3.たかしとかおり
キールがブリアの頬を撫でる仕草をブリアは前世でたかしがよくかおりの頬を撫でてくる仕草と同じだったので懐かしく感じてしまい口からボソッと言葉が出た…
「たか兄…」
ブリアは周りに聞こえるか聞こえないかほどの小声で呟いた…
隣のキールには聞こえていたのかキールがとても驚いた表情でブリアの事を見ていた…
「ブリア…君は…」
キールは驚いた顔をしながらボソッと呟いた…
そして、キールは突然立ち上がった。
「ローランド、すまないがブリアに渡そうと思っていた本を何冊か持ってきたのに馬車へと置いてきてしまったのを思い出したから取ってくるよ。申し訳ないがブリアも手伝ってくれるかい?」
キールはにこりと笑いながらローランドに言う。
「あぁ。構わないよ。いつもブリアに本をありがとう。ブリアもキールに付いて行ってあげるといいよ。」
ローランドが応えた。
「ありがとう。では、ブリアお願いするね。行こうか?」
キールがニコりとブリアに言う。
「あっ…はい。キール様。」
ブリアは返事をした。
そうして、二人は馬車へと向かった。
そして、馬車へ着くとキールがブリアを馬車の中に入るように言う。
ブリアは何だろうと不思議に思いながら馬車へ乗り込んだ。
馬車の中にはキールとブリア二人だけだ。
先に口を開いたのはキールだった。
「ブリア…先程君はたか兄と呟いた様だが…」
キールが眉をひそめた表情でブリアに尋ねた。
「えっ…?キール様…あの…その様な事をわたくし申しましたかしたでしょうか…」
ブリアはキールの言葉に驚きながらも誤魔化そうとした。
「あぁ…確かにたか兄と呟いていた…ブリア…君はもしかして…かお……?」
キールがそう言うとブリアは目を見開き驚いた。
キールの口から『かお』という名前が出たからだ…
ブリアは前世でたかしから『かお』と呼ばれていたからだ…
かおりの事をそう呼ぶのはたかし一人だったからだった。
そんなキールの発言に驚きながらもブリアは口を開いた…
「たか兄……なの?」
ブリアはそう聞くとその声は震えていた…
ブリアは今にも泣きそうな顔だったのだ。
「あぁ。お前はかお……なんだな?」
キールの声もほんの少し震えているようだった。
「うん…かおりだよ…私はかおりだよ…たか兄…かおりだよ…」
ブリアは堪えきれず目からは大粒の涙が溢れ落ちた…
「何故…かおがブリアに?もしかしてお前も…この世界に転生したのか…?」
キールなのだがすっかりたかし口調でブリアに尋ねた。
「私もよくわからないんだけど…どうやらそうみたいなんだよね…目を開けたらブリアとして生まれ変わってて…でも…かおりの時の記憶が残ったままだったの…もしかして…たか兄も私と同じなの?」
ブリアもかおり口調で応えた。
「あぁ…俺も暗闇から光が差し目を開けたらハート公爵家のキールとして生まれ変わっていたんだ…かおと同じくたかしの時の記憶を持ったまま……って、待て!転生したという事はお前死んだのか?」
キールがハッとした表情でブリアに尋ねた。
「そうなんだよね…あたし事故に遭ったのよ…あつしと待ちあわせしてた場所に向かってる途中に道路に飛び出した子供を庇ってトラックにはねられたのよ…それで…あぁ…私死んだんだって思ってたらたか兄と同じようにか光が差してきて目を開けるとブリアとして生まれ変わっていたって訳…」
ブリアが自分がかおりだった時に死んだ経緯も含めてキールに説明した。
「そうだったのか…人を助けてというとこがかおらしいな…ただ…かおが死んでしまってあつしは悲しんでるだろうな…あつしとかおは小さい頃からよく喧嘩してたけど何だかんだで仲良かったろ?」
キールはブリアに言う。
「そうだね…あつしはきっと待ちあわせ場所に来るはずの私が事故で死んでしまったって知って悲しんでるだろうね…あつしには悪いことしちゃったな…それにチームの皆にも…」
ブリアは思い出しながら寂しそうな表情で応えた。
「でも、まぁあつしはきっと俺やかおりの分まで生きてくれるさ…あいつはそういう奴だよ…」
キールも少し寂しそうな表情で言う。
「そうだね…」
ブリアが応えた。
「俺が死んだ後の虎黒龍連はどーなったんだ?あつしが総長を継いでくれたんだよな?チームの皆は元気にしてるだろうか…」
キールはブリアにたかしが死んだ後のチームの事を尋ねた。
「それがさぁ…総長継いだはあつしじゃなくて…私なんだよね…あつしは副総長だよ…ハハハ…それにチームの皆はみんな元気だよ。相変わらずたか兄の意思を皆で継ぎながらチームを守ってるよ。」
ブリアは少し苦笑いしながら応えた。
「は?かおが?女が総長になるのにチームの奴らは反対しなかったのか?」
キールが驚いた表情で言う。
「うん…全く…私ね…たか兄の事をリンチした奴らを見つけ出して仇討ちしたんだけどさ…どうやらその時の私を見てチームの奴ら全員一致で総長としてOK出してくれたんだよ…」
ブリアはキールに説明した。
「あいつらが全員一致って…かお…お前…相当リンチした奴らボコボコにしたんじゃ…確かにかおは女しては喧嘩も男に負けないほどのは腕っぷしだったけどよぉ…」
キールは苦笑いしながら応えた。
「ハハハ…何かその時から巷では【赤毛の鬼】って呼ばれてたんだよね…よほど私は鬼の面相してたんだろうね…ハハハ…でも、私は総長になってからたか兄の意思をちゃんと継いでいたつもりだよ…弱きを助け悪を裁く…少しでも悪さをする奴らを懲らしめてきたよ…死んでしまったからもう無理なんだけどね…」
ブリアは寂しそうな表情で言う。
「赤毛の鬼か…見てないがその通りだったんだろうな。それにかおは死んでしまったけど総長として俺の意思を継いでよくやってくれたんだってわかるさ…よくやってくれたんだな…ありがとうな…かお…」
キールは少し泣きそうな顔でブリアに言う。
そして、ブリアの頬を優しく撫でた…
ブリアは更に涙が溢れ出し令嬢である事も忘れて声を出して泣いたのだった…