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青春ユニゾン  作者: せんこう
番外・美奈編
408/444

二十二 「美奈と智美 二」

「ねえ、智ちゃん」

「何?」


 スイカも食べ終わって、二人でだらだらと居間で過ごしているところだった。

 美奈の部屋でも良かったが、狭い部屋に二人もいては暑い。風の抜ける居間の方が、いくらかマシだ。


「夏になるとさ、心霊番組とかオカルト番組とか、増えるじゃん」

「増えるねー」

「ああいうの、見る?」

「見るよ。面白いよね」

「信じてる?」

「信じてるとかはないけど、まあ、実際にあったら面白いとは思う。なんで?」


 寝転がっていた智美が、顔だけこちらに向けてくる。

 縁側に座っていた美奈は、庭に目を向けた。


 不思議な店で元子と話してから、力は一度も使っていないし、誰にも話していない。

 別に、元子が封印する道具をくれるまで、誰にも明かす必要はなかった。だが、自分ひとりで抱えるには、少し、重すぎる事実でもあった。


 誰かに、知って欲しかった。

 力のことを知っても軽蔑や畏怖をせず、美奈を美奈のままで扱ってくれるような人に。

 そう思って浮かんだのは、やはり智美だった。

 前の時間軸でも、この時間軸でも、親友として、美奈を支え続けてくれた。その智美なら、信じてくれそうな気がしていた。


「私もさ、超能力あるって言ったら、どうする?」

「あるの?」

「うん」

「へー」

「信じてないでしょ」

「美奈が、冗談言うなんて珍しいなーって」

「本当なんだけど」


 智美がごろりと寝返って、肘をついて上体だけ起こす姿勢になった。


「じゃあ、見せてみてよ」

「目に見える類のものじゃないもん」

「じゃあ、何?」

「他人の心を操る力、らしい」

「らしいって、何それ?」

「詳しい人が教えてくれたの」

「なんか、嘘くさい」


 まあ、自分でもそう思う、と美奈は思った。


「じゃあ、実際に智ちゃんにやってみるのは、どう?」

「私に?」

「そう。私が今から、智ちゃんを操って言う事を聞かせるから、それで証明する」


 智美が、身体を起こして胡坐を組んだ。


「じゃあ、私はそれに逆らえば良いんだ?」

「まあ、そう、かな」

「良いよ、やってみなよ」

「じゃあ」


 許可は得た。あまり大きな命令をしなければ、大丈夫なはずだ。

 何を命令しようか、と美奈は思案した。どうせなら、少し捻りも効かせてみたい。

 少し考えてから、美奈は、姿勢を正した。


「行くよ」

「うん」

「智ちゃんは、今から一分間だけ、私の言う事を聞いて。これは、命令だよ」


 美奈がそう言うと、瞬時に智美の目が、変わった。力が作用したのだ、と美奈は思った。


「……分かった」


 時間制限をつけてみたが、上手く行くだろうか。もし時間制限が通用しなかったら、今度は、今出した命令を取り消す命令を出す。恐らく、それは効くはずだ。そうすれば、智美にかかった美奈の言う事を聞くという命令は、相殺される。


「立って」


 智美が、立つ。


「ジャンプしてみて」


 智美が、ジャンプをする。


「じゃあ、座って」


 それで、命令するのをやめた。

 一分経つと、智美が目を瞬かせた。途端に、困惑した表情になる。


「どうだった?」

「どうだった、って」

「私の言う事、聞いたでしょ」

「???」


 訳が分からないという様子で、智美が眉をしかめた。

 

「もしかして、自覚無い?」

「いや」

「あるんだ?」

「……」


 智美は答えない。

 混乱する智美が落ち着くのを、美奈は黙って待った。


 美奈も、この力については分かっていないことが多い。

 今まで意図せずかけてきた吹奏楽部員達は、命令され従わされたことを認識していなかった。

 それはコウキや陽介もそうで、だから力の話をしても、気のせいだと言われて終わりだった。


 団扇を扇ぎながら待っていると、智美が、小さく声を上げた。


「もっかいやってよ、美奈」

 

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