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魔王少年の異世界物語  作者: 天之ヒガシ
学生ドラン
11/41

第11話 夢の世界

 その日の朝、聞き覚えのあるようなないようなどこか懐かしさを感じる声が聞こえてきた。


 「お~い、涼、朝だよ~起きなさぁ~い」


 あれ、昨日より前の記憶がない。とりあえず今は起きよう。起きて下に行きリビングでご飯を食べ始めた。


 「なんか昨日から調子悪そうだったけど大丈夫?」


 この人って、確か母さん?


 「あぁ、問題ない。気にするな」


 「なんかお兄ちゃん、口調がかなり変わってない」


 これは、妹か。


 「そうか? 別になにも変わってないと思うのだが」


 「いやいやいや、お兄ちゃんいつももっと優しかったじゃん。なにかあったの?」


 「覚えてないな、だが心配するな。どこも悪くない、多分」


 「え、あ、うん。お兄ちゃんがそういうなら気にしないようにするけど。あ、私もうすぐ学校行かないとっ、急がなきゃ」


 遅刻しそうだったのか、というよりも俺も遅刻しそうだ。俺もさっさと家を出て学校に向かう。

 その通学路には高いビルや車がたくさん走ってる、周りからは騒音も聞こえる。ここは……


 「おっす涼! なんか元気ねぇな、何かあったか?」


 「いやなに、雑音がうるさいと思ってな、それに体調が悪いわけでも特別何かあったわけでもない」


 「そ、そうか? なんか口調とか結構変わってるように感じるんだが?」


 ふむ。今日になって二度目だ、なにもいつもと変わってないはずなのだが。その後も何度か言葉を交わし、学校に着いた。教室に入ると皆が挨拶をしてきた。


 「「「「「おはよう、くん!」」」」」


 「あぁ、 おはよう」


 挨拶を返すと皆が少し不思議そうな感じの表情で見てくる。そんなに俺が挨拶を返すのが不思議か、少し馬鹿にされているように感じてしまうのは仕方のない事なのかもしれない。席に着くとガラの悪い三人組が絡んできた。


 「よぉよぉ、リョーさんや、チャイムぎりぎりで入ってきてしかも挨拶も適当にするとは、お仕置きが必要なようだな」


 「ホームルーム終わったらちょいと面貸せや」


 「も・ち・ろ・ん、一人でなっ」


 「ちょっとまたあんたたち涼くんに絡んでるの? いい加減かわいそうだからやめなよ」


 涼という人間は本来とても人当たりが良く、人望も厚いし成績優秀の優等生だった。そのおかげで男女問わず人気がありイベント事ではクラスの中心になるような人気者だった。 しかしその人気で少し目立ちすぎるため、変な輩や心の小さい嫉妬魔に妬まれ度々絡まれてしまう。だが絡まれてもしかっり対応して暴力は振るわれても振るいはしない人間……のはずだった。今の彼はそんなこと知らないのだ。


 (外面が誰だろうと俺は俺だ。舐めた態度する奴には痛い目に合わせなければ)


 そう頭で考えてると絡み連中の一人がまた突っかかってきた。


 「おい、無視するとは面白い事考えるじゃないか。舐めてんのか? あ?」


 「当然だ。舐めてなきゃこんな状況で考え事なんざするわけないだろ」


 「少し痛い目みなきゃ分からないようだな! 今ここで無様を晒してもらうぜ!」


 いきなり殴りかかってきたので椅子ごと後ろに避け、そのまま立って回し蹴りをいれロッカーの方へ飛ばした。その現場を見たクラスメイトはあるものは青褪め、あるものは何が起こったか分からず呆然と、そして絡んできた残り二人は恐怖で後ずさる。そして蹴り飛ばされた本人は、頭を強く打ったのか気絶していた。


