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豆畑の外は世界の果て  作者: 大石安藤
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夜の考察

「場所はだいたい把握できた、と思うけれど」

 夜は腕を組んでジオラマを見下ろした。毎日仕事を終えてはいままで学んできたことを纏めてきたので、現在の国々の位置や環境は理解できた。問題は今の関係性はおおよそわかっても、そこに至るまでの歴史が膨大で、因果関係が十分ではないというところだろうか。

「こことここの関係は良好。でもここは微妙。どうしても東側はわかりにくいわね」

 広い砂漠の東側からの情報はやはり少ないし、正確さに劣るようだ。砂漠を通れないから、北なら山脈沿い、南なら森を辿る、後は川。

「川っていうか、海なのかしら。河口から海へ出て」

 ぐるりと回る。おそらく南の森のその先に海路があるようなのだが、ジオラマでは再現されていないのでわからない。そこが書かれた地図もない。

「これ以上はわからないから、道筋を考えても仕方ないかな」

 歴史をどれだけ学んでいったとしても、世界のすべてを理解することはできないだろう。

「西側は政策とかでも敵対していないみたいだけれど、物流が止まってしまうと危ういところもでてきてしまうっていうこと、なのかしら」

 国内の情勢など詳しいことはわからないから、アシが予備役に入ることになるほどの国々の危機感は夜には理解が及ばない。

 そして、三つ子の住むこの国の立ち位置も夜にはわかりにくいことのひとつだ。

「川、山脈、砂漠」

 交易は盛んでそこそこ富んでいる。移民が多い。周辺の国々を見渡してもい1、2を争う多くの民族が住んでいるだろう。

「だから」

 三つ子の村にいる移民を家系に持つ人達も、恐らく三つ子だけではないはずだ。移民だということでいじめられたこともない。

「そうなんだけれど」

 それは夜の記憶の中にないだけかもしれない。いまも村の人々にはよくしてもらっているけれど、どうも恩師がいろいろ働きかけてくれたおかげでこうして馴染ませてもらえたのではと、近頃思い始めていた。

「それに」

 この村は情報が遅い。そしてなんとも。

「穏やか、というか、のんびり、というか」

 夜は村を出て他の国へ行ったことで初めて気が付いたことがいくつかあった。

 どこの国でもどんな町でもそこには独自の空気がある。明るい、暗い、眼差しが柔らかい、とげとげしい、好奇心が強いなど、おそらくその地の人々の気性が空気を作り上げているのだろうし、それには土地の位置もかなり関係しているのではないだろうか。

 外に向かって開かれた土地に住めば明るい空気に、閉ざされた土地なら静かな空気になるというように、そう夜は考え、そして自分たちの住む村にはたと思いをはせたのだ。

「……ちょっと、変わってる?」


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