プロローグ~転生前の出来事~
「本当にすまぬっ」
「本当にすみません」
俺が目覚めたときに目の前に飛び込んできた光景は
二人の女性がひたすら謝る姿だった
「こいつはわしの担当じゃろうが!」
「いいえ、私が先に手をつけたはずです」
状況が理解出来ず戸惑うしかない俺の前で二人は言い争いを始めた
どうにも口を挟めるような状態ではないのでとりあえず状況を整理するため
なぜこんな事になったのか目が覚める以前の記憶をたどってみる
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俺の名前は鈴木一 29歳
名前が示すとおり平凡な人間だ
中小企業のサラリーマンとしてそこそこブラックで
その割には少ない給料を貰いながら生活している
今の生活に大きな不満は無く悩みといえば
もうすぐ三十路に突入すると言うのに女性経験が無い。
所謂チェリーボーイな事ぐらいでそれ以外ではそれなりに満足してるはずだった
しかしこの年になってこれまでの人生に対しての後悔や
これからの未来に対しての不安がだんだんと沸いて来るようになった
リスクを恐れて大きな挑戦をした事がなく
誰にでも出来る様な事しかして来なかった
生活は安定してたが大きな喜びや達成感も感じたことが無かった
女性と縁が無かったのはその消極的な性格も一因だろう
「俺も小さい頃はこんなんじゃなかったんだけどなぁ」
いつも通りサビ残をこなした仕事の帰り道を歩きながら
また答えの決まりきった思考を巡らせながら独り言をつぶやく
俺だって昔はアニメや漫画のヒーローを見て
その勇気や行動力に憧れを覚え将来は自分もこうなるんだ!
と夢を膨らませてたはずだ
しかし、成長するにつれ自分の能力で出来る限界
才能ある人との絶対的な能力差などが理解できるようになってくると
自然と能力の範囲内で物事を処理するようになっていった
しかしいくら後悔しても何十年もそうやって生きてきて
今更性格を変える勇気も行動力も無い
これからも低リスク低リターンの人生を生きていくのだと思う
「まぁ明日からもまた地道に生きていくしかないか
俺には冒険や挑戦なんて分不相応だしな」
半ば諦観気味に自嘲してそれ以上の思考を打ち切り再び家路を急ぐ
しばらく歩いてると前方から家族がこっちに向かって歩いてきた
自分と同年代だろう男女とその間で二人の手を握って
嬉しそうに女の子が飛び跳ねてるのが見えた
「幸せ」※これはイメージ映像です
とでも注釈をつけてほしいぐらいだ
さっきの思考を引きずってる俺にとってはダメージが大きすぎる
何か気まずさを感じ家族から目を逸らして道の先の方に目をやると
まだ季節は夏だって言うのに黒いパーカーのフードを深くかぶり
手をパーカーのポケットに突っ込み口元にはマスクをつけた男が
家族から一定の距離を保ちながら歩いていた
その光景を見た瞬間嫌な予感がよぎり
心臓が急にドクドクと激しく脈を打ち始めた
明らかに怪しい
しかし怪しいだけでまだ男は何もしていない
今自分が何かをする義務は無いはずだ
このまま何もせず見過ごせば
この後に「何が起きようと」自分には関係無い事だ
今まで低リスクで生きてきたのに他人のために行動して何かあったら馬鹿らしい
そんな事を考えてる内にもう家族の方は目前に迫っていた
家族は誰も男に気付いておらず幸せそうな空気を出したままだ
考えがまとまらないまま
親子が横を通り過ぎるかどうかの時に男とバチッと目が合った
まるでそれが合図かの様に男はポケットから
刃渡り20cmほどの包丁を取り出し親子に切りかかって行った
まずい!親子はまだ気付いてない!
だけどここで俺が助けに向かえばその殺意は俺に向かって来るかもしれない…
そんな思考とは裏腹に俺は反射的に「やめろ!」という大声を出していた
自分でもびっくりしたが今は何故?とかそんな事を考えてる場合ではない
「通り魔だ!逃げろ!」いまいち状況を把握していない親子に向かってそう言うと
こっちも逃げる体勢を整えた
男は一度こっちを腹立たしげに睨んだが
家族によっぽど恨みでもあるのかすぐに家族の方に向き直った
夫婦は慌てて娘の手を引っ張り逃げようとしたが
よっぽど慌てたのか娘が転んでしまった
夫婦は恐怖と焦りから娘を起こすのにまごついている
男はそのまま転んだ娘に向かって行く
「…っ!」
反対方向に逃走する準備をしていた俺は再び向き直り
男に向かって突進していく
「やめろって言ってるだろ!」
転んだ娘をかばうような体勢の夫婦に向かって
男が包丁を振りかぶった時俺の手が男の腕をつかんだ
そのままもみ合うような形になった
「俺の事はいいから早く逃げろ!」
自分からまさかこんな漫画みたいなセリフが出ることに驚いた
もみ合ったままそんな事を考えてたのが悪かったのか
男がその隙を突いて腕を振りほどきそのまま包丁を俺の腹に刺した
「うぐっ…」
腹に焼ける様な痛みを感じ俺はそのまま倒れた
人を刺したという事実は流石にショックだったのか男が呆然としていると
夫婦の夫が男の包丁を持ってる腕を制しそのまま地面に押し倒した
その鮮やかな動きに
「あれっ?これ俺が助けなくても大丈夫だったんじゃね?」
と思ったが
「あなたのおかげで娘の命が助かりました!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
と涙をにじませながら感謝する奥さん(中々の美人)と
まだ状況を把握出来てないが無事な娘の姿を見て
血が止め処なく流れ段々と薄れ行く意識の中で
「こんな最後もいいのかもな…」と安らかな気分のまま意識が途絶えた
タイトルが超適当なので良さそうなタイトル募集します。
あと小説自体執筆するのが初めてなので誤字脱字
言葉の使い方が違う描写が足りなくて意味不明だとか
こっちの方が分かりやすいとか
何でもいいので指摘してくれるとありがたいです