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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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朝は次の港に着く

 港は小さいが浅瀬の地域が狭いため、船着き場は大きく作られ、大型船もしっかり横付けできるため、港町に降りるのは容易かった。

「……森、よね」

「そう。あの先は森だ。砂漠の南にあるあの森だと思われている」

「思われている?」

 朝はハバラから港町に目を戻した。

 外海から陸地に上がるまでは案外早かった。ハバラが船長から聞いた通り、日が昇り始めた頃には陸地を見つけ、沈む頃には着岸していた。

 残光で見渡す港町はこじんまりと、かろうじて湾曲している湾にしがみつく様に数十軒が建ち並んでいるだけで、海と反対側にはわさわさと生い茂った木々が森を形作り、海と同じようにどこまでも果てが無いように見える。

「地図を思い出せ。内海を抜けて外海へ出た、そこから進路は西へ向いた。わかるか」

「あの、地図に無い海ね」

 地図の真ん中に砂漠を置いて右の東側の諸国を抜けて辿り着いた長い内海を南へと下った先。船はそこから西へ、地図で行けば砂漠から右、下、左と動いている。

「そうだ。どの地図を見ても森から下は描かれていなかったところだ」

「でも船はそのあたりは危ないから近づけない、と言われたわ」

 グラカエスにもギュイットにも、危ないとしか聞いていない。もっともフォン師は「危ないというよりは怖いんだな。未知のところだから」と言っていた。

 そういえば、ハバラは森の話はしなかった。

「あなたは行ったことがあるの?」

「俺はこの町とここより少し西にある港町までだ」

「そもそも、危ないというところに町があるのはなぜ?」

 朝は目の前を幼子を連れた夫婦が通り過ぎるのを見ながらハバラに訪ねた。

「需要があるからな」

「需要」

「そう、この海岸線にそって鉱脈がある。この線に沿ってしか採れないから町ができる」

「最初に誰が見つけたの?」

 朝の素朴な問いに、ハバラが苦笑した。

「お前、本当におかしなところを聞きたがるな」

「おかしいかしら」

「その話は、知り合いに最近の動向を聞いてからだな」

 どこにでも知り合いのいる人だなと思ったが、そんな人でなければ朝を連れてこんなところまできて貰えなかっただろうとも思う。

「常ならここから鉱石の取引の関係でお前の両親の故国へ行ける船があるんだ」

 地図では右へ戻る形になるが、内海を通らず、外海を東へと進む船があるらしい。

「そこで最近の情勢が、というわけね」

「学んだな」

「ありがとう」

 ハバラは「嫌味じゃない」と笑いながら、1軒の家の戸を叩いた。






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