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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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昼と夜の旅の途中

 首都までは丸3日かかった。途中の町で1泊したからだ。それは雨が激しく見通しが悪かったせいで列車が止まってしまったからだ。線路上の1ヶ所、崖の上を通る場所があり、そこは雨で崩れやすくなるので点検をしながら運行しなければならない。そこで昼と夜は列車の中で時を過ごしても構わないと言われた。

「でも女性にはお勧めできません」

 列車の乗務員に言われるまでもなく、ふたりは宿の手配をお願いしたし、それはそれは迅速に駅員は小さいが十分な清潔な宿を用意してくれた。

「なんか、楽しいわね」

 雨を縫って駆け込んだ部屋に入った時、思わず昼はそう言ってしまった。すでに部屋はストーブが点けられて暖まりはじめていたからかもしれない。

「そうね」

 夜は姉の顔を見て、部屋を見回して、微笑んだ。

 この旅の目的を考えればそう言っていいのかわからないが、確かに楽しい。ひとりで列車に乗った時のワクワクとはまったく違う楽しさだ。

「楽しい、わね」

 もうひとりの姉の顔を思い浮かべ、夜は頷いた。どこにいても、朝はしれっと楽しさを見つけることだろう。夜にはそれがわかったし、それはとても嬉しいことだった。

「そうそう、明日、コーヒーを入れてくれるっていうから、預けてくるわね」

 保温瓶を掲げ持った昼に、夜はもう一度頷く。

「有難いわね。あ、お湯を貰えるのかしら」

 夜は部屋の片隅の敷居の奥に小さなバスタブがあるのに気が付いた。

「あら、素敵。貰えれば助かるわね。それも聞いてくるわ」

「なら一緒に行く方がいいわね」

 部屋は屋根裏に近い3階にある。水にしろ湯にしろ、運ぶのは大変だ。2階以上に水の出る施設は滅多に無い。

 姉妹が階下に行けば、宿の主人から一緒にここまで来た駅員、乗務員まで皆が手伝って沢山の湯とお茶のセットまで用意してくれたため、昼も夜もこんな旅ならいつでもいいかもと思うぐらい楽ができた。

 もっとも首都に着いたふたりは、それはちょっと甘い考えだったと気づくことになる。


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