第19話 頭痛の原因と具現化
武器屋で武器を受け取り家に帰ろうとスタンと帰路を辿ってる時にそれは起こった。
「ぐっっっっ、痛てぇ……スタン、ちょっと頼んだ」
「え? ドランさん!? 急にどうしたんですか? ドランさん!?」
そう、頭痛で意識を失ってしまったのだ。
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俺が目を覚ましたのは知らない部屋のベットの上だった。そして軽く視線を巡らせると自分の隣に小さな女の子の人形か何かが置いてあった。
「起きました? この家は自分の家です。ドランさんが倒れた場所からはドランさんの家よりも自分の家の方が近かったので」
そうか、俺はまたあの頭痛で倒れたのか、それでここはスタンの家か、スタンは小さな女の子の人形が好きなのだろうか? 趣味はそれぞれなので何も言わないでおくことにした。
「それで、ドランさん。急に倒れた時に少し調べたので、倒れた原因は分かるのですが、あのような経験は前もあるのですか?」
「いや、頭痛で倒れた事は前にも何度かある。それよりあの頭痛の原因が分かったのか?」
「頭痛? 頭痛と言うのは分からないですが、ドランさんが今回倒れた原因は何かの魔術の影響でした。遠くから誰かがドランさんに魔術を掛けたのでしょう。そのような事が出来るのはなかなかの強者しか出来ない技ですが、ドランさん心当たりはありますか?」
いや、俺は入学前には事件に一度も巻き込まれていない。というか頭痛を起こす魔術ってなんだよ。嫌がらせにしては陰湿すぎるぞ。
〈でもあの魔術の本来の効果は発揮されていなかったみたい。ドラン君って色々普通と違うからね!〉
(普通じゃない? シルフィーだけには言われたくないな)
〈ところでさ、あの魔術ってどういう時にかけられるの? あの魔術の本来の効果は分かってないからもしかしたらそれがヒントになるかも!〉
(法則性は無いが、一か月に一回ほどの頻度で起こると言う事しか分からないな)
〈ねぇ、ちょっと聞いてるの? 無視しないでよ!〉
(聞いているだろ、さっきから答えているではないか)
〈ド・ラ・ン・く・ん! 聞・い・て・よ!〉
(聞いている、さっきからそう言っているではないか)
なんだ?シルフィーとの脳内会話がうまくいっていないのか?シルフィーの声は聞こえているが。
〈ちょっと? 聞いてよ……私せっかく具現化できなのに……無視は悲しいよ……グスンッ〉
ん?具現化?どういうことだ。ならさっきからの声は脳内会話ではないのか?では声を出せばシルフィーにも聞こえるのだろうか。
「シルフィー、これで聞こえるのか? あと具現化したとか言っていたがどこにいるんだ?」
〈こ・こ・よ! ほらほらほらほら! こ~こ~よ~!〉
周囲を見るとさっき人形だと思って無視していた髪はエメラルドグリーン、髪よりも少し濃い色の服を着ている、十五センチ程の女の子が飛びまわっていた。
「なんだちび人形。その姿がシルフィーの姿なのか? そしてお前は飛べるのか、鬱陶しいな」
〈私の扱い雑よ! 少しは精霊として私の事を敬ってよぉ! 私泣いちゃうわよ?〉
「さっき泣きかけてただろう。それと聞きたい事がある、俺は具現化させた覚えはないんだが」
〈あぁ、それね? あなたに魔術がかかった時に、魔術に押し出された、みたいな感じで何か具現化出来ちゃった。この理由はドラン君にかけられてた魔術を解明すれば分かるはずだよ? でも具現化成功は成功だからこれからは具現化を意のままに出来るよ?〉
「俺の努力は何だったんだよ……だが出来る用になったのなら文句は無い。では前言っていた心中会話を出来る用にしてくれ」
〈ねぇ、さっきまであなた眠ってたのよ? それに君は精霊使いが荒すぎなのよ……まぁ良いわ? スタン! 君もドラン君の隣に並んで!〉
ずっと黙って固まってたスタンを呼び、向かい合った。そしたらその間にシルフィーが入ってきて何やら魔法陣を宙に描いた。そこから延びだしてきた線が俺とスタンの仲介をするように繋がれた。そこから何かが流れ込んで来た。
〈これで完了よ! スタンとドラン君の間だったら心中会話が可能になったよ! 他の人とは出来ないけどね……〉
「よし、スタン完了だ。これから陰で動くときはこれで連絡する」
「は、はい。分かりました、承知しておきます」
「今日は泊めてもらっても良いか? 帰るのめんどい」
「それはもちろん、そして今日はドランさんのお母様に聞いたクリームシチューを作ってみました。レシピはメモしてあったんですが、少し失敗してしまいましたが」
「飯は何でもいい。あと心中会話を出来る用になったから言うが、これからかなり動いてもらうことになるが良いな?」
「分かりました。心得ておきます」
そのまま俺は隣の部屋に行き、用意してあったご飯を食べた。そこには三人分の食事の用意がされていた。一人分は小さいのでシルフィーの分だろう。シルフィーは初めての食事なのだろう。
「うん。まずいな」
〈え? あはひはおいひーほおもうへお?〉
「食べながら喋るな何言ってるか分からん」
「アハハ……正直ですね」
「嘘は言う必要ないだろう」
一応作ってもらったやつだから食った。味はかなり劣っていたが仮にも俺の母親の味が元だ。何か懐かしい。シルフィーは多分元の味を食べたことがないからうまいと感じるのだろうか。全員食べ終わった後に俺はこれからの行動計画を話した。
「これからは俺の進化の条件をそろえる、根源を壊せばその物の心が少しずつ作り変えられるから、達成までチャンスが来るたびに壊す。そして、精霊も進化するんだったな、どうすればいいんだ?」
〈え~とね? 具現化してる時にしかできないんだけど、魂の中の魔種を取り除いて取り込む、数はその精霊で個人差があるんだ! 精霊もなかなかに怖いものでしょ!?〉
決め顔でそんな事を言われても反応したくない。
「所で一つ聞いていいですか? 契約した精霊さんにも能力を把握させた方が良いと思うのですけれど、精霊契約がより強くなりますし。せっかくなら自分も聞きたいのですが、お許し願えないでしょうか?」
「あぁ、そうだな。これからも付いてくると言っていたからな、良いぞ。シルフィーもしっかり聞いておけよ、あと念のため盗み聞ぎ防止を頼む」
〈りょうか~い! それじゃしっかり聞いておくよ! ずっと気になってたし!〉
「ありがとうございます! 自分もしっかり聞いておきます」
「俺の能力は単純だけど色々出来る。俺の能力は――― ―――だ」
俺はこの時、初めて自分の能力を他人に教えた。