 「喧嘩売っといてこの程度で逃げるのか?」


 「お、お前、誰だよ。お前本当に暁か? 今までと全然違うが……」


 一人が不思議なことを聞いてきた。何を言っているのだろう。


 「何を言っているのだ? 当然だろう。俺は正真正銘、暁 涼だぞ、なんならお前の目玉くりぬいて俺の顔に近づけて見せてやろうか?」


 その言葉でクラス全員が後ずさっていった。この雰囲気ならやりかねないと思ったのだろう。そこに教師らしき人物が騒ぎながら入ってきた。


 「こ、こら、喧嘩や暴力はいけません、誰ですか、って、あ、かつ、きさん? 何をやってるのかは分かりませんがとにかく話があります。生徒指導室に来てください」


 呼び出されて話を聞かれるのか、嘘をついたら長引きそうだ。仕方がないので全部正直に話すとしよう。


 「とりあえず全て正直に答えてくださいね? 暁さんあのロッカーのそばで倒れこんでいる戸部さんに何をしたんですか? そしてなぜそのようなことをしたのですか?」


 「喧嘩を売られたから買ってやった。だから回し蹴りを食らわせてやった。あーいうふざけて調子に乗ってる連中は一度痛い目を見なきゃ変わらないんだ」


 「な、なんか急に性格変わりましたね…… で反省してくださいね?」


 「断る」


 「……へ?」


 「断ると言った。なぜ俺が反省しなくてはならない。俺はあいつに回し蹴りを食らわせた事を反省するつもりもないし、後悔もしてない。ましてや今後も舐めた態度取って喧嘩売ってきた場合にはそれ相応の態度で対応させてもらう。何もしてこなければ俺も何もしないんだから文句言うならあのバカ三連中に言え」


 「で、でもですね私も教師ですし言うべき事は言わなくてはなりませんし、暴力は良くないと思うのですよ……」


 「暴力をやめろだの、暴力はいけないだの言うのだったらまず、暴力を振るわれる態度を取ったり喧嘩を売ったりする連中を先にやめさせろ。そうしなくては暴力は永遠になくならない。手を出した方が悪いなんてことはないんだ、原因を作ったやつの方が悪いの決まってる」


 「あ、あの。ほんとどうしちゃったの? 暁さん? ですよね?」


 「ほかの誰に見える。他人に見えるか? お前の目もくり抜かなきゃいけないのか? あんまりふざけた事を言うなよ? バカ教師だと思われてしますぞ」


 「教師に向かってバカとは何ですか! いい加減にしなさい! 言葉遣いだってなってませんし」


 やれやれ、教師というのは何なのだろう少し言葉遣いが悪いだけでギャーギャー騒ぎやがって、鬱陶しい。だいたい俺に全て正直に答えろと言ってきたのはお前だろう。言われた通りにしてれば起こるのかこの教師は、なら話す価値もない。


 「少し黙っててくれるか? うるさいぞ」


 かなり威圧するように言ったからか、簡単に教師は怯んだ。そんなんで怯むんなら最初から声をかけるなと思ってしまう。教師だからしょうがないのかもしれないが、とりあえずもう行くか。

 その後も授業を受け放課後になったが一日中かなり違和感があった。他人の頭にある俺の人物像と実際自分もかなり違うという事も分かった。ここはどこだ? とも思ってしまったりもする。家に帰ってきて家族に正直に色々聞いた。


 「なぁ俺って前はどんな人間だった? 今と比べて正直に」


 「どうした急に、でもそうだな、今と比べたらか、とりあえず言葉遣いはだいぶ優しくて人当たりも良いって聞いてたし実際そう見えてたからな、それに頼まれたら何でも赤受けちゃう感じの性格だったな。というかなんでいきなりそんなに性格変わったんだ?」


