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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼と夜は解説をうける

「そうねぇ。国というより、民族というか」

 リ・シャンイー邸にもうひとり学者が増えた。

「ふたりにはこれが青く見えるのよね。そうね、空の色で良かったかしら」

 夜が頷く。

「はい。岩そのものは白いですが、きらきら光る青を内包しています。空を白い岩でくるんであるような感じで、北の山脈の方へ行くと、そうした岩が重なって屏風のような崖になっている場所があるんです」

 昼も続ける、

「家からはそれほど遠くないし、貴重な野草が取れたりするのでたまに出かけています」

「そう。あなたたちのご両親の祖国はもっと東南の方だったかしら」

「ええ、あの」

「あ、待って、国名はいいわ。とりあえず置いておきましょう」

 人類学という壮大な学問を専攻としていると豪語するカナイ・エンイ博士は、博士と呼んで差支えないと言う彼女は、学園都市では唯一と言っていい誰もが知っている博士だという。それなりの広さがあるのにある意味閉鎖的なこの都市で、専攻している学問のせいか、もともとの性格故か、誰もが知り合いとして名をあげるそうで、この度、ユウノ・エンゲとリ・シャンイーが揃って「ちょっと来てもらおう」と呼びだしたのだ。

「国というか、その地域によって人々の特徴が違うのはわかるでしょう。例えば、彼は」

 カナイ・エンイ博士が手のひらでユウノ・エンゲを指し示す。

「肌と髪の色から砂漠の西側、南の国の出身だとすぐにわかるわ」

「この国での僕の同胞は少ないけどねぇ」

「それも今は置いておいて。そして彼は」

 次に、ひらりと、カナイ・エンイ博士の手がリ・シャンイー教授に移る。

「肌は黄みがかった白、瞳はこげ茶、髪はくるくるとした巻き毛で薄い黄色。背が高くて、学者なのに筋肉質でまあ、太りやすくもあるか」

「余計なお世話だっ」

 リ・シャンイー教授は即座にお腹を隠したが、それに構わずカナイ・エンイ博士は続ける。

「ここより北の国の出身でしょう。そしてそういう私は女性にしては背は平均的だけど骨太。肌色は赤みがかった黄褐色、髪も瞳も黒。砂漠の東の縁にあるもっとも北の国からきました」

 そしてふっと笑った。

「あら、もとからこの国の人は誰もいないのね」




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