02話 クロニクル始動直前
『壹』始まりの出来事(続)
「しかしこのお店すごいわね!できてまだ一年も経ってないのにこの賑わい様」
和音が驚くのも無理がない。お店の前に着いた俺たちはその光景を目にしてしまった。
放課後まだそんなに時間が経っていないはずなのに学校帰りの扶桑高校生がお店に入りきらず、列をなしていたからだ。
「あと何組かあるけどとりあえず並ぼっか」
しばらく並んでいると、店内から赤毛の少女がメニューをもって来た。
「こんにちは!まだ入店まで少しあるけど、はいっ!これメニューね。今日のお勧めはこの一枚目の紙ね。それじゃごゆっくり~」
それだけを早口、わずか三秒ほどで言い終えると直ぐにまた店内へと戻っていった。
〝すごい早口!勢い良すぎてついていけねー〟
俺たちはそう思った。この人を除いては。
「う~ん。Menuが多すぎて迷いま~すねー」
「「「さすが校内一のマイペースと先生達からも噂される先輩。」」」
ついそう言ってしまう俺たちだった。
「ねぇ。今…。ううんやっぱり何でもないわ。私はこれにする!ダブルルーフスパフェセット。あんたたちは?」
「じゃあ俺は普通にルーフスサンドセットだな!」
「じゃあ俺もそれで。先輩、何にします?」
・・・・・・・・
「先輩?」
・・・・・・・・
「決まりました~!私はこのセットにしま~す‼」
先輩が選んだのは今日のお勧め品のハンナデラックスパフェ、ハンナコーヒーセットだった。
ほんっとにこの先輩はマイペースだ。
それから数分後。もうすぐ店内に入れるというときになってそれは起こった。
ジャリリリリリリリリリリリリ‼
携帯していた帝立扶桑学校認証パスと都市の警報が一緒になって都市全体に鳴り響く
「「「「警報!?」」」」
それはこの都市の誰もが驚くに値することだった。
なぜならこの都市ではこの地に逃げ延びてきて約十年間戦いなど起きたことがなかったからだ。
さらに言えば、まさか逃げ延びた先で襲われることは無いと、だれもが油断していたことにもある。
未知の存在。
それは突如としてベータ星に十年間の偽りの平和の後に再び人類の都市に惑星を超えてまで襲って来た人類最後の脅威。
「あれ?俺の認証パスがない!あれがないと大変なことになる…。響磁達は先に逃げててくれ!俺は後から合流する。例の場所で会おう!」
そういうなり大和は学校の方へと走って行ってしまった。
「よし!俺達も行こう!」
「そうね」
和音たちが大和を追いかけていこうとした時。
「待ちなさい!あなた達は先に避難してなさい!ヤマトは私が連れてきまーす!」
「わかりました」
「大和をお願いします」
和音たちは先輩のあまりの真剣さに驚愕し、大和を先輩に託した。
そして、先輩は大和のところに全力疾走で追いかけていった。
「和音。俺たちも早く移動しよう。例の場所に。大和なら大丈夫さ!先輩がついてるんだしさ」
「そうね。じゃあ移動しましょ。あそこならきっと安全だわ」
学校の校門から五十メートルの位置。上り坂。
「ハァハァ。あとちょっとで学校」
「ヤマト~!まつでーーす‼ハア!やっと追いついた」
「先輩。どうしてここに!?二人はどうしたんです?」
「二人は例の場所に向かうと言ってました~!」
「わかりました。じゃあ早く物とって場所に向いましょう」
「な、なんだこれ…」
校門前に着いた俺たちはその光景を目にした。
それは正面から見て左側三分の一のみが無傷で右側三分の一が崩壊して残っている校舎だった。
そして校舎の中心部は消滅していた。
文字通り無くなっていた。
本来そこには中央十階建て、左右五階建ての金属製校舎があったはずだった。
しかしその校舎のあった場所の少し先には、どうやって建てたかもわからない天をも貫く巨大な白亜の塔がそびえ立っていた。
それは材質がこの星でもアルファ星でも採れないもので作られているらしく近くにいた軍隊の戦車の攻撃にも耐えていてびくともしていなかった。
そして何よりも重要なこと
〝俺の認証パスどこ行った!?〟
俺が唖然としていると先輩が
「ヤマト。校舎の近くに来たからGPSで探せると思ってやってみたのですがその……位置はこの学校の中央校舎内なのですがここには校舎はないデスネ」
今どきのGPSは位置が近ければ校舎の平面地図まで出して場所を特定できるのだ
「そんなことがあるわけないですよ。ここに校舎がないのだからGPSの不調なんじゃ…」
「デスネ~。きっとこの混乱だからうまく繋がらないだけデース!」
「ううんGPSあってると思う!だってアリスの携帯の位置はあってるよ!」
「そうですか。ならなんででショウカ?」
「ですね。なんでだろう……………?ってなんでお前がここにいるんだよ!ハンナ」
「ボク?ボクはねー。う~んなんでだと思う?」
「何でだろう。ん?その制服って下のパフェで働いてたのか?」
「ヤマト。気づいて無かったんデスカ!?」
「もう!ほんっとやまとって鈍感だよー。ルーフスパフェの看板メニュー!ほらこれでボクのフルネームすぐわかるでしょ?」
「ほんとだ。全然気づかなかった」
この看板メニューで個人情報丸出しの短髪赤毛のちびは帝立扶桑高校貮年ハンナ・ルーフス。よくよく話を聞くとルーフスパフェは自宅で、両親がお店を出しており最近いそがしくなったので、働き始めたのだという。
「ヤマト~。それよりも認証パスなかったから早く集合場所に逃げるデース!」
「そうですね。仕方ないから行きましょう。ハンナも来る?」
「うん!もちろんボクも行くよ。早く逃げておいたほうがよさそうだからね」
こうして俺たちはこの学校の裏側にある標高の高い山の頂上に向かった。
頂上へ向かう百段は軽く超える階段も残り数段というところで、神社本殿の階段に座る初音たちと異様な雰囲気を醸し出す本殿入口が見えた。
特に書くことないので用語を
・rufus=ラテン語の『赤』
・incognita…ラテン語の未知
・扶桑=昔、中国で日本を指した言葉
・chronicle=「年代記」「編年史」
といった感じかな。
そんなに説明するほど無い!(笑)