QUEST7 ホロ総合学園体育祭(後編)
複数んび地に分けて行われる体育祭は4日目を迎えた。種目もスプーンレースや玉入れ、障害物走や200m走が追加され、グラウンドは参加者の姿で溢れていた。
現在、黄色チームは3位、このままいけば1位の紺チームとワンツーで結果発表を迎えることができそうだと私は思った。
早速、今日追加された種目であるスプーンレースに参加するため校内の別グラウンドへ行くとアイレクスの後姿を見つけた。声を掛けると「もしかしてヒジリもスプーンレースに参加するの?」と聞かれ、私は「うん、もしかしてアイレクスも?」と聞き返したら「そうだよ。」と答えられた。
そうしているうちに私たちの順番になり、それぞれのスタート位置に立って
「普段は仲間だけど今回は敵、負けないからね。アイレクス。」
「僕も君を勝たせる気は無いよ。本気で来てよ、ヒジリ。」
とお互い宣戦布告した。そして、テニスラケットに似たアイテムが右手に握られ、左手にはボールが出現した。ボールをラケットの上に置き、スタートの体勢を取って合図を待つ。
十数秒後、「位置について、よーい・・・」の後に銃声が響き、一斉にスタートした。ボールを落とさないよう慎重に運ぶのは結構大変でみんな一度はボールを落としてタイムロスをしてしまう。だが、そんな中緑チームの人はタイムロスなくスムーズに走れている。
みんな負けじと走るも逆にボールを落としてしまい余計タイムロスするだけだった。その結果、緑チームが圧勝する形となり、私は「あんなに繊細でかつ速く走れるなんてすごい・・・」と思った。
次は障害物走に挑戦することにした。だが、ゲーム内の体では不利な点が私にはある。それはネットくぐりだ。理由は大きな胸が地面に擦れるからだ。でも私はそれを承知の上で走ることにした。
全部のレーンが埋まり、合図と銃声が聞こえると私たちは一斉にスタートした。
バランス感覚に優れている私は平均台を難なくクリアした。そして次は問題のネットくぐりだ。案の定胸が地面に擦れ、この時ばかりはリアルでは貧乳で良かったと私は思ったが何とか突破した。
次に待っていたのは飴食いだ。リアル同様白い粉が入った容器に飴が隠れておりそれを手を使わずに探し出すというもので、私は容器に顔を突っ込む。顔面がこなまみれになりつつも何とか飴を見つけ出し、私は早く粉を洗い流したいと思いながら最後に待ち構えている麻袋へと向かった。
地面に置かれていた麻袋にまずは右足、そして左足をズボンを履く要領で入れ、両手で麻袋の縁を握ってジャンプしながら進む。そして、6位でゴールした私はすぐさま顔を洗いに水道へと向かった。
その後も私は様々な競技で得点を稼ぎ、4日目の午後7時時点で黄チームは3位。だが、2位である赤チームとの得点差を見て雲行きの怪しさを感じた。この調子ではアイレクスやオウカのいる紺チームとのワンツーフィニッシュは難しい。
なるべくこのまま競技を続けたいがそうはいかない。何せリアルでは現在夜、そして我が家ではそろそろ夕飯の時間だ。なので、他のメンバーに後を託してログアウトした。
部屋の時計を見ると午後7時半、もうすぐ夕食ができる頃だ。リビングで待つために下へ降りるとソファは樹に占領されていた。樹は私を見つけると「姉貴、学園大戦のホームページを見てみたんだけど結構面白そうだよね。いつ買いに行く?」と聞いて来て私は「それじゃあそのうち買いに行く?」というと樹は「どうして姉貴はそんな曖昧なこと言うの・・・」と不満げに言われた。
夕食を食べ終わり、再びログインした私は玉入れの会場へと向かった。すると、後ろから「あれ、ヒジリじゃん。また鉢合わせしちゃったね。」と話しかけられた。振り向くとそこにはアイレクスとオウカがいた。アイレクスは私に対して「今回も負けないよ。何せ僕とオウカには作戦があるからね。」と言った。