 「知らん、俺はいつも通りにしてるだけだが」


 「そ、そうか。まぁそれは良いや、そしてもう寝ろ」


 今日は色々不思議な感覚だったので早めに寝よう。


 よして翌日からもいつも通り? 学校に通い、不思議な学校生活を送っていた。そのある日文化祭というものが行われることとなった。急に性格が変わった俺に文化祭実行委員をやってほしいと頼まれた。今までの涼だったら頼まれたら断れない性格だったらしい。だがやりたくないので、


 「無理断る」


 問答無用で断った。周りはこの性格にもう驚かない。そしてようやく最近絡んできたり関わってきたりする人がいなくなってきた。


 「あのぉ~、どうしても、ですか? 誰かがやらないといけないのですが……」


 「なんでそれで俺がやらなくちゃいけない、あんたがやればいいじゃんか」


 「え、えっと、それは……」


 「他人に押し付けるくらいなら自分でやればいいじゃないか、自分がやりたくないからって他人にやってもらおうとは都合が良いな」


  このように人をしつこいくらいに煽り立てるとそいつからは相手にされなくなる。それにより独立を果たす事ができる。俺はそのようにして果たしてきたのだから……。 は? 誰が何を果たしたってんだよ、一度独りになったらほとんどの確率で戻る事はないはずなのになぜ今もう一度やろうとしている?


 (なにか大事な事を忘れている気が……)


 思い出す事は出来ないのだが、かなり大切な事な気がする。でもまぁある時ふと思い出すだろう。しかも今は文化祭実行委員がどうのこうの言うめんどくさい状態だ、断ったが他の人の立候補者がいないのでまだ話しをしている。だが正直誰も立候補する気配がない。また頼みにこられてもめんどうなので適当に文化祭実行委員にしたくないと思わせる事をしよう。


 「俺はこの文化祭を楽しみたいとは思っていない。だからそんな俺が文化祭実行委員に選ばれても何もしない。最低限の事だけ。クラス内の話し合いの司会と意見潰しくらいしかしないがそれでも良いのか?」


 この言葉を大声で放ったらクラス全員が目を逸らした、これで俺に頼むようなことはしてこないだろう。めんどうな問題が一つ片付いた。だが文化祭か、何をするのだろうか? このような祭りは人が多いから鬱陶しいと思ってしまい、人間お掃除をしたくなってしまうのでどこか人のいない場所で一人(ちなみにこれをこの世界ではボッチと言う)でいよう。

 そうこうしているうちにようやく実行委員が決まった。俺はようやく帰れると思ったがそれを許さない三人組がいた。そこの横を通り過ぎる際に運悪く絡まれてしまった。


 「おい、あ〜か〜つ〜き〜よ〜っ お前何なんだ? 最近、ふざけた態度ばかり取って、前は油断して回し蹴りなんつーものを食らっちまったけどよぉ〜、残念ながら今だったらじゅうぶんに『ゴンッ、メキッ』、ぐ、がぁぁぁぁっっっぁ、ぁ、がぁ」


 鬱陶しく喋りかかってきたので喋っている途中に顔面を鷲掴みし、そのまま握り潰すかのように力を入れた。すっげー痛がってる。


 「おい格下、『がぁっ』散々調子に乗っているがな、『ぐぁがぁっっ』所詮雑魚は雑魚のままなんだよ。『ぐっ、あ‘’っあ“っあ”ぁぁぁ』そんなままで何度も何度も『ぐふっ、がはっ』俺に喧嘩売ってきて度胸あるとは思ってたが、『ぐがあ“あ”、ぁ“ぁ”』ここまで来ると実力差も理解できない鬱陶しいバカだったとしか思えん。」


 顔面を鷲掴みにされ、苦しむように唸ってる戸部真人。彼は名前とは真逆でいじめっ子のような、ナリヤンのような三人グループの中心人物。彼にきっついお言葉を贈った後に解放した。解放した直後に後ろに倒れこんだ。その顔を覗き込み、


