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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼と夜は訪ねる

「迷惑」

 そのひと言で扉を閉められ、昼と夜はポカンと口を開けたまま立ち尽くした。

「だって。どうする?」

 ユウノ・エンゲは変わらずに片側だけ唇を上げた皮肉な笑顔のままでふたりを見つめている。

「どう、どうしましょう」

「どうも」

 どうもこうもない。頭ごなしに拒絶されるという事態は想像だにしていなかった。恩師によれば、たいそう面倒見のいい親切な男性で、ちょうど三つ子の両親ぐらいの年齢だし、きっと実の子のようによくしてくれるだろう、手紙を出しておくから着いた頃には待ち構えているかもしれない、驚かなくても驚いたふりをしてあげて、とそこまで言われていたのに、持参した恩師からの願いの内容が書かれた分厚い封書を手渡す間も、それこそ恩師の名を口にしてすぐの拒絶である。

 わざわざ驚くふりをする必要などなく驚いた。

「……とりあえず、話だけでも聞いてもらわないといけないと思うのだけれど」

「そうよね、そうしないと」

「いやあ、取り付く島もないってやつだったけどね。もっかい出てきてくれるかな」

 困ったように見つめあう昼と夜を見ながら、ユウノ・エンゲはいっそ楽しそうに呼び出し用のベルを鳴らした。

 今度は扉すら開かず、返事が無い。

「ちょっと時間を置いてみたらどう?」

「時間、ですか」

「うん。少し考えさせてあげようよ。ここまで来た人がいるって事実を受け止めきれないのかもしれないからさ。ちょっと、うち来ない?」

「え?」

 昼が怪訝な顔で体を引いたのに対し、夜は「いいのでしょうか?」と首を傾げた。

「あはははは」

 ユウノ・エンゲは破顔すると、ふたりを見比べて言った。

「力の無い女性としては、見ず知らずの男の誘いは断るのが正解。でもこんな町で頼りになる人間を逃すのは却って危ないから、この状況下では僕を頼るのが正解。もっとも」

 ユウノ・エンゲがすうっとひとさし指を扉に向けるのと、バタンと大きな音を立てて扉が開かれるのはほぼ同時だった。

「そんな危ない奴の言葉に乗るのは不正解だっ!」

「……失礼だなぁ、この町で僕ほど正解率の高い人間はいないのに」

 昼と夜は、この不思議な程ぴたりと揃ったタイミングを、やはり口をポカンと開けて眺めるしかなかった。







 


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