QUEST1 学園生活開始
「『学園大戦』只今完売しました。」とパソコンショップから店員の声が聞こえ、「クソッ、またかよ!」と客と思われる人の声も聞こえてきた。私はそれを無視して駅に向かう。
帰りの電車の中で私は「やった・・・やっと買えた。」と一人嬉しそうにつぶやく。私の名前は西條 聖那。高校2年生だ。人気が強くなかなか手に入らなかった『学園大戦』というVRMMORPGを購入して家に帰るところだ。
西暦2035年12月に発売されてからというものの世界各地で品薄状態が続き私も4か月待って誕生日に購入できたというわけだ。
そして、帰宅し、パソコンの電源を入れてからソフトを入れ替えてヘルメット型のVR機器を装着しゲームを起動する。すると、「welcome to Gakuen-Taisen」と表示され視界は謎の空間へと向かった。そこには一人の男性が座っており「私がゲームマスターのエデュです。」と名乗った後に「あなたの名前は何ですか?」とキーボードを出現させた。私は「名前かぁ・・・いつものあの名前にするかぁ。」とつぶやき、「ヒジリ」と入力した。その直後、2枚のカードを机上に出現させると「あなたのアバターの性別はどちらですか?」と聞いてカードを捲った。2枚のカードのうち片方は「男性」、もう片方は「女性」と書かれていて私は「もちろん『女性』だよね。」と「女性」と書かれた方に手を伸ばした。
次に紙が挟まったバインダーを机上に出現させるとエデュは「貴方の外見を決めます。」と私にそれを差し出した。「うーん、どうしよう。とりあえずバストサイズは最大にしてっと・・・あとは髪の色を変えるだけでいいかな。」とチェックを入れていく。私は身長は平均的だが貧乳であることがコンプレックスだ。だからせめてゲーム内では胸が欲しい。なのでバストサイズの項目は右端にチェックを入れた。それ以外は特にこだわりが無いため胸の大きさ以外ではリアルでの見た目をベースに髪の色を変えるだけに留めておいた。因みに髪は橙色にした。
バインダーを手渡すと魔法か何かで私の姿が変わり回答通りの見た目となった。大きな胸を手に入れたことで「パッドの感触じゃない・・・本物の感触だ・・・やっと欲しかったものが手に入ったんだ。」と嬉しくなった私に対してエデュは「まだ終わってませんよ。」と呼びかけて12枚のカードを机上に出現させた。それぞれに「ヒューマン」、「ドラゴノイド」、「マーメイド」、「シルフ」、「ワービースト」、「ドワーフ」、「エルフ」、「オーガ」、「ヒューマロイド」、「デビル」、「インキュバス」、「サキュバス」と書かれておりそのうち「ドワーフ」と「インキュバス」の2枚が外された。私は「どうしよう、私ってこういう『種族』の概念があるネトゲって初めてなんだよね。だからとりあえず『ヒューマン』にしておこう。」と「ヒューマン」と書かれたカードに手を伸ばした。
そして、種族が決まるとエデュは「次に自分が所属する学校を決めます。」と薄めの本のようなものを渡してきた。その中には作中で登場する学校の情報が掲載されていた。一般的な学校からヤンキーが多い学校、はたまた男子校やお嬢様学校まであり私は「へぇー、いろんな学校があるんだ。どれも個性的だし迷うなー。」と8つのうちのどれにしようか迷った結果「よし、ここにしよう。」と学校を決めて「ボルティア学園でお願いします。」とエデュに言った。その答えにエデュは「分かりました。何度でも転校できますが一度転校すると30日間は転校不可能です。」と了承の返事と共にシステムの説明をした。それから「それではあなたの武器を選んでください。」と目の前にさまざまな武器が出現した。出現した武器は片手剣、両手剣、短剣、鈍器、斧、グローブ、妖刀、片手槍、両手槍、弓、片手銃、両手銃、片手杖、両手杖の14種類、私は「近づきすぎて痛い目に遭うのはなんか嫌だし両手で持つのは重そうで動きにくいし・・・」と消去法で絞った結果片手銃に目を付けた。エデュに「片手銃にします。」と申告した。すると、私の右手に拳銃が装備され「それでは貴方の学園生活が充実したものになるのを祈ってます。」とエデュは私を送り出した。
必要な事項を決めて私が降り立ったのはボルティア学園の校門前だ。学校の敷地内に入ると一人の男性が待ち構えていた。その男性は私を見ると「ヒジリさん、ようこそ僕たちの学校へ。僕はこの学校で教師を務めているユウリと申します。」と自己紹介して「まずはこのゲームについて説明しますので教室に移動しましょう。」と教室に行くよう促した。私は「私のクラスは・・・」と聞くと「メニューの学生証に表示されいます。」と答えた。メニューを開くと表示されている学生証に「1年B組 ヒジリ」と書かれていた。