 「分かったら二度と絡んでくるんじゃないぞ」


 彼は無言で弱々しく頷いた。しかし彼の眼もとにはどこか憎しみのような恨み、そして嫉妬のような色が宿っていた。またなにかやってくるだろう、しかもこれまでとは比べ物にならないほどとんでもないような事を。 だが今はまだやってこないと思うから俺はそいつを無視し教室を出て行った。

 一人で屋上でサボっていた時にあるクラスメイトの女子生徒が俺の前に立ってきた。


 「ちょっと涼くん? さっきのは戸部君が悪かったとは思ってたけどあれはやりすぎでしょ……あの後戸部くん何かずっとぶつぶつ呟いてたよ?」


 彼女の名前は秋 優美、クラスの人気も高く女子からも人気があり、男子からもかなりモテる。そんな彼女はよく俺に話しかけてくる。何の意図があるかは分からないがそんな彼女が良くしてくれてることが嫉妬の原因になっているのだろうか? だとしたら勘弁してもらいたいものだ。


 「俺の勝手だ、むかついたり気に食わないやつは力で捻じ伏せる。それが俺のやり方だ。前の俺がどんなんだったかは知らないがこれが今の俺だ」


 「そっか、随分と変わっちゃったのね、でも私はね? たとえ性格が変わっちゃっても簡単に好きって気持ちは変わらないよ?」


 …………は? 簡単に変わらないって、好きってこと今初めて聞いたんだが。疑問に思ったことを素直に口にした。


 「いやそんなことは知らん。というか簡単に変わらないって、好きってこと今初めて聞いたんだが」


 「へっ?」


 「『へっ?』じゃねぇよ。なんでそんなに不思議そうな顔してるんだ。それともあれか? 俺の性格が変わる前にでも言ってたか?」


 「…………ううんっ? 今初めて言ったから聞いたことなくて当然だよ! 不思議そうな顔をしたのは、、そう! 好きって言ったことに今でもちゃんと反応するんだなって思って……」


 「? そりゃあ、言われた覚えのない言葉を前に話したような感じで言われたんだ。反応しないわけないだろ」


 「……そう、よね、変なこと聞いてごめんね! じゃあ私、戻るから。涼くんもいつまでもそんなところにいないで戻ってきなねぇ!」


 と言いながらどこか悲しそうに早歩きで屋上からいなくなった。だがどうしてそうなったかは俺でも分かる。俺がはっきりと覚えてないときに好きと言われたのだろうまたは告白されたか、付き合っているかは別として。だが正直覚えていないのだから曖昧にはしないで本当の事を知るまでは知らないふりでもしておく。周りから見たら最低な奴と思われるかもしれないが、それによって秋が離れていくかもしれないし、または何か知れるかもしれない。それにもともと俺は最低な奴と思われてると思うし周りからどう思われようと知ったことじゃない。だがもしこれがめんどう事に繋がるかもしれない、そうなるのは嫌なので真実くらいは知っておきたいので今度それとなく探りを入れてみる事にしよう。

 その翌日から文化祭の準備が始まった。結局このクラスの文化祭実行委員は秋 優美が立候補したことにより決まった。その時何故か俺の方をチラチラ見てくる人もいたが、何故俺が悪者扱いされなければならないのかが理解できない。見てきたやつ全員を殴り飛ばしてやりたい。俺はもともと文化祭を楽しむ予定はなかったが割り当てられた仕事だけはやることにした、もちろんだが追加をされてもするつもりはない。だが秋に関して探りを入れなければならないので誰もいないところでならあいつだけは手伝うことにした。手伝ってるところを誰かに見られて、頼めば手伝ってもらえるなんて思われたくないのでな。 俺はさっさと自分の割り当てられた作業を一日で終わらせ、教室を出て行った。

 そして、朝登校し、授業を聞き、文化祭の準備をしている人をおいて下校、一日中家族以外誰とも喋らない。こんな生活が三週間続いた。結局秋の手伝いはせず、探りを入れる事すらも出来なかった。 そして文化祭前日、いつも通り教室を出て帰路につき家に帰っていると秋が後ろから追いかけてきた。ここで探りを入れるチャンスがあればやってみよう。


