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【閑話】知識の魔女の憂鬱

更新なかなかできてなくてすみません。

このお話は見切り発車してしまったので再度話を練り直してから投稿していきたいと思います。

次の話でもないですが、主人公不在の他の登場人物も出ますという話を投稿します。


 聖女の塔へ行くには、方向感覚が分からなくなる魔法をかけられた森を抜けなければならない。

 聖女の塔へ運よくたどり着いたとしても、女性のみしか入られない結界が張られた塔に、かつ、聖女を守る女騎士達と戦い、それを抜けなければならない。


 そのはずだった……。






 赤と金で埋め尽くされた王の間。まるであたかもその人物が座ることを想定されていたかのように作られた、美しい金の細工が施された豪華な椅子に座る、キラキラと輝く少年。彼はアーチカ国の王子であり、名前をエリック・アーチカと言う。

 その隣に立つのは知識の魔女として、この世界の成り立ちを知る私__リーン・アークだ。


 エリックは金に縁取られた長い睫毛をふせ、深いため息を吐いた。

 一種の芸術のような所作に見た者は卒倒してしまうだろう。但し、その後に続く言葉がなければだが。


「なんて僕は美し過ぎるんだろう。」


 懐からこれまた金の細工が施された手鏡を手に取り、自身の顔を映し、再度ため息を吐く。言葉を聞いてからは見るも無惨に印象が変わってしまうナルシスト王子。その側に仕えないといけない私はなんだろうか、と知識の魔女である私は頭を抱えた。


「なんで私は貴方みたいな人の近くに居ないといけないんだ。」

「それは君と僕が運命で繋がっているからだろう?」

「貴方と私が繋がっているなんて言わないで下さい。正確に決まってるのは勇者と聖女と王子と魔王ですよ。私はサブに過ぎません。」


 そう、私は物語の登場人物で言うサブキャラなのだ。物語に直接は関係しないが、王子に代々仕え、助言を与える。

 しかしだ。王子がこんなうざいキャラだなんて誰が思うのか。


「ああ、まじでこの世界を作った奴を魔法でぶっとばしてぇ。」

「おいおい、知識の魔女がそんなことを言っちゃダメだろう。」


 魔法なのか王子だからなのか、なんか分からないキラキラとしたエフェクトが王子から溢れ出て私に当たる。地味に当たると痛い。何よりもうざい。


 殴りたくなるのを我慢をするが、抑えきれず顔がひきつる。

 一刻も早く、この王子から離れるため要件を終わらそうと本題に入る。


「先ほど話した通り、聖女の塔へ行くには、方向感覚が分からなくなる魔法をかけられた森を抜けなければなりません。聖女の塔へたどり着いたとしても、女性のみしか入られない結界が張られた塔に、かつ、聖女を守る女性騎士達と戦い、それを抜けなければなりません。」

「それを抜けられるとしたら、呪いを跳ね返すスキルを持つ勇者しかいないけど、彼はまだ修行中だよね?」

「はい。そして、聖女が18となるまで聖女を連れ出さないはずです。」

「では、勇者ではないということだが__女性で、女騎士と戦えるほど強いのか。」

「それが、女騎士は戦わず、眠りの魔法をかけられたそうです。」

「魔法をかけたということは魔女か。だけど、女騎士は魔法を跳ね返す防具を身につけていたのでは?」

「……はい。私が知識の限り作った防具ですよ。」


 そう、私が、運命の通りに事を進めるために作った最強の防具だったはず。因みに聖女の塔を女性しか入れないようにする結界を張ったのも私だ。


「それなのに、なんでここで予定が崩れるんですか。何なの。このキラキラ王子に仕えることから私って呪われてるの?詰んでいるの?ははっ、まじサイコー……泣きたい。」

「それって褒めているのかい?ありがとう。」

「……大変頭が喜ばしいことで。」


 イライラが限界突破。無心になってしまい、淡々と言う。


「勇者と聖女が魔王を倒すっていう運命なのに、これで予定が崩れるってことは下手したらこの世界が滅びますよ。それを正すためにあんたがいるんだからちゃんとして下さい。」

「あんたは流石に……うん、まぁ、君と僕の仲だからいいよ。だけど、世界を正すのは君もだ。」


 指でビシッと私をさす王子。その指からなんかキラキラの光線が出ている。その指を今にもへし折ってやりたいところだが、知識の魔女が自ら運命をねじ曲げてしまうことになるのは避けたかった。黙っていると、王子は分かってくれたかと上機嫌にキラキラを振り撒いてから言う。


