転生初日~はじめての街~
走り続けて街に着いたのはまだ日が落ちきる前だった
体感では1時間ほどしか経ってないし疲れたと言う感じもない
思ってたより身体能力は高いようだ
街に向かう途中でまた「ホーンウルフ」と数度遭遇し
群れのリーダーの様な「ダブルホーンウルフ」という
「ホーンウルフ」の二周りほど大きくEランクで
ステータスが1.5倍ほどの魔物とも戦ってレベルが更に5程上がった
今のステータスはこんな感じだ
【 レベル 】 8
【 H P 】 4000/4000
【 M P 】 2000/2000
【 STR 】 136
【 VIT 】 119
【 INT 】 204
【 MND 】 170
【 AGI 】 221
【 LUK 】 50
LUK以外のステータスが3桁を超えて達成感があるな
…さてとりあえず街に着いたがこれからどうしようか?
活気のある中世ヨーロッパ風の街並みを歩きながら悩む
この世界のお金もないから宿屋にも泊まれないし飯も食えない
服もスーツのままなのですれ違う人々の目線が痛い
収納に入ってる魔物を売ったり出来ないかな?
ちょうどそこに冒険者ギルドがあるので入ってみよう
冒険者ギルドに入ると表とは空気がまるで違っていた
屈強な男達がそこかしこに鎮座しいきなり入ってきた奇妙な服装の男を
いぶかしげに睨んでいる
今すぐに出て行きたい衝動を抑えゆっくり歩き
これまた気の強そうな女性が立つカウンターの前に立つ
「…変な服装してるね、で、何かようかい?」
「あのー魔物の買取とかしてますか?」
「してるよどんな魔物だい?」
「ホーンウルフと言う魔物なんですけど」
そう言うと後ろの屈強な男達がざわついた
「…あんたレベルはいくつだい?」
「今はレベル8ですね」
「…ちょっと確認させてもらうよ、これに手をかざしな」
そう言うと受付の女性は水晶玉のようなものを取り出した
「これを使えば名前、年齢、種族、レベルが分かるわ、嘘はつけないよ」
ステータスなんかは分からないのか
そう思いながら水晶玉に手をかざす
「名前はスズキ・ハジメ。変な名前ね」
「年齢は18で種族は人間」
「レベルは…本当に8ね」
後ろの男達がまたざわついた
「これあんた一人で倒したの?」
「はい」
「こんな低レベルでよく倒せたわね…まぁいいわ」
…本当はレベル1の時に倒したんだけどこれは言わない方が良さそうだ
「で、どこにそのホーンウルフは置いてるの?」
「ここにあります」
そういって収納から道中に倒したホーンウルフ
占めて5体を取り出す
またまた後ろの男達がざわつく
「…こんなに大容量のアイテムバッグを持ってるのね」
何かまずかったのか?しかもアイテムバックではなく収納だし
とりあえず誤魔化しておこう
「人から貰ったんです」
「ずいぶん気前のいい人もいたもんね」
「これだけ大きいものが入るものなら100万メルはするわよ」
100万メリルの正確な価値は分からないが
ここに入る前に見た宿屋の看板に「一泊1000メル」と
書いてあったので高価なのは確かだろう
「色々気になるけど、とりあえず査定するわ」
「…このホーンウルフやけに綺麗ね」
「傷がほとんどないわ」
武器が無くて素手で殴り倒したからだろうか
「1体1000メルのところこれなら多少色をつけて1体1500メルで買い取るわよ」
「5体だから7500メルね」
良かった
とりあえず一週間泊まれるぐらいの値段にはなるみたいだ
「じゃあ銀貨7枚と銅貨5枚ね」
銀貨が1000メルで銅貨が100メルね
上の金貨や下の鉄貨なんかもあるのかな?