 「ね、ねぇ涼くん? 明日の文化祭ってちゃんと来るんだよね? というか来て何して過ごすの? 3日間もあるけどサボったりしないわよね?」


 「一応来るが何してるかは分からん、気分で行動するからな」


 「そっか、くるならいいんだけど、というか性格変わった原因って何なの?」


 せっかくだからここでそれとなく探ってみよう。


 「原因は知らん、知らんが俺は自分の思った通りに行動してるだけだ。それと一つ、俺、性格変わる前お前と付き合ってたのか?」


 ……失敗したー。それとなく聞き出すつもりがド直球に、素直に、ストレートに、聞いてしまった。だがその分めんどくさい言い回しをする必要がなくなったので良いか。


 「え? いや、付き合いはしてなかったけど……     だってあなたが答えてくれなかったじゃい(小声)」


 そうか、付き合ってはなかったか、断ったのか? それか…… 無視し続けていた? でもとりあえず彼氏彼女の関係ではないことは分かった。だったら言ってやろう、正直に、冷徹な言葉を。


 「そうか、だが俺はお前の事を好きと思ったことはない。好きという理由で関わってくるならもう関わってこなくていい。強制はしないから好きにすりゃ良いがな」


 「そ、そっか、うん! 全然良いぞ? だから気にしないでね! 私はまた学校戻ってやることあるから、じゃあね!」


  なにかを誤魔化すかのように走って学校とは別方向に走っていった。


 「おーい、学校はそっちじゃないぞー」


 って言っても聞こえないか。そのまま俺は家へ帰った。


 翌日ーー


 「これより三日間の文化祭が始まります。みなさんそれぞれクラスメイト達と力を合わせて_______」


 学校の体育館に全校生徒が押し込められ開祭式が行われていた。しかしそこには先頭にいるはずの秋の姿が見えなかった、それを不思議に思ってると開祭式が終わった。


 「それでは! 月宮高校文化祭っ、始まり〜っ!」


 さっそく適当に食えるものを買って屋上で寝てよう。そう考えて適当なものをいくつか買い屋上へ上がった。そこには秋が居た、何か考えているようだがなにを考えているのだろうか。


