Four じゃあな
「……そう言われても、僕は牢屋にそのまま入るつもりはないよ?そもそも、僕は冤罪を掛けられて牢屋に入れられたんだよ、だから、そのお願いは聞けないかな」
確かに僕が冤罪掛けられたからといって、主犯を殺したのは悪いことかもだけどさ?
そもそも、悪いのはどっちだ?
僕がなんか、悪いことをして冤罪を掛けられた訳ではなさそうだったしな。
「……私はお前を信じたい....信じたいのだけど、お前がやったって証拠しか出てこないんだ!...仮に冤罪掛けられたってことだったとしても、冤罪を掛けられたという証拠もない...」
そんな事を言われてもね...
何にもしてないのにこんな目に遭うのって辛いな...
どうして、真実を伝えられないんだろう...
(あのクズ、力とかは全くなかったですが、頭だけは回ってるようでしたしね...まあ、残念ですが、どんだけ頑張っても相手には伝わらないと思いますよ?それに、もう力も少ないですし、一旦逃げませんか?)
「―――だから、もう少しだけ、もう少しだけ証拠を探す時間をくれ!その間に絶対にお前が何にもやってないって事を証明して見せる!...例え、証明できなくても、死刑にはならないように頑張るから、だから頼む、少しの間だけ、牢屋に入ってくれ!」
……
かつての仲間とデビーがお互いに違う提案をしてくる...
確かにここで牢屋に入れば、その間に何かしら冤罪を掛けられたっていう証拠が出てくるかもしれない...
だけど、それは多分ないだろう...
僕があれだけ頑張って探したのに、まるで、冤罪を掛けられた証拠だけが溶けたかのように消えているのだ...
しかし、ここで逃げたとすれば、多分だが、僕が王様を殺した犯人であることを認める事と同義だと思う...
実際、牢屋から抜け出してるしな...
普通の人は、あいつが犯人だから逃げたとしか見れないはずだ...
つまり、この選択肢はどっちを選んでも上手く行くことは薄い...
だけど、時間制限があるのも事実...
僕は...どうすればいいんだ?
「……とりあえず兵士たちよ、一旦別の部屋に移動したいんだが、大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫だと...どちらにせよ、全ての決定権は女王...レッカ様にありますし、私たちに拒否権はありません。」
(マスター!どんな行動をするにしても、時間制限があるってことを忘れないでくださいね?私もギリギリまでは粘るので、それまでに決断をしてください!)
……
とりあえず、扉が壊れているから、会話が全部外に漏れることを避けたのか、かつての仲間は場所を変えたいと...
まあ、とりあえずそこで、どうなるか次第で決めよう。
その方が確実で安全だし...
……
そして、前までいた部屋とは少しだけ離れた別の部屋に移動した...
前いた部屋より少しだけ狭い...のだが、ここはお城なので、僕からしたらそれでもかなりでかい。
そして、この部屋には元仲間と僕、それと、実体とかはないけど、僕とだけ話せるデビーの3人だけになった...。
「それで、この部屋には私以外の人はいない。だから、個人的な事になってしまうが、聞こう。お前は本当にやってないんだよな?」
「本当にやってないんだけどね...」
「―――そうか...それだったら、信じよう。そして、少しでも証拠を探すために、聞いておきたいのだが、冤罪を掛けられるような何か心当たりはないか?仮に冤罪を主張したくても、理由がないとこっちも主張できないし...」
「そもそも、そこに行き着くんだよね...こっちも理由が分からないんだよ...」
だって、冤罪を掛けられる理由なんてなかったんだよね。
今まで全くもって接点がなかった人間に冤罪を掛けられたんだぜ?
そんなのを僕が理解するってことの方が難しい気がするけどな...
うーん...デビー、何か思い付くことってある?
(特にはないですね...。)
「考えてみたんだけど全く分からないかな...本当にごめんね」
「―――そうか...そうなると、ますます厳しくなってくる気がするな...さっき公の場で言った頑張ってみるって言葉なんだけど、多分だが、どれだけ頑張っても死刑以上の罪にはなってしまうと思うんだ...」
それってヤバくない?
これって、逃げるしかなくないか?
このまま牢屋に入れられたとしても生きれるって保証はないよね?
