服屋とクエスト受注
パッと目を覚まして時計を見ると6時半だった
昨日は10時に寝たから8時間半か
充分すぎるほど寝て疲労もほぼ感じない
さてとりあえず朝飯でも食いに行くか
服を着て一階に降りるとまた朝早くからミアちゃんが慌しく働いてた
「あっお客さん、おはよう!」
「おはようミアちゃん」
「名前覚えててくれたんだ!」
「昨日他のお客さんが言ってたからね」
「ちょっと気安かったかな?」
「全然大丈夫だよ!」
「…お客さんの名前も聞いていいかな?」
「ハジメだよスズキ・ハジメ」
「…ハジメさんか」
「ハジメさん!すぐに朝ごはん持ってくるから座ってて!」
ミアちゃんのテンションが心なしかあがった様に見えたは気のせいだろう
座って料理を待ってるとすぐに運ばれてきた
「おまたせ!」
…待ち合わせに来た彼女の様に見えたのも気のせいだろう
そもそも彼女いたこと無いし
「今日の朝ごはんのメニューはコンソメスープと
ブッシュピッグの腸詰めといつもの黒パンよ」
「ブッシュピッグって?」
「知らないの?味の良いことで有名なFランクのモンスターよ」
Fランクって事は昨日倒した狼と同じぐらいのランクか
「ハジメさんって着てる服も変だし名前も珍しいよね」
「どこから来たの?」
ここは適当に誤魔化して話を逸らすついでに店の場所でも聞こう
「東方のド田舎の村から来たんだ」
「それで新しい服を買いたいんだけどこの辺りの服屋を教えてもらえないかな」
「いいよ!近くにあるから朝ご飯の時間が終わったら付き合うわ」
「ありがとう」
「じゃあまた後でね!」
美味しい料理を平らげてミアちゃんの仕事が終わるのを待つ
「仕事終わったよ!」
「じゃあ案内お願いするね」
宿屋を出てミアちゃんに服屋まで案内してもらう
「ところで予算はいくらぐらいなの?」
「6000メルぐらいかな」
「それだけあれば充分ね」
服屋につき中に入ると
「いらっしゃい」
とヒゲ面の中年の店主が出迎える
店内の服を物色するがシンプルな下着と
薄い肌着の様なシャツとステテコの様なズボンがそれぞれ白、茶、ベージュ
の3色と言った感じでバリエーションに乏しい
まぁ現代日本じゃないんだし庶民の服って言ったらこんなもんか
それぞれ下着(200メル)シャツ(500メル)ズボン(700メル)
と値段が書かれた木の札が置かれてある
異世界で贅沢を言ってもしょうがない
とりあえず下着を5つ、シャツとズボンを3つずつ選ぶ
これで計4600メル狼を売ったお金は合計7500メルで
昨日宿屋に一泊して1200メル使って6300メル
服代を引くと1700メル残る計算だ
服を抱えて店主の方に向かうと店主がいるカウンターに
所謂魔法使いが着るような紺色の足元まであるローブが飾られていた
「すいませんあのローブはなんですか?」
「あぁあれはどっかから流れてきた品で珍しいから飾ってるんだよ」
俺のステータスはSTRよりINTの方が高いから
こういう服はいいかもな
「ハジメさんに似合いそうだね!」
ミアちゃんもそう言ってるし
冒険者ギルドにいた男達の様に鎧を着込むのも煩わしいしな
「あのローブはいくらですか?」
「ウチの看板みたいなもんだから5000メルはするよ」
下に履く服も買う事を考えると今の所持金では足が出るなぁ
そう考えてると
「あんたの服もだいぶ珍しいね」
「それと交換するならタダでいいよ」
昨日からずっと着てるスーツを見て店主が言う
元の世界の職場ではこれが戦闘服みたいなもんだったけど
ここでは役に立たないからまぁいいか
この世界にスーツを必要な人がいるとも思えないし
懐かしくなったら買い戻せばいいな
スーツの上下とローブを交換して早速着替えて
残りの服は収納に入れる
「やっぱりハジメさんに似合いますね!」
「ありがとうミアちゃん」
カウンターを見ると店主がスーツを嬉しそうに飾ってた
…違和感が凄いな
服屋を出るとミアちゃんは
「私は昼からの仕事があるから宿屋に戻るけど
まだこの街にいるならまたウチに泊まりに来てね!」
そう言って宿屋に戻っていった
…さて服は揃ったがこれからどうしようか?
