鼠討伐報酬~イチャモン再び~
洞窟から帰り冒険者ギルドに戻ってきた
カウンターに向かうといつもの女の子が話しかけてきた
「ハジメさんまだ出発してなかったんですか?」
「いやもう討伐し終わって帰ってきたんですけど」
「え?まだ2時間ほどしか経ってませんが」
「普通往復するだけでもそれ以上かかるはずですよ」
「あまり荷物を持ってなかったからですかね?」
「…はぁもういいです」
「あなたに一々ツッコンでたらキリがないので」
半ば呆れたような顔をしてそう言った
「それでイービルマウスの討伐箇所はもってきましたか?」
「はい」
収納から机に乗り切らないほどの鼠の尻尾を出すと
「っっっ!」
「…もうツッコまない…何も言わない」
一瞬驚いた顔をしたがすぐに表情を戻し呟きながら一心不乱に数え始めた
「…計1283体で報酬は256600メルです」
見事な無表情で淡々と機械的にそう告げた
…なんかだんだん申し訳なくなってきたな
さっさと報酬を受け取って帰ろう
金貨25枚、銀貨6枚、銅貨6枚を受け取ると
そそくさと冒険者ギルドを後にした
…それにしても大分儲けたな
たまたまねぐらを見つけて一網打尽に出来たとは言え
塵も積もればなんとやらだ
ほくほく顔で歩いてると
「おいお前待て!」
といきなり声をかけられた
振り返るとそこには昨日冒険者ギルドで俺が投げた男が立っていた
「探したぞ!昨日はいきなり不意打ちしやがって卑怯なやつだ!」
いきなり殴りかかってきた奴に言われたくはない
「俺と正々堂々決闘しろ!」
「そうすれば納得してくれるんだな?」
了承し場所を街の外にある荒野に移す
「お前が降参すればもう俺に手を出さないと約束しろ」
「ああいいぜ」
「俺はお前が降参しても許すとは限らないけどな!」
そう言うと剣を振りかぶって襲い掛かってきた
俺も収納から魔剣を取り出し男の攻撃を受ける
剣を扱うスキルが無いためかなり不恰好だが
ステータスに差があるためか攻撃を喰らうような事はなさそうだ
男の攻撃を受け続けてるうちに
この男をどうやって降参させようか考える余裕も出てきた
ここまで来てなんだが魔物は倒せても流石に人を傷つけるのは躊躇する
何か良い作戦はないか
そんな事を考えていると
男はひたすら剣を振り続けるのが流石に疲れてきたのか
「はぁはぁ…剣の腕はそこそこあるようだな」
「だけど俺には火の魔術の適正があるんだぞ!」
「これでも喰らえ!ファイアボール!」
そう言うと男の手から野球ボールほどの火が飛んできた
喰らってもたいしたダメージは無さそうだが
一応風魔法を使い火を逸らす
「?!お前も風魔術の適正があったのか!」
「ファイアボール!ファイアボール!」
今度は2発連続で火の玉を発射してきた
一つは水魔法で消火しもう一つは土魔法で壁を作り防ぐ
「土と水の魔術までつかえるだと?!」
「くそっ!」
男の顔が険しくなってくる
鑑定してみると魔力が減っていた
【 魔 力 】 37/52
計3発放って15減ってるという事は
どうやらあの一発で魔力を5消費するようだ
「ふんっどうせ器用貧乏なだけだ!」
「使うつもりは無かったがこれで終わりだ!」
「レベル3の火魔術は流石に防げないだろ!」
「ファイアジャベリン!!」
そう言うと火が1Mほどの槍のような形状になり
火の玉よりも数段速いスピードで飛んできた
避ける事も魔法で防ぐことも出来るだろうが
奥の手っぽいのでここはあえて受けてみよう
プロレスで言うところの受けの美学だ
棒立ちする俺に火の槍が直撃した
「はっはっはっ直撃したぞ!」
「あれではひとたまりも無いな!」
男が高笑いしてる中空気を読まずに火柱があがる中から
普通に出ていきステータスを確認する
【 H P 】 11948/12000
ローブに魔力を込めなくてもこの程度か
「…何であれだけの攻撃をまともに受けてピンピンしてるんだ」
唖然としてる男を鑑定する
【 魔 力 】 7/52
もう魔力もほぼ尽きたようだな
「降参するか?」
男の喉元に剣を突きつけそう言うと
「おっお前らこいつをフクロにしろ!」
男がそう言うと周りの茂みから
男の仲間だろう10人ほどの男達が飛び出してきた
場所を移したときに完全地図と鑑定で確認済みだったが
やっぱりこういう展開になるのか
仲間のステータスを確認するがイチャモンをつけてきた男がリーダーの様で
それより強い奴はいなかった
「お前らなにをしてる!早く攻撃しろ」
リーダーにそう言われても
今までの戦いを見てた仲間たちは俺の強さを計りかねて
躊躇してるようだ
これ以上無駄な戦いはしたくない
俺は男が使った「ファイアジャベリン」を模した
火魔法を頭の上に発生させた
しかし大きさは数倍である
俺の頭上で唸りながら待機する火の槍を見つめ
男たちは口を開けて呆然としている
「俺はこの魔法を後数十発は放てるぞ」
「改めてもう一度聞くが」
「降参するか?」
俺がそう言うと男たちは武器を放り投げて
「すいませんでした!降参します!」
と見事なジャパニーズ土下座スタイルを披露した
…どっかから学んだのか
それとも人が本当に反省すると自然とこの形になるのか
とりあえずこれでもう絡まれることはないだろう
無駄な時間を使ったが人との戦闘を経験できたのでよしとしよう
剣を使った結果かスキルに剣術Ⅰも追加されてたし
次絡んできたら今度こそ命の保障はないぞと釘を刺し街に帰る