきた港町へと近づきながら、さらに隠れるように舟を進める。ようよう港の入り口が見えてきた時、舳先からハバラに舵の指示を出していたヒナダが小さく息をついてから囁いた。

「船は止めた方がよさそうだな」

「もう1艘港に来るはずだが」

 ハバラは港に戻り、後から来ると聞いていた来た時とは別の船に乗り込むつもりだった。

「帆柱に旗が上がっている。見えねぇか」

 そっと示す指の先に、ゆっくりと進路を桟橋方向へと変える大型船が小さく見える。

「……そうか。やはりチャレット族は囮か」

「ああ。内乱を扇動した奴らがつるんでたってことだろう」

 そしてヒナダはハバラを眇めた目で振り返った。

「お前、その辺、知ってたろう」

「いや、あの旗までは掴んでいなかった」

 ハバラの表情が、ヒナダにそれ以上の追及を諦めさせた。

「どこまでかはわかんねえが、町まではまだ情報が届いていなかった。だがこうなると2、3ヶ国とも思えねえ。まあ、それほど大きな国じゃねえだろうが」

「ああ、そうなると、一旦戻るのが策かな」

 舟は港へは近づかないまま、ゆらゆらと崖の陰で揺れている。

「……ハバラ、とりあえず砂漠に行かねえか」

「……どうやって」

 ヒナダがふっと口元を歪め、愉快そうな笑顔になった。

「空から」

 ハバラは眉をびくりと上げると、久々にひどく嫌そうな渋面になった。

 こうした会話の最中、朝はずっと舟の中ほどで荷物を膝に抱えながら、黙ってふたりの顔と明るくなる空と海とを見比べ、大事に飲めと渡されている水をちびちびと舐めていた。

――私って、ほんとうにいつでもどこでも眠れるんだわ。

 この中で、十分に睡眠をとれたのは朝だけで、ふたりのやりとりの中でもぼんやりと頭に浮かぶのはそんなことだった。







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