59.ブリアの大泣き
ケビンとローランドの馬車がハート公爵邸へ着く少し前にブリアは到着していたのだ。
ブリアは無我夢中で走り、ハート公爵邸へ着くなり驚く執事も目に入らない程にブリアは真っ先にキールの部屋へと向かったのだった。
ブリアはノックもせずキールの部屋へと飛び入った。
とても令嬢とは思えない程走ってきたせいか髪の毛も乱れ洋服も乱れかけていた。
息を切らせていきなり入ってしたブリアに部屋の中にいた者はとても驚いた。
「ブリア?どうしんだ?その格好…」
ブリアを見たアミルがブリアへ尋ねた。
「アミル…キール様は……?」
ブリアがアミルの言ったことなど聞こえていないかの様にアミルに言った。
「兄上はここに…」
アミルがそう言い横に逸れると、そこにはベッドで楽な体制をして座っていたキールが居たのだった。
ブリアはキールを見た瞬間、キールの元へ人目も憚らず走って行ったのだ。
「キ…キール様…無事なのですか……?剣で切られたと……聞いて…わたくし……わたくし……」
ブリアはそう言うと堪えていた涙が一気に溢れ出し大泣きをしたのだった。
わんわんと泣きじゃくるブリアの姿を見てそこにいたアミル、スコット、そしてロンはとても驚いていた。
「ブリア…私が切られたと聞いて駆けつけてくれたのか?心配させてしまってごめんな…でも…私はこの通り大丈夫だ…生きているよ…」
キールはブリアの頬を優しく撫でながら言った。
「脇腹を…斬られたとお聞き……してわたくし……頭が…真っ白になり…でも…生きていてくれてありがとう……ございます…」
ブリアは涙が止まらず言った。
そんなブリアの泣き声は部屋の外まで聞こえていたのか、遅れてケビンとローランドとがやってきたのだ。
ケビンは侯爵でもあるが医師が来る前の処置などを出来る資格を持っている為に、医者が来るまでに応急処置をしようとハート公爵邸へローランドと共に来たのであった。
「キール様…失礼致したす。医師が来るまでの応急処置をさせていただく為に伺わせて頂きました…斬られた箇所を拝見してもよろしいですか?」
ケビンか部屋に入ってくるとキールへ尋ねた。
「スペード侯爵様、お忙しい中お手間かけさせてしまい申し訳ありません…」
キールはケビンへ言った。
「いえ…大丈夫でございますよ。……ブリア…キール様が心配なのは分かるが傷口を見せて貰いからブリアは少し避けていてくれるかい?」
ケビンは泣きじゃくっているブリアへ言った。
ブリアは頷き横へと避けたのだ。
「では…キール様失礼致しますね…」
ケビンはそう言うと斬られた箇所を見た。
「ん?キール様これは…斬られた箇所とはこちらで間違いありませんでしょうか?」
ケビンは傷口を見て驚いてキールへ尋ねた。
「はい。左様です。実は…以前ブリアから使ってみて欲しいと防具を頂いたのですが、その防具は洋服の中に着れるタイプの物でした…本日の見回りにはたまたまブリアから頂いた防具を装着していたので斬られたといっても少し深めのかすり傷程度で済んだのだと思います…」
キールはケビンへと説明をした。
傷口が大したことないと聞いたブリアはホッとしたのか止まりかけていた涙が出てわんわんと泣いたのであった。
そんなブリアの泣いてる姿を見てローランドもケビンもとても驚いていた。
父であり兄であるケビンとローランドですらブリアのあの様に泣く姿など今まで一度も見た事などなかったからだ。
そんなブリアに驚きながらもケビンは口を開いた。
「この程度で済まれたのは本当に良かったです。この傷口ですと一週間と少しあったら治られると思いますのでそれまでは出来るだけ薬を飲み安静になさって下さいね…」
ケビンはホッとした様な表情で言った。
「はい。畏まりました。無理はせずにしておこうと思います。わざわざ足を運んで頂きありがとうございました。」
キールは座ったまま頭を下げケビンへといったのだった。
ケビンは、ハート公爵にキールの怪我の状況を説明する為に部屋を後にしたのだ。
「スコットとアミルもハート公爵様と共に父上からのお話を聞いておくといいよ。注意点などもあるだろうからそれもきちんと聞いておかないといけないからね。私はロンと共にこの同じ階にある応接室で待っているからブリア…キールが疲れない程度に話でもするといいよ。そこにあるベルを鳴らしてくれたらここへ戻ってくるから…」
ローランドは皆に説明をしたのだ。
スコットとアミルはハート公爵の元へ。
私とロンはキールの部屋がある場所から三部屋隣にある応接室へと向かったのであった。
「ブリア…話したいことは色々とあるだろうがあまり遅くならない様にな…キールの身体の負担にもなるからね…」
ローランドが泣いているブリアへ言った。
「はい。わかりましたわ。ローランドお兄様。」
ブリアが返事をすると、ローランドとロンは応接室へと移動したのであった。




