03話 ゲート。その先に
『貮』扉
この都市の中央には標高四百メートル程の普通の人が歩くには大変であろう山が何よりも高くそびえ立っている。
その山の頂上にはどうやってか知らないが、『地球』のどこかの山の頂上から地球人類史終末のその日、神社ごとそこで働く人諸共ここに持ってきたらしい。
というのも実際にはだれがいつどうやってこの場所に持ってきたかを見た人はおらず、そこで働く人々も人前に姿を見せない為すべてがいまだ謎のままなのだ。
そんな場所を何故避難場所したかというと、この周辺には軍が滞在していて、都市の要所も集まっているため、警備が固くとにかく安全なのだ。
神社の階段に座っていた和音たちがすっくと立ちあがり大きな素振りで手を振ってきた。
「もう!やまと。遅いじゃない。何してんのよ、こんな緊急時に。で?認証パスは見つかったの?」
「遅くなるのはしょうがないだろ。学校に行っても見当たらないし、この神社の階段は長いし!」
「学校でちゃんと探したんでしょうね?」
「お前は俺の母親か!」
「まぁまぁ。二人とも落ち着いてくださーい。和音、こういう時はあつーいLOVEなメッセージを送らなきゃダメですね。」
「あはは!先輩何言ってるのよ。こいつはただの幼馴染で恋愛の対象じゃないわ」
「はい。わかっています。緊張はほぐれたみたいですね。私とヤマトは、学校まで行きそこで異常なことに遭遇しました。あそこに見える天をも切り裂くほどの白亜の塔が見えますね?あれは学校の校舎を消しその跡地に建っています。そのため私とヤマトは認証パスを見つけることができませんでした。そしてそこに」
「ボクが登場するってわけ!やまとの認証パスの位置は学校のあった場所になってるのに、アリスのはボクので確認したらちゃんとあってたんだ。だから探すのは断念して危ないからここに来たってわけだよ」
その時遠くから階段を大勢で駆け上がって来るような足音が聞こえた。
響磁がその場でうつぶせになり、右腰に下げていた望遠鏡をのぞき、階段の最下段を覗き見た。そこには帝国直属機関ファントム・ナイツ。通称『帝国の番犬』と呼ばれる帝国の暗部から表舞台にまで根を張り巡らせた戦闘のプロ組織がいた。
「おいおい、ありゃまずくないか!?どんどん上がってきてるぞ!」
「どうした?まずい!ファントム・ナイツだ!みんなかくれるぞ‼」
「隠れるってどこによ」
「ほらそこにいいところがあるだろ」
「え?ってまさかこの怪しげな神社の扉をくぐれってこと!?」
「そう。じゃ響磁、先頭よろしく」
「お、おう!任せろ!お前らちゃんと俺に続けよ。行くぞ和音」
「わ!待ってまだ心の準備が…。キャーー‼」
そう言って和音が響磁に手を引かれ先に神社の扉の闇の向こうに消えていった。
「それじゃやまと。アリス。ボクおっさき~」
「先輩。俺達も行きますよ!」
「あ~。ヤマト。待ってくだサーイ」
こうして俺達は神社の中の謎の空間に入った。
「ウォオオオーーーーー!イッテー。なんなんだよあの道」
「キャーーーーー!」
「グホッ!」
「あれ?痛くない…」
初音が不思議そうにあたりを見回してると真下から声があった。
「和音、ごちそうさま。ってか重い。降りて」
「ごめんなさい。って誰が重いって?失礼ね。っていうかごちそうさまって…変態」
響磁の顔の上に和音がしりもちをつく態勢で乗っていたのだ。
「すまんすまん。ついな。俺達あの穴から落ちてきたんだな」
「そうみたいね。」
二人が落ちた先は真っ白い壁に覆われた直径三十メートルほどの円筒状の窓もドアもない空間だった。二人はそびえ立つ壁のおよそ十メートルの位置にある自分たちが出てきた穴を仰ぎ見る。その先は響磁の記憶上滑り台のような細い道になっていた。
「それじゃあの三人が来る前に少し壁のあたりに行ってドアでもないかさがしてみるか」
響磁が立ち上がり三歩ほど進んだところで響磁の右脚元の床が沈んだ。沈んだと同時に床が揺れ、エレベーターのように上に上がっていく感覚に襲われた。
「ヤッホー!スタッ。着地セイコー。あれ二人はいないな。かずねー!きょーじー?」
「うわーーー!危ない!ハンナ、よけて!」
「へ?うにゃ!」
「ん?この柔らかい感覚は…」
「にゃ!んんん。うにゃ」
大和は十秒ほどたっぷり手と顔と時間を使ってようやくハンナの身長の割のは包容力のある胸の間に顔をうずめていることを理解した。
「わわわ!ごめん。そんなつもりじゃ…。なんていうか、その、ごめん」
「やまとったらエッチさんだな~。ボクの胸そんなに気持ちよかった?それより今ボクの胸が意外に大きいと思ったでしょ!」
「い、いや!そんなことは…」
「どうだかね」
そっぽを向いてハンナは少し嬉しそうに笑った。
そしてもう一人
「いたたたた」
「先輩、降りてください」
「おうヤマトー。Sorryデース」
そう言ってアリス先輩は俺の上から降りた。
俺達三人は床の一辺が九十メートルはあろうかという部屋にいた。その部屋の中央にある直径三十メートル位の円筒状の壁の、高さ十メートルの位置にある穴から落ちてきたらしい。
すると途端に後ろの壁面の一部に通路が開け、その上に浮き出てきた三本足の黒い鳥の印から声が聞こえた。
「姫に招かれし者たちよ、これを進み試験を受けよ。吾は八咫烏。この塔の案内役。再び繰り返す。姫に招かれし者たちよ、これを進み試験を受けよ。さすれば道は開かれん」
「今のは何なんだ?」
「ボクちょっとわくわくしてきたかも!」
「先輩。とりあえず先に進みましょうか」
先輩の方を見ると先輩は普段は絶対に見せないようなとてつもなく神経を張り巡らせた真剣な面持ちになっていた。
「ヤマト。ハンナ。あなたたちに言わなければならない大事なことがあります」
最後のアリス先輩の言葉。どんなことを暴露するのでしょうか
読んでくださっている方ありがとうございます。
こんな文章力のない人ですが、これからもよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ
☆彡用語集
☆ファントム・ナイツ、通称「帝国の番犬」:扶桑帝国軍内部の裏組織。表の世界では政治家の三分の一がその組織と内通している疑いが…
☆八咫烏:日本神話で神武天皇を大和の国に道案内したとされる烏。一般的には三本足の烏と伝えられている