十二 再びのお使い
なんて言う事だ、あの扇情的な下着がイゾルデに全く似合っていなかった。
やはり彼女は根っからの令嬢だったのだろう。
飾り窓の娼婦のような下着姿の彼女に喜べるどころか、聖女を貶めてしまったような苦々しい気持ちになってしまっただけであった。彼女は何もしなくても俺を盛らせてしまうのだから、清楚を一番に考えた服を与える方が良かったのだ。
ただし、彼女の裸はどんなものかを知ることは出来たので、俺があの下着を盗んで彼女に着せ替えた行為は無駄でも無かったと言える。
胸は小さすぎず大きすぎずに丸く瑞々しく膨らんでいて、俺の大好きな胸の形であったと言える。また俺を喜ばせて何ともいえない気持ちにさせたのが、彼女の腰が筋肉で締まっているという所だ。
きっと彼女は馬術が得意か好きに決まっている。
俺の乗る馬が毎回同じであると見通していたくらいだ。
そう、あれは俺の愛馬では無いが、ほとんど俺専用となっている馬なのである。
「令嬢のあの子は、パレードで俺だけを見つめていたのかもな。照れるな。」
俺はイゾルデに乗りこなされている自分を想像しながら、イゾルデを閉じ込めている部屋の隣の部屋のドアを開けて入った。
召使いを連れて船に乗り込む貴族の為に、召使い用の部屋が隣にしつらえてあるのは珍しくない。俺は召使い用の部屋付の部屋を借りていたのだ。
「ああ、仕事には戻りたくはないな。戻ったら、こんなトイレもシャワーもついていない部屋に押し込められて、主君の安全に耳をそばだてて控えているだけだからな。」
ユーフォニア伯爵領では特産物と化しているらしい猫の世話も面白そうだと俺は鼻で笑うと、作り置きのクローゼットから手に入れた着替えを取り出した。
貴族様は服の一枚二枚が消えても気付かない。
それなりな金さえ握らせられれば、召使いから主君の古着ぐらい簡単に手に入れる事が出来るのだ。
「ああ、客船で良かった。貨物船だったら本気で着た切り雀だ。」
俺は着替えを抱き締めると、醜悪な服を纏っている姫を救うために、いそいそと隣の部屋へと急いだ。




