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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼と夜は手伝いを申し出る

 家の中の案内をされた際、教授が昨晩からどうも水漏れがあるようだと言った。

「少し手を入れるだけで大丈夫と思いますよ」

 見てきましょうと言った夜が屋根裏から降りてきてそう告げると、リ・シャンイー教授はほっとしたような顔をした後、「誰に頼めばいいんだったか」と傍らの家事一切を引き受けている女性を振り返った。

「この間の大雨で修理が必要な家が殺到して、どのくらいで来ていただけるかわからないと、隣の奥様が仰ってましたからねぇ」

 心許ない風な女性に、夜が「道具さえあれば、私が直せますよ」と微笑んだ。

「え、大丈夫ですか?」

「このぐらいなら慣れていますから」

「そうは言っても、ああ、そうか、君たちは女性だけで暮らしているんだったか」

 教授も驚いて見開いたままの目で、夜と、はしごに手を置いて支えていた昼を見比べた。

「はい。多少のことは自分たちでできないと困りますから」

 教授と、「こちらの奥様と一緒に嫁いできたようなもの」というワンソウ夫人という女性は、なるほどなるほどと頷きながら、嬉しそうに「お願いします」と言ってから、ふたりして道具を探しに行った。



 その奥様は数年前に亡くなられ、一粒種の息子が学園都市を嫌って出て行ってから、教授は通いのワンソウ夫人以外には仕事関係の人間としか交流が無いという。こういう家の困りごとには1番頼りにならないと言われても、教授は顔を顰めるだけだ。だがワンソウ夫人は「この町で家のことで頼りになる学者さんはいませんがね」と、慰めになるかどうかわからない言葉を付け足してはいた。



 道具のあれこれをなんとか調達してもらい、夜はすぐに屋根裏の修理にかかる。その間に、昼は教授とワンソウ夫人に、「裏庭はもう使われていないのですか?」と、気にかかっていたことを尋ねた。ひととおり見せてもらったのだが、十分に手が入っているようには見えない。なんとか形にしようと努力している気配があるのだが、元気が無い。

「奥様が亡くなられるまではもっとできていたんですけれど、私はどうも不器用で、それに年のせいかすぐに腰が痛んでしまって」

 もちろん、リ・シャンイー教授が庭仕事などできるわけもない。庭師を雇うほどでもないと言われればそれまでだ。

 そういうわけで昼は畑を世話を申し出て、ようやく昼と夜は、少し、息を抜くことができた。





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