 「おい秋、開祭式にも出ずこんな所で何をしている? 俺でも開祭式には出たぞ?」


 俺が声をかけるとゆっくりとこちらを振り向いてきた。


 「あぁ涼くん、ごめんね。ちょっと、考え事してたよ。でも、そっか。涼くんはちゃんと開祭式、出たんだ! 偉いね!」


 「いや、一応そういう事はするがな。それに昨日お前はサボるなと言ってきただろう。俺がなにか悪いことをしたのか?」


 「あ、いや、式にもちゃんと出るのが、意外だったから……」


 元気のない表情、所々詰まってる言葉、なにか言いたそうな素振り、言いたいのに言えないという事なのだろうか。だったら言えるようにしてやろう。


「おい、なにか言いたい事があるんだろ。だったら言ってみろ、聞いておく」


 「えっと、昨日あんなこと言われちゃったから凄い言いづらいんだけどね? あの……ちょっと、私と……付き合って欲しいって、思っちゃって」


 「別に良いぞ」


 「へっ?」


 「別に良いと言っただけだが頼んでおいて嫌とでも言うつもりか?」


 「あ、いや、そんな事は言わないけど……」


 「で、どこに付き合えば良いんだ? 飯なら買っちまったが」


 「え? あの、  なにか勘違いを(小声)」


 「なんて言った?」


 「いや、なんでもない! 買っちゃったのなら私も買ってくるよ! ちょっと待ってて!」


 秋はいつも通り早足で屋上から消えていった。



 数分後〜〜


 「お待たせ! 適当に美味しそうなもの買ってきたし、食べよ?」


 「あぁ」


 秋が言いたかったのはこういう事ではなかったような気がした。表情や行動からそう考えられる。


 「おい、言いたいのはそれだけか? それともさっきの言葉の意味がなにか違かったのか?」


 「あ、えっと、その…………………………」


 数十秒沈黙が続いたあと、決心したかのような表情でこちらを見てきた。そこからさっきまでとは違うはっきりと聞こえる声で言葉を放ってきた。


 「私は、涼くんと恋愛的な、恋人のお付き合いをしたいの! 涼くんが私の事を好きじゃない事は昨日聞いたし、それを昨日聞いた後は学校に戻らず家に帰って部屋に閉じこもってた。けど断られるかもしれないけどやっぱり、言っておきたいって、、思ったから……だから………………ごめんなさい……ちょっと……」


 喋りながら泣きはじめた、昨日の言葉は言い過ぎたのか。だが恋人になる条件とはなんなのだろうか、俺にはそういう事はよく分からない。だから別に相手が俺を好きならそれで良いのでは? とも思う。だがこいつはそれでは満足しないだろう。こいつは泣かせたくないし。


 「俺は今はお前の事は好きではない。だが付き合うのは全然良いと思う。付き合いながらお前のことを好きになっていけば良いだけだしな」


 やけに優しく、恥ずかしい言葉が口から出てきた。正直俺がそんな事を言うとは自分でも思ってなかった。本人も分かってないのだから他人には当然理解出来なかっただろう、その証拠にとなりの秋さんが口を半開きにして瞬きもせずこちらを見ている。よほど今のことばに驚いたのだろう。


 「え、この涼くんが、この急変暁 涼くんがそんなことを言ってくれるなんて、ビックリしたし嬉しいけど、本当に?」


 驚いたがあまり深く考えず喜びのまま行動するのが秋 優美、成績は良いのにアホというよくいる(?)パターンなのだ。


 「あぁ」


 そのまま流れで焼きそばを食べながら俺と秋の交際が決まったのだった。

 文化祭二日目は秋と軽く文化祭を回ることとなった。交際が始まると相手にも合わせなければならない、そうなる事が完全に頭から抜けていた。だが不思議とめんどうには感じなかった。

 文化祭三日目、今日はクラスの出し物の手伝いに来いと言われた。しかし秋はともかく他のクラスメイトはあれが来ると嫌がるだろうしと遠慮した。しかし秋に強引に連れてこられた、教室に入ると皆嫌がったり引いたりする以前に秋が俺を引っ張ってきた事に驚いて動きが止まっていた。


 「ちょっと皆〜! 今日は涼くんにも手伝わせるから! ちょっと無理やり頑張ってもらうけどちゃんとしてればこの人も役に立つと思うから〜!」


 おいおい、まじかよたしかにこのクラスの出し物は喫茶店と言うよくある物なので出来る、と思ってはいる。だが一番の問題は他のクラスメイト。しかしこいつらが拒否してくれれば俺はやらない理由をつけられる、そしてまた屋上に行ける。と、思っていたら


 「そっか! 暁くんが! 中学の頃は文化祭の喫茶店やってたもんね! 接客とかも」


 「けど接客はやらせない方が良いかもね私は中学違かったし分からないけど、手伝ってくれるなら良いじゃない!」


 その場にいた人からは全員に受け入れられた。もちろんそこにはバカ三連中は居ないが。なら仕方がないやるだけやってみるか。


 「あぁそうか、ならなにすりゃ良いんだ?」


 と聞くと裏で料理の具材の下ごしらえをしろとの事。来てみれば飲み物のパックや卵や調味料と言った普通の食材もあったが、魚や肉の塊り、メロン一玉やら明太子だのすじこだのの生ものといった喫茶店には無さそうなものまであった。端に電子レンジとコンビニ弁当のおかずが抜かれご飯だけが残ってる物まで置いてある。まさかこいつらコンビニ弁当の具材温めて出してるんじゃないだろうな? 恐ろしいと感じたのは久々のことだった。 それから頼まれるものを作ったり、散らかったものを片付けたり意外と働いた。そしてついに三日間の文化祭も終わった。今は後夜祭をしているが校庭の隅の階段に腰をかけていたら秋が話しかけてきた。