「それで、君の魔法を突破した魔女は礎の魔女かい?」

「……そうですね。私の知識を上回るとしたら彼女しかいません。」

「だけど、彼女は死んだはすでは?」


 自信ありげに言う王子にこいつ分かっててわざと聞いているんじゃないかと思う。

 知識の魔女として、この王子には知識を披露している。普段はナルシスト王子で馬鹿しているのに変に聡いのだ。まぁ、物語の主要人物であるからそれも仕方ないことかもしれない。だけど、相変わらずうざいのでやっぱり一発は殴りたいと思うが、ここは我慢だ。


「礎の魔女の死因は不明ですが確かに亡くなりました。でも、今までの彼女の財産は確かに残ってます。私も彼女の魔法の幾つかをコピーしましたし。」

「礎の魔女はその通り名の通り魔法の根本を作った魔女だからね。そんな彼女の魔法を受け継いだ、または奪った人物がいる。」

「魔女かどうかは分かりませんが、会ってみないことには。」

「そもそも、何故聖女を誘拐したのかだ。」

「金品や秘宝は荒らされずにあったと報告がありましたもんね。」


 そこで王子は何故か顎に手を当てて考える仕草をした。喋らければ本当に絵になる王子だ。そんなことを思っていると王子は閃いたと言わんばかりに指をパチンと鳴らした。それもキラキラ付きであった。


「案外、惚れたからだったりとかして?」

「んな、馬鹿な。」

「王子に対してはっきり……流石に傷付くよ。」


 馬鹿とはっきり言ってしまったが、不敬とはならずに王子は不貞腐れるだけだった。まぁ、不貞腐れるのもキラキラを下に溢すように落としていてうざいが。


「女性が聖女に惚れるって……それはどうなんですか?」

「恋とは分からないものだよ。それは、先ほどまでいた聖女護衛騎士筆頭の彼女をみたら分かるだろう?」

「……あれは崇拝に近いような気がしますが。」


 そもそも、聖女が聖女の塔から居なくなった情報を伝えてくれたのは、聖女を守る女騎士のルーン・キュリアスだった。


 __私の責任です。聖女様を助けに行かせて下さい。


 王の間に現れた彼女は凛々しく、そして、鬼気迫る顔はまるで獲物を今すぐにも狩りたい狼のようであった。

あれが恋などと言えるものだろうか。思い出しただけで身震いするような怖さだったのにだ。

 王子は私の崇拝という言葉に引っ掛かったようだった。


「崇拝?僕からしたら一刻も早く愛する恋人を助けに行きたいように見えたよ。」

「聖女と結ばれるなんて、勇者しかいませんよ。唯一聖女を汚さないのが勇者だけなんですから。」


 聖女が何故聖女の塔にいるのか。それは、聖女は男性に触れることによって、聖女としての力を失っていくからだ。しかし、それは勇者には適応されない。勇者には勇者の力があり、それは聖女の力とは異なるものなのだ。だが、王子は私の返答が気に入らなかったようで、キラキラを出しながら指をふった。


「それは男に限ってだろう?女性なら誰でも聖女を汚さない。」

「それはそうですけど……」

「とにかく今は、彼女が聖女を連れ帰ってくるか、情報を持ち帰るかを待つことしか出来ないんだ。そして、聖女が居なかった場合、勇者が気付く前に僕たちも探しに行かないといけないからね。」

「え、絶対行きません。」


 そう返すと王子は椅子から立ち上がって私の目の前まで来た。


「リーン・アークは王子のサポートとして付いてくる。王子の命令は絶対だ。」

「ちょ、ここで権力を振りかざさないで下さい!クソナルシスト馬鹿王子!!」

「君と僕の仲だからいいけど、流石にこの僕も怒るよ?」


 不敬罪にはならないが、こういうことで権力を使うのだ、この王子は。つい出てしまった悪口に遅れて手で口を塞ぐも遅かった。

 王子の指が私の額を弾いた。

 弾いた途端、頭の中でみたくもない王子の映像が流れる。キラキラとしたカメラ目線のサービスショットだ。聖女の力、勇者の力があるように、王子の力というものがあるのだ。王子の力のひとつに相手にとって嫌な映像を見せるというのがある。今、まさに私が見せられているのがそうだ。デコピンだけでこの威力。

 1分ほどで終わったが、1時間以上見せられたかのように吐きそうになっている私を見てキラキラをより一層振り撒きながら王子は笑う。


 こんな王子に仕えるのが嫌だ。うざい。


 私は自身の頭から幸運をもたらす魔法をいくつもピックアップして、ルーン・キュリアスが聖女を連れ帰って来るように呪い(まじない)をかけるのだった。

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