残り残金は1700メル
1日2日でなくなってしまう金額だ
生活するためには何か仕事をしないといけないな
となったら一番良いのはやっぱり冒険者だろう
この街に来る道中についでに倒した狼5体で
一週間宿屋に泊まれるぐらいのお金がもらえるんだから
もっと頑張れば結構な儲けになるんじゃないか?
昨日は魔物の買取だけだったけど
冒険者ギルドに行って色々聞いてみよう
昨日に引き続き冒険者ギルドに向かう
ギルドの中に入るとまだ昼だからなのか
昨日よりは冒険者の数がまばらだった
洋服も着替えたのでジロジロ見られる事もない
カウンターにいる昨日と同じ子に話しかける
「こんちには」
「おー!あんたかい昨日はスカッとしたよ」
絡んできた冒険者を組み伏せた事かな?
「あいつは実力は確かなんだけど性格に難があって
良く新人の冒険者なんかを虐めてるんだよ」
「ギルドも困ってはいたんだけど基本的に冒険者同士の諍いには
不干渉が鉄則だから見てるしか出来なくてね」
「あんたみたいに低レベルなやつに倒されて
少しは反省したんじゃないかね」
「身にかかる火の粉を払っただけですがそう言って貰えると幸いです」
「それで今日は何のようだい?」
昨日より態度がやわらかくなってる気がする
「冒険者について聞きたいんですが」
「あれ?ホーンウルフを倒せるぐらいなのに
まだ冒険者じゃなかったのかい?」
「それじゃとりあえず一通り説明するよ」
「まず冒険者ギルドに加入すると冒険者として登録され
ギルドカードというものが発行される」
「これは全世界のギルドで共有され身分証としても使えるカードよ」
「この街ぐらいの規模ならいらないけど大きな都市になると
入るときに門番に提示を求められる場合もあるわ」
「そして仕事の斡旋つまりクエストね」
「植物の採取、魔物の討伐、護衛依頼などがあるわ」
「素材はギルドに加入してなくても買取出来るけどクエストの場合は
ギルドからの報酬も入るからそういう面でも加入した方がお得ね」
「クエストは難易度や魔物の強さによってランクが分かれていて
Sが最高ランクその下がAで最低はGランクよ」
「登録したら冒険者もまずランクGからはじまって受けれるクエストは
1つ上のランクまで1つ上のクエストをクリアすれば昇格出来るわ」
「まぁ説明はこんなところかしら」
「ギルドカードの発行は3000メルだけどどうする?」
昨日空気的に出しそびれたダブルホーンウルフを取り出す
「これを買取って貰った金額で足りるかな?」
「…もう何も突っ込まないわ」
そう言ってダブルホーンウルフを5000メルで買い取り
ギルドカード代のお釣り2000メルを渡してきた
「それじゃギルドカード発行するわ」
「鑑定玉での鑑定が必要だけどあなたは昨日やったからその情報で登録するわね」
昨日のやつは鑑定玉って言うのか
そんなにどこにでもあるアイテムでもなさそうだし
この世界では名前、年齢、種族、レベルの鑑定が限界なのかな
「はいギルドカード作成できたわ」
「これであなたも冒険者ね」
「ありがとう」
「早速クエストを受けたいんだけどGランクのクエストを紹介して貰えるかな?」
「Gランクと言うとまずはこれ」
「ヒナタ草とツキミ草の採取」
「計10個以上持ってくれば報酬は100メル」
「それと別に一つ50メルで買い取るわ」
「それぞれポーションとマナポーションの材料になるから需要は常にあるわ」
「自然回復以外の回復手段はアイテムしかないからね」
「もう一つのクエストはイービルマウスの討伐」
「このモンスターはGランクで弱いんだけどけど数が多くて
増えすぎると人里に降りてきて悪さをするので定期的に討伐しないといけないわ」
「1体討伐につき報酬は200メル」
「素材価値は無いから討伐箇所として尻尾を持ってきてもらえばいいわ」
試してみたい事もあるしこっちだな
「じゃあイービルマウスの討伐で」
「分かりました」
「この街のちょっと西に行った所にケーブ洞窟と言うところがあり
イービルマウスはそこに生息しているわ」
「洞窟の中は暗いから明かりを持ってった方がいいからこのカンテラを貸すね」
「初のクエストなので頑張ります」
改めて気合を入れ冒険者ギルドを出ると西にあるという洞窟に向かった