 「今日はありがとうね? 私が強引にやってもらったから言えるたちではないとは思うけど、あんなに働いてくれるとは思ってなかった」


 「そんな事はわざわざ言わなくて良い。文化祭というのは初めてだったしな」


 その言葉に軽く疑問を抱いたのか少し不思議そうな顔をするがすぐにその表情が変わり別の話題を吹っかけてきた。


 「ねぇねぇ、そういえば戸部くんたちとは最近どうなの? なんかあの三人最近ずっと人気の無さそうな場所でひそひそ話しをしてるんだけど、ちょっと怖い感じがするの」


 「そうか、なら脅して問いただしてみるだけだ」


 「ちょっ、そんな事しないでよね? そんな過度な刺激しちゃダメよ?」


 「そうか、なら仕方がない」


 とは言いつつこの間あいつに感じた妙な感情と関係があるのは確実だろうか調べないわけにはいかないので秋を騙すかたちにはなるが、決行することにした。

 そのあとは後夜祭も終わり家に帰った。家に帰ると家族が文化祭の感想を聞いてきたが、「まぁ、普通だった」と返して会話を終わらせた。



 翌日____


 昨日聞いたバカ三連中について調べるべく休み時間

に俺は三人を尾行した、そして人気の無い場所に着いた時話し声が聞こえた。これでなにを企んでいるかを知れる。


 「なぁ結局ここまで考えたがそんな事を出来る方法なんてないぜ?」


 「だけどよ、暁は絶対に退学にしてやる」


 「そうだ、どんな卑怯な手でも良いからあいつに仕返しをしてやりたい」


 「この際正直悲しいしやりたくはなかったが優美ちゃんも利用することにするか」


 そうか、喧嘩では勝てないと分かったから今度は排除という手に出たか。これは早めにしれて良かったかもしれない。今すぐにあいつらを潰そう。秋を利用するという言葉に頭がヒートアップした。退学なんざ知ったこっちゃない。気に食わない奴は捻じ伏せる、これが俺だ。たとえそれがどんな理由があろうと俺に害が及ぶのなら排除する。


 「よぉ、バカ三連中。お前たちのお望み通り俺は今日で退学になるかもなぁ」


 その声に三人はビクッと肩を震わせこちらを見てすぐに後ずさった。しかし体とは裏腹に口は達者なようだ。


 「へっさっさと退学してくれるならありがてぇこった! お前と言う異物が消えれば俺たちは楽しく学校生活を送れるんだよ!」


 「……なにを勘違いしている? お前らも学校からはさよならだ」


 「……は? なにを言ってるん『ドガン“ッ』……」


 喋っている間にそいつの頭を持ち近くにあった室外機の角に思い切り頭を叩きつけた。こいつはしばらく昏睡状態だろう。それを見て腰を抜かしたのか残りの二人は後ろに手を突きながらゆっくり後ろに下がっていく。


 「俺が退学する理由はお前らに過度な暴行を加えたからだと思うがな」


 その後はすぐに二人に重傷を負わせその場を去った。あの三人は脳に大きなダメージを負ったので数年は目を覚まさないだろう。

 そのあとは教室には戻らず学校を出て適当に歩いていた。その時になんとも不思議な光景を目にしてしまった。いきなり俺の足元に謎の光が現れた、漫画やアニメでよく見る魔法陣のようなものだ。その光は次第に強くなりやがて俺のしかいは全てその光に覆われた。そのまま意識が遠のいていくように感じたが、その時声が聞こえた。


 〈おめでとう第三試練クリアだよ〉


 と。

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