どんな作戦か気になりつつも玉入れに参加した私たちはそれぞれ自分のチームの籠の周りに立った。そして各々が加護に向かって玉を放り投げるふと私は隣の紺チームの方を見るとアイレクスがオウカを肩車していた。これは流石に卑怯だがワンツーフィニッシュを目指している私としては紺チームが失格になると分が悪いため見て見ぬふりをすることにした。すると、「おいちょっと待て、それは無しだろ!」と男性の声がした。声の主の方を向くと、橙チームのメンバーの1人がアイレクスに抗議していた。
だが、アイレクスはそれを無視して、オウカは自分に投げ渡された球を籠に入れ続けた。
そのまま時は過ぎ、、紺チームが1位と言うアナウンスが聞こえると、「あんな手を使って1位だったのに失格にならないなんて納得いかねえな。」やら「ふざけんじゃねえぞこの恥知らず野郎め!」といった声が聞こえ、遠くにいた赤、白、青を除く各チームのメンバーがいかにも襲い掛かりそうな勢いでアイレクスに詰め寄った。
私は「どうか穏便に・・・」と宥めるも桃チームのメンバーに「お前、あいつを庇う気か?」と詰られた。これは埒が明かないと思い、私は2人を引っ張って逃走した。
そして現在、私たち3人はホロ総合学園近くの商店街に身を潜めている。見つからないよう小声で
「ここまで来れば追ってこないよね。」
「そうかもね。それにしても2人とも玉入れで肩車は卑怯でしょ。そのせいで敵作っちゃってるし。」
「御免なさい。実はあたしが考えたの。あの作戦。」
「とりあえず見つかる前にログアウトしようか。特に僕の場合はデスペナじゃ済まないだろうし。」といった会話と共にログアウトした。
酷い目に遭わずに済んだのはいいがいくら仲間とはいえあんなことをしたアイレクスやオウカを庇って多くのプレイヤーを敵に回した事に私は後ろめたさを感じている。これでは当分の間ログインし辛いだろう。その点について2人はどう思ってるのだろうか知りたいが肝心の連絡先やSNSのアカウントを知らない。なら、検索すればいい。試しに「アイレクス」と検索すると出てこなかった。今度は和訳して「柊」と検索したら案の定、声優の柊 沙夜が出てきた。
ツイートを見ると、「ゲームで敵を沢山作ってしまった。」とツイートされていた。だが、ゲーム名が伏せられていたため、「学園大戦」での行いかどうかは分からなかった。
オウカの方はそもそもSNSをやっていない。なので、どう思っているのか知ることは不可能だった。
翌日、また翌日と私はログインしなかった。あの時のことで罪悪感を感じているからだ。イベント最終日になり、私はデスペナルティ覚悟でログインしてリレーに挑んだ。メンバーは幸いにもルール上決められている4人丁度だった。
話し合いの結果、アンカーを務めるのは私になった。各チームの第1走者と第2走者がそれぞれトラックの反対側でスタンバイすると、観客席から「紫と紺色は負けろ!」やら「どうせ紫のやつは妨害するんだろ、こんな厚顔無恥なクズを勝たせるんじゃねえぞ!」といった罵声が聞こえてきた。第2走者を見ると、そこにはマヒロとアイレクスがいた。まあ、あの2人はイベントで姑息な手を使ったため罵倒されるのは妥当だろう。そう思っているとリレーが始まった。
最初は青チームが若干リードしており、白チームが遅れ気味だ。そのまま第2走者にバトンが渡ったがこの直後にハプニングが起きた。赤チームが転倒したのだ。こんな時に人は無慈悲になるのはリアルでもゲームでも同じだ。どんどん抜かされて行き、赤チームは最下位になった上にだいぶ引き離されてしまった。この差は第3走者でも縮められず、とうとうアンカーにバトンが渡った。現在3位の私は赤チームを哀れに思いつつも走り、順位を維持してゴールした。
赤チームの観客席から「おい、紫の2番手のやつ!またお前が妨害したんだろ」と罵声が聞こえたが真実は確認できなかった。
そして翌日、ゲーム内でメールが届いた。見てみると、それはイベントの結果報告だった。どうやら優勝は紺チームで2位は私たち黄チームだった。即ち、目標は達成されたのだ。
私はその結果が嬉しくて横で報告メールを見ていたアイレクスとハイタッチしたのであった・・・
廿楽です
お待たせして申し訳ありませんでした。
障害物走自体は中学2年の時にやりましたが自分の場合は陸上競技で使うハードルをくぐるのが大変でしたね