13.ロナ王子殿下の登場
ブリア達の前に現れたのはロナ王子殿下であった。
ロナはブリア達を見てある程度の状況を察していた。
「こんな所で何をしているの?」
ロナが尋ねる。
「王子殿下…これはその…えぇ……この者達へこの学園での正しい過ごし方を教えていたのでございます。この学園では自分自身の身分を弁え行動する事が大事なのだと…」
子爵令息が慌てて応えた。
「正しい学園での過ごし方?自分自身の身分を弁えての行動かい?」
ロナが更に尋ねた。
「はい。左様でございます。この者達は身分が低いにも関わらず私への無礼を働いたのでございます。ですので無礼を働いたのであればきちんと謝りその事を解らせていたのでございます。」
子爵令息は自信満々に応えたのだ。
「……確かに無礼を働いたのであれば謝ることは必要ではあるが…何故こちらのご令嬢は濡れていてこちらの令息は膝をついているのかな?」
ロナは無表情で尋ねた。
「そっ…それは私にした無礼に対しての償いをさせていたのでございます…」
子爵令息はロナの無表情な顔を見て少し慌てた様に応えた。
「償いね…君は確かパリオ子爵家の令息だったよね?後ろにいる二人も子爵家の令息だったね?」
ロナはチラりとブリア達の方を見ながら子爵令息に尋ねた。
「はい。私達は子爵家の令息にございます。その者達は男爵家の令息とご令嬢であります。」
子爵令息は応えた。
「男爵家のご令嬢?」
ロナは少し驚いた様に言う。
「はい。本日入学してきた一年の男爵家のご令嬢でしょう。マナーがなっていないのか私に意見してきたのであります。」
子爵令息は少し眉間にシワを寄せて応えた。
「男爵家のご令嬢ね…君達は身分をしっかりと弁える事を教える為にこちらのご令嬢が水に濡れこちらの男爵令息が地に膝をつけていると…」
ロナは再度確認するかの様に尋ねた。
「はい。仰る通りであります。」
子爵令息ははっきりと応えた。
「ブリア嬢…君が自ら男爵家の者だと言ったのかな?」
ロナはブリアの方を向きブリアに尋ねた。
「王子殿下にご挨拶申し上げます。この様な無様なお姿を晒し申し訳ありません。お気を悪くされませんよう…わたくしの口から男爵家の者だという話はしておりません。そちらのパリオ子爵家のご令息の先輩にわたくしが物申したのですがその時にそう思われた様です。」
ブリアはロナの方を向きロナの目をしっかり見て挨拶をして説明した。
「そうだったんだね…パリオ子爵令息の君…君は身分に対する弁え方を教えると言っていたが…こちらのご令嬢は男爵家のご令嬢ではないんだよ。」
ロナは少し呆れた様な表情でいう。
「えっ?男爵家のご令嬢ではない?ですか?では…どちらのご令嬢にございますか?」
子爵令息は驚いた表情でロナに尋ねた。
「ブリア嬢教えて差し上げるといいよ。」
ロナはブリアに言う。
「はい。王子殿下。パリオ子爵令息様、ご紹介が遅れました。わたくしはスペード侯爵家の長女のブリア・スペードにございます。」
ブリアがカーテシーをし挨拶をした。
「スペード侯爵家のご令嬢…」
子爵令息はブリアが侯爵家の令嬢だと聞いた瞬間血の気がサーッと引いた。
自分がしてしまった行動を思い返し更に血の気は引いたのであった。
「ブリア侯爵令嬢様…私の大変無礼な行動お許しください。知らなかったとはいえ大変無礼な事をしてしまいました…」
子爵令息は態度を180度変えてブリアに土下座をして誤った。
後ろにいた二人の子爵令息達もブリアへと頭を下げて誤った。
(ずいぶん簡単に手のひら返すもんね…本当にどこの世界もこういう奴らって同じよね。かおりも何度手のひら返された事やら。でも、こういう奴らは変わらないからほっとく訳にはいかないなぁ…こんな奴らが沢山いると辛い思いをする人達が増えるもんね。まぁとりあえず今日はお腹も空いたしここは手早く収めるかな。)
ブリアは謝っている令息を見ながら考えていた。
「謝るのでしたらわたくしではなくこちらの男爵令息の先輩でございますわ…」
ブリアは冷めた表情で応えた。
「はっ、はい。」
子爵令息はそう返事をすると男爵令息に謝った。
そして、子爵令息達は再度ブリアに頭を下げ謝り男爵令息はブリアに頭を下げお礼を言ったのだ。
ブリアは男爵令息には自分が自ら水をかぶったのだから気にすることはないと令息に優しく微笑みながら言うと男爵令息は少しホッとした様な表情で再度お礼をいい園庭を後にした。
子爵令息達も謝り倒したのち園庭を後にしたのであった。
令息達が園庭から居なくなりその場にはブリアとロナだけになった。
ブリアは濡れた制服のまま食堂へ行く訳にも行かないので制服の替えがあるか担任の先生に尋ねに行こうと思いロナに挨拶をしようとした。
すると、先にロナが口を開いた。
「ブリア嬢、制服の替えはあるのかい?ないのであれば替えの制服は私が用意するよ。」
ロナはブリアに尋ねた。
「制服の替えを持ち合わせていないので先生を訪ねて聞いてみようと思っていたところであります。王子殿下にその様な事をしていただく訳にはいきませんのでせっかくですが…」
ブリアは申し訳なさそうな表情で応えた。
「先生を尋ねるのなら私が用意させた方が早いさ。それに兄様達を待たせるのではないのか?」
ロナが言う。
「確かにお兄様達をおまたせしていますが…王子殿下の手を煩わせる訳にはいけませんので…」
ブリアが応えた。
「王子命令でもかい?」
ロナは微笑みながら言う。
「命令でございますか?そんな言い方されましたら聞かざるをえませんわ…」
ブリアは少し困った表情で応えた。
「ハハハ…そうでも言わないとブリア嬢は断固として断りそうだったからね。さぁ兄達を待たせているなら急いで着替えた方がよい。ついておいで。」
ロナは笑いながら言う。
「畏まりました。王子殿下。申し入れに感謝致します。」
ブリアもふふ…と笑いなが応えた。
そして、二人は園庭を後にした。
そんな光景を植木を挟んだ先のベンチで見ていたもう一人人物がいた。