とりあえず今日は疲れたから宿屋に泊まって明日の事はまた明日考えよう
お金を受け取り帰ろうとすると
男達の中でも一際屈強な男が扉の前に立ちはだかった
「お前みたいなひょろっちいやつがレベル8でホーンウルフを倒しただって?」
「うそつけ!誰かが倒したものを横取りでもしたんだろう」
「という事は俺がお前の報酬を奪っても良いってこった!」
…めちゃくちゃな論理だ
しかしいくら説明しても通じないタイプだろう
周りの男達はニヤニヤしながら見てるだけだし
受付の女性は心冒険者同士の争いに手を出せないんだろう
心配そうな顔で見つめるだけだ
とりあえず相手のステータスを鑑定してみると
【 名 前 】 グレッグ・ベイル
【 年 齢 】 32
【 種 族 】 人間
【 ランク 】 E
【 レベル 】 18
【 体 力 】 136/136
【 魔 力 】 52/52
【 ちから 】 45
【 まもり 】 32
【 はやさ 】 22
【 わ ざ 】 剣術Ⅱ 魔術(火)
ホーンウルフの時はモンスターだからかと思ったが
やっぱりステータスの表示内容が違うのは
この世界とは違う女神に肉体を設定されたからだろう
レベルの割りにステータスの高さが違うのも
俺のスキルでは魔法なのにこいつのわざでは
魔術なのもそういう理由か
これ肉体と転生世界が逆だったら悲惨だな
…などと考えてたら
「何をボーっとしてる!」
と男が殴りかかってきた
俺はホーンウルフの時と同じように回避すると
そのまま襟元をつかみ床にたたきつけると
「グァッ!?」
と蛙の様なうめき声を上げて男は気絶したようだ
周りの男達がその光景に唖然としてるので
また誰かに絡まれる前に
「お騒がせしました」
と頭を下げて扉を開き外に出てそのまま宿屋に向かう
宿屋に入ると元気な声が響いた
「いらっしゃいませー!」
看板娘だろうか自分と同じぐらいの可愛らしい子が
慌しく元気に動き回っていた
「宿泊だと一泊1000メルになります」
「二食つきだと1200メルね!」
「夜ご飯は今すぐ食べれるよ!」
「じゃあとりあえず一泊二食つきで」
「はいよ!じゃあそこに座って待ってて」
お金を払って案内されたテーブルに座って待ってるとすぐに料理が運ばれてきた
黒パンとシチューの様なものと新鮮な野菜のサラダだ
ここに来てまだ何も食べていない俺にとっては充分なご馳走だ
かき込むようにシチューを啜りふちに残ったのもパンでこそぎとって残さず食べる
急いで食べ過ぎて喉に詰まって咳き込むと看板娘が水を持ってきてくれた
慌ててグイっと飲み干して感謝の言葉を述べる
「ぷはーっありがとう助かったよ」
「そんなに急いで食べてそんなに美味しかった?」
「ここ最近で一番美味しかったよ」
「嬉しいな。ウチのお母さんが作ってるのよ」
美人の娘のお母さんはまた美人なんだろうなぁと
無邪気にはしゃぐ娘を見ながら妄想していると
横で食事をしていた宿泊客が軽口を叩いてきた
「アンちゃん、ミアちゃんに手を出すとお袋さんにぶっ飛ばされるぜ!」
看板娘はミアちゃんと言うのか
本来の年齢からしてこんな若い子に手を出す気は無い
むしろおふくろさんの方がストライクゾーンなくらいだ
「はははっ手を出す気はありませんよ」
「もうお客さんが変なこと言うから困っちゃってるじゃん」
「とりあえず今日は疲れたので部屋に案内してくれるかな」
「分かりました。じゃあ案内しますね」
と言って二階に上がっていく
一階が食堂で二階が宿泊部屋なのか
「こちらがお客さんの部屋ね」
シンプルだが清潔にされた部屋だ
「明日は6時から8時からまで朝ごはん食べれるから」
「それを過ぎると美味しい食事食べれなくなるから注意ね」
天井近くの壁に時計がかかっていて10時を指していた
どうやら時間の概念は元の世界と同じようだ
「ありがとう」
ミアちゃんが一階に降りていく音を聞いて
スーツを脱ぎ捨てパンツ一丁になってベッドに寝転がると
今日一日の疲れからかすぐに睡魔に襲われそのまま眠りについた