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二十三 再会

 王子が来た!

 ただし、目立たないようにとの配慮となのか、紋章のない馬車に供を二名だけという軽装備での我が伯爵家のタウンハウスへの来訪だ。

 私は父に呼ばれて母と応接間に出向き、そこでその供の一人がダンベールだと知った。

 王子を警護する彼ともう一人は、馬車と同じく目立たないための配慮かダークグレーのスーツ姿だった。

 ああ、ここは初対面の様に振舞わなきゃいけないのに嬉しさで飛びつきそうだ。


「ああ!イゾルデ!相変わらず美しい。俺に飛びついて来てくれないのが悲しいがね!」


 私は部屋に入る前にダンベールに両手を掴まれ、彼によってぐいんと応接間に引き入れられてしまった。


「え?」


 ここは初対面で初めましてと紹介しあう場面では無いの?

 まずは伯爵である父に王子へご挨拶するように促され、その後に護衛の人に会釈して、という流れが通常でしょう。

 私が相変わらずの彼に何か言おうと口を開いたところで、父の真向かいの上座に座っていたらしきベネディクト第二王子がダンベールに厳しい声をあげた。


「何をしているのです!イゾルデ嬢に醜聞を呼ぶ行為は禁止したでしょう。あなたがそんなでは今すぐに帰りますよ!」


 まるで母親が子供にする叱責みたいだと考えながら私の手を放さないダンベールを見上げると、彼は全く意に介していないニコニコ顔である。

 彼は自分を叱責した王子に顔も向けなかった。


「あ、どうぞ、お帰り下さい。私は休暇中ですし、伯爵家の中に入れましたから後はもういいですよ。」


 王子のソファの脇に立っていたもう一人の護衛は口元に手を当てて笑いを隠し、沈着冷静と誉れ高い王子は顔を真っ赤にしてダンベールをさらに怒鳴った。


「不敬罪で今すぐ処刑しますよ!この万年発情男が!」


「ハハハ。誤解されるのは嫌ですね、殿下。俺が発情するのはイゾルデだけです。ああ、結婚したら万年発情ですか。ああ、確かに正しい。さあ、イゾルデ、これから俺達の結婚の話し合いだ。さあ、座ろうか?」


「ああ、違うでしょう。もう、すいません、ユーフォニア伯爵。猛獣をご自宅に入れてしまった事を謝罪いたします。猟銃で撃ち殺したくなったら構いませんよ。私こそそんな気持ちですから。」


 父は王子に対して疲れた様な笑顔を返し、お察ししますと王子を労った。

 そんな場面でありながらダンベールは全く一切意に介しておらず、私の母への挨拶もなく私をぐいぐいと引っ張って応接間のソファに座らせた。

 一人掛けソファであることにほっとしたが、彼がそのソファのひじ掛けのフレームに腰を掛けた事で、私は椅子に閉じ込められたような気持ちになった。


 これは彼に監禁されてしまったということだろうか?


 目の前の彼の足は何てスラっとして長いのだろう。

 私は彼の裸の足を思い出してしまった。

 足の上にある、えくぼのあるきゅっとしたお尻まで!


「イゾルデ。」


「ひゃい!」


「ハハ、どうしたの?ねえ、君は知らないだろうから紹介するね。こちらの方が第二王子のベネディクト様だよ。」


 物凄いニコニコ顔で私に王子を紹介して見せたが、紹介された王子は私達に振り向いて無感情な表情を見せていた。

 いや、私はあなたの事をちゃんと存じ上げていましたわよ!


「あ、あのね、ダンベール。この国の人間ならば王子様を知らない人はいないと思うの。」


「おや、君はパレードでは俺だけを見ていたのでしょう。」


 私は恥ずかしさと情けなさで両手で顔を覆った。

 否定の言葉が出てこない!

 パレードで近衛兵の制服を着て白馬に乗るダンベールは、この上なく格好の良い夢の王子様のようにも見えたのだ。

 こんななのに!

 もう会えないって泣いていた自分を絞め殺してやりたい!

 こんなじゃないのって!


「殿下、猟銃を捜してきてもよろしいですか?」


「こん棒の方が良いかもしれない。弾が勿体無い。」


 父と王子も何を言い合っているの!

 そして、王子とダンベールは何しに来たの!

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