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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼と夜はいたたまれない

「物理数理学っていうのはね、この世の理を知るための学問なんだ」

「わかったふうに言うな、この青二才が。地政学は人類の歴史を予知する学問だ」

「予知? それ、当たらないでしょう。どちらかっていうと予測じゃない? それでも確率は低いよね。数理物理学はそんなあてにならないことはないからね」

「なんだとっ。地政学とは」

「あの比べるには土俵が違い過ぎるのでは」

 恐る恐る口を挟んだ夜の言葉に、ふたりは揃って頷いてお茶を飲んだ。

「そうだね、まあ、そこはちゃんと尊重しないとね」

「お互いの居場所が異なるものを比べてはいかんな。ええっと、どれ。ああ、ほらその焼き菓子も食べなさい」

「ありがとうございます」

 昼が軽く会釈をして菓子を手にとり、ひとつを夜に渡した。

「まあ、奴が元気そうでなによりだよ。それにしてもこの手紙は厚いな。論文なみだな」

「僕の論文は完結で美しいので厚くはならないけれどね。しかし、数式の説明にはそれでも薄すぎるな」

「お前の論文の話などしとらん。というより、なぜまだここにいるんだ。もう帰っていい」

「僕は彼女たちを助けた恩人なので」

「ずうずうしい、これだから理系の人間は情がわからないと」

「あの、先生はなんと?」

 再び夜が口を挟み、ふたりは揃ってお茶を飲んだ。

「ああ、君たちがここへ来ることは前もって届いた手紙で聞いていたが、その主な理由についての詳細と私にして欲しいことをより細かく書いてあるようだな。まあ、待ってくれ。この頃やたら目が疲れるのでなかなか早く読めないんだ」

「それは所謂老眼という奴だよね。なに、僕の知り合いで薬理学を専攻する人間がよく効く薬を作っているから、今度持ってきましょう」

「何を言ってるんだ、お前は。老眼に効く薬など無い。これは加齢が原因なんだ。理系のくせにそのぐらいわからんのか」

「あなたは世界を学ぶわりには頭が固いし、情報が古いんじゃないかな」

「お茶のおかわりをいれてもよろしいでしょうか」

 昼がポットを手に取ると、ふたりは揃ってカップを差し出した。





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