そして1年B組の教室でユウリ先生から色々な事を教えられ最後に「クエストを受けたいのであれば掲示板を見てくださいね。簡単なものなら学校の掲示板に貼られています。」とクエストの受け方を教えてくれた。
早速掲示板へ行くと幸い誰もいなかった。残っていたクエスト情報を見て「NPCの救出かぁ、戦闘じゃないのが残念だけどまあいいか。」と受注すると「QUEST START」と表示された。「えっと、まずはボルティア学園の第1会議室に行けばいいのか。」とガイド通りに第1会議室へ向かった。
扉を開けるとそこには既に何人か座っていた。私は空いていた席に座りクエストの説明を待つ。その間、隣に座っていた中性的な外見のアバターに「君もこのクエストを受けたの?」と声を掛けられ私は「はい、そうです。」と返事をすると「そうなんだ。僕はクレセント学館のアイレクス。君は?」と自己紹介と共に名前を聞かれたので「ボルティア学園のヒジリといいます。」と自分の所属と名前を名乗った。するとアイレクスは「ねえ、良かったらフレンド登録しない?」と持ち掛けた。私はこれに承諾するとアイレクスからフレンド申請が送られてきた。フレンドリストの「承諾待ち」に名前があるのを確認し「承諾」のボタンを押した。
フレンド登録が完了し暫く待機していると扉が開く音がして誰かの足音が聞こえた。その足音を発していた人はホワイトボードの前に立つなり「みんな、今回は集まってくれてありがとう。俺の名前はゼン。今回のクエストで救出対象となっている女の子のうちの一人の兄だ。」と自分がどんな立ち位置かを話し「俺の妹の他にも3人が捕まっている。全員女の子だ。」と説明しアイレクスが「犯人の目処は付いてるの?」と質問するとゼンは「ああ、犯人はフレイ学園のならず者たちだ。」と答えた。
それを聞いた他のプレイヤーの一人が「フレイ学園といえばリアルでは犯罪になるような事を平然とやってのける連中ばかりじゃねえか。おい、これは放っておけねえな。」と前向きな姿勢を見せた。それに続き他のプレイヤーも「ああ、そうだな。」「痛い目見せてやるわ。」と立ち上がった。
だが、ゼンは「まあ待て、まずは作戦を立てることが重要だ。」と静止して「まず、犯人は閉店した工房に立て籠っている。まず正面から突入してそれから裏口を使って犯人が逃げるところを抑えて人質を助け出すというのが今回の作戦だ。今ここにいるのは8人だから正面から突入するのに4人、裏口で待ち構えるのに4人という編成で行く。」と作戦を立て全員パーティーを組んだ。
私は初期装備の拳銃を手に他の3人と共に突入する。そして「抵抗はやめてください。さもないと撃ちますよ。」と銃口を向けた。その言葉に犯人は「そんなショボい拳銃でやれるもんならやってみな。」と挑発してきた。私はおそらくこちらが撃つと向こうは人質を盾にするのではないかと思い「例えこのまま撃ってもあなたのやる事は分かっています。さあ、人質を解放してください。」と交渉する。
だが、犯人は「やだね。」と拒否した。交渉決裂だ。ならば強硬手段に出るしかない。そう思った私は犯人のうちの一人の背後に回り込んだものの向こうもこちらを向いた。すると、突然その男は「ぐおっ。」と声を上げて倒れた。おそらく誰かが隙を見て攻撃したのだろう。
それを目の当たりにした他の犯行メンバーは人質を置いて逃げ出したが突入したうちの一人が「逃がさないよ。」と魔法で動けなくする。私は逃げた残りのメンバーを追いかけ扉を開ける。するとそこには裏口で待ち構えていたグループがいてアイレクスが「全員倒したよ。」と私に伝えた。
その後、ゼンが「お前たち・・・ありがとう。本当にありがとう。」と感謝の気持ちを伝え私たち8人に報酬を渡した。どうやらゼン曰く「人質のうちの一人にブルーム女学園のお嬢様がいてその子の親が報酬のお金を出してくれた。」らしい。これで「QUEST CLEAR」と出て「15000ゴルダを手に入れた」と表示された。これで(始まった・・・ゲームでの私の学園生活が・・・)と思っているとアイレクスが「おーい、ヒジリー。何か食べに行こうよー。」と呼びかけて来た。私はそれに「うん、今行くー。」と返事をして後を追いかけたのだった・・・
廿楽です
書籍化されていない作品が漫画になる大賞があると聞いて執筆した次第です。