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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼と夜は迷う

「何度目、かしら」

「4度目よ」

「そんなに?」

「……仕方がないわ、もう1度聞いてみましょう」

 夜は昼を促して、本日5回目の道を尋ねるべく、ぐるりと辺りを見回した。



 この国の学園都市は、扇状に広がっている小規模な市である。要の部分が駅で、この路線の終点である。用事がある人しか来ない駅なので、それほどの乗降客は多く無い。というより、少ない。

 首都に着いてから2回乗り換えをしたが、どこも目が回るほどの人がいたので、ふたりはこの小さな国にこれほどの人が住んでいるのかと、本当に目を回した。ジオラマで確認した国の大きさは周辺国よりもひと回りも小さくて驚いたほどなのに。

 それでも学園都市の駅までは造作なかった。駅員は誰も親切で、ふたりでする旅は楽しさを感じた。

 だがしかし、それは学園都市の駅を出るまでだった。

 駅を基点として半円を描くように広場が作られている。広場にはいくつものベンチやテーブル、小さな花壇があるが、花壇以外に彩がない。花壇にはきっちり埋め尽くすように花が咲いているが、右から左へときれいにグラデーションをつけた花たちはあまりにきれい過ぎて、なんだか人工物めいている。昼も夜もあまりの「きちんとさ」加減に目を疑い、しばらくその花々をしげしげと観察してしまったほどだ。その結果、嘘くさいけれど本物と意見が一致した。

「……誰もいない」

 花壇から顔を上げた時、夜はどこかで見たような光景に目を瞬いた。

――あの時は。

 あの町も人気の無い町だったけれど、夜はモン老人と、そしてアシと出会うことができた。だからまだ余裕もあったかもしれない。

 その2時間程後、夜は(甘かったかもしれない)と、自分の考えに首を振ることになる。

 花を見ていた間に、ちらほらといた列車を降りた人々もいなくなったため、昼と夜は慌てたように腰を上げて目的地を探した。

 半円形の広場から扇の骨のように道が伸びている。そして区画ごとに道は微妙にずれている。そのためか、わざわざ恩師が書いてくれた地図を見ながらなのに、まっすぐに歩いたはずの道は微妙にずれて、目的地をあっという間に見失った。

 その上、この町はどこも同じ壁、同じ門、同じ高さの小さな窓が道沿いに連なっている。どの角まで歩いても、どの角で曲がっても、同じ壁、同じ門、同じ高さの小さな窓。

 歩いて10分も経たないうちに、昼は最初の溜息を吐いて妹を見た。

「なんか、気持ち悪くない?」

 夜は黙って頷いてから、地図と道を見比べ、最初の音を上げた。

「誰かに聞くしかないわ」

 そして誰も通らない道を見てから、「どこかで尋ねましょう」と同じ門を見比べ、どこを叩けば開くのかと考えた。

 そうして、それを4度繰り返して、5度目の門を探している時に、やっと誰かが声をかけてきてくれた。

「迷ったんでしょう?」






 

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