だったら逃げるしか...
「―――だけど、お前もかなり辛い目にあってしまうかもしれないが、この状況を切り抜けれる策が1つだけある。ただし、これを実行すると、まともに生きていくのは厳しくなるかもしれない...一応作戦だけでも聞くか?」
おお、策が実はあるってこと?
その策次第では状況が一転するってことだよね?
一応聞いておこう!
「その策を信じるよ、だから教えて!」
「ああ、その策はな―――」
...
なるほどね!
その策だったら確かに良さそうだ!
欠点は無さそうだし、上手く決まりそうだし!
「この作戦でいいか?...この策以外の策は思い付かなかった...悪いな」
「いいよ!この策で行こう!」
「じゃあ、早速実行するぞ!.....................[ファイア!]」
元仲間が放った魔法は外の方向にある壁に向かって放たれた。
そして、簡単に壁は燃え尽きる。
この人が使う炎属性魔法ってものすごく強いから、耐久力が高いお城の壁でも簡単に貫いてしまうのが怖いよね...。
「....[ファイア!]」
「大きな音がしたけど何があったんですか?入ってもいいですか?大丈夫ですか?...開けますよ!」
元仲間が更に外の方向にある壁に向かって魔法を放つと同時に、部屋の外で構えていた兵士が入ってくる。
仲間のおかげで、完全に外の景色が見えた!
だけど、兵士が入ってきたって事はかなりきつくないか?
いや、大丈夫だろ、これでも僕の仲間だったんだよ?
そんな人が一般の兵士に劣るわけがない!
僕は、仲間が作ってくれた逃げ道をそのまま進む。
「うおっ、レッカ様、なにやってるんですか?何で魔法を放ってるんですか?一回落ち着いてください!だ、誰か、レッカ様を押さえて下さい!」
よし、ここまでは作戦通り!
あとは、炎魔法の応用で煙幕を出して、兵士を目眩まししている間に一緒に逃げるだけだ!
僕は、後はここから飛び降りて逃げるだけ、後は仲間が来るのを待つだけだ!
...
(あの小娘何をやってるんでしょうか?何でこっちに逃げようともしないのでしょうか?魔法を使おうとするような雰囲気もありませんし...)
それだよね?
ってか、兵士がこっちの方に迫ってきてるんだけど?
このままだと仲間が逃げれないよ?
「この犯罪者を早く捕まえろ!このままだと逃げられるぞ!」
(マスター、このままだと捕まります!一旦逃げましょう!このまま捕まったら、せっかくの逃げるチャンスが無くなってしまいます!あの小娘が何を考えているかは全く分かりませんが、逃げましょう!)
確かにこのままだと捕まる。
でも、ここで置いていくのは...僕にはできない!
約束したんだ、一緒に逃げるって!
僕は、仲間がいる方向に走り出す。
「なんだ!?どうしてこっちに走ってくるんだ?逃げないだと?戦うつもりってことなのか?いいだろう、返り討―――」
こんなモブの事は無視だ!
こんなやつ無視してそのまま仲間の所に向かう。
仲間の所まで後、30歩ぐらいか?
仲間はかなりの人に守られてて連れ去るのはかなり厳しそうだが、今の僕には力がある!
この力で、仲間を連れていくんだ!
「―――戻ってくるな!すぐに逃げろ!私の事はいい、だから、逃げろ!」
「いや、一緒に逃げるって約束しただろ!だから、助けてからじゃないと逃げれない!」
「確かにあの時は逃げるって言ったが、本当は私は逃げるつもりはない!だから、早く一人で逃げろ!」
元から逃げるつもりがなかった?
じゃあ、何で一緒に逃げようって言ったんだ?
(マスター、勝手で悪いのですが、私はあの小娘の意見を優先します。)
デビーまでなにを...?
体が動かないだと!?
いや、体が勝手に動いてるのか?
そんな、仲間を置いて出口に向かうなんて絶対にやだ!
止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ...
何故なのか、勝手に足は出口の方向に向かい、そのまま外に勝手に進んでしまった...。
「じゃあな...今までの冒険、楽しかったぞ!」
最後に、仲間がそんな事を言っていた...ような気がした...。
そして、気がついた頃には、街の外に出ていた...。