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クロニクル・アース  作者: 零﨑海識
扶桑帝国編
17/20

15話 皇宮突入

拾參(じゅうさん)』 大門正面


 会議が終盤に差し掛かったころようやく柚木(ゆき)李津(りつ)は会話に加わった。

 聞くとどうやら大和が会議の場を締めくくっているところだった。


「それでは最後になるけど何かあった時の緊急事態に備えて軍の人たちと選抜組、厳島先生の連絡先を教えるから各自担当リーダーの元へ行って聞いてくれ。会議は以上だ。各員怪我無く死者なく会えることを祈ってるよ。残る人は厳島先生の指示に従ってくれ。解散‼」


 大和たち選抜組は早々に荷物を整えると、周囲に敵が沸いていないのを確認し、自分たちがいた建物正面の皇宮へ続く橋へ向かっていった。



           ─────     ─────



 残った選抜組以外のメンバー15人は厳島先生を中心にチームを二手に分かれ、現在いるビルを『何に使われていた施設か』そして『生存者は居ないか』の二点を重点的に調べることになった。

 

 現在分かっている情報を整理すると、このビルは他のビルに比べてやけに皇宮に近いということと、地上50階建てであるということぐらいだ。

 そのためビルの両端の階段で徐々に最上階に向けて調べていき、最終的に屋上で合流する流れとした。


 こういった緊急事態や急場の対処が必要な時には大抵、厳島は先頭にいた。というよりもいつの間にかそうなっていたという方が正しい。なぜかということを考えるときりがないが、決定打になったのはまだ中学生だった12歳の梅雨の出来事だ。



 当時、自分の通っていた中学は典型的な不良(校舎裏に対象の生徒を呼び出すような)の多い学校であり、地域のひとからも迷惑がられていた。そんな中学にカーストの低い一人の生徒がいた。名を肆条正武(しじょうまさたけ)という。彼を助けたことが今の厳島の立場の元凶だ。

 肆条は廊下でとあるヤンキーグループの(かしら)に少しぶつかってしまったらしい。そのせいで放課後に校舎裏に呼び出されいじめを受けていた。ここまではその当時はまだ日常の出来事だった。

 しかし、ヤンキー達は肆条をただ虐めるだけでは飽き足らず、爪を抉る等といった拷問まがいのことまで始めたのだ。たかが廊下でぶつかったくらいでそれはないだろうと、屋上から観察していた俺は思いその生徒を助けてしまった。それも相手のヤンキー達全員をぶちのめして。


 次の日いつも通り登校すると尾ひれがつきまくった噂と歓喜の雪崩だった。あとで聞いたことだが、どうやら自分が壊滅に追い込んだグループは、この学校で一番強いといわれていたグループだったらしくそれ以降目立った悪さはしなくなったそうだ。


 という経緯があり、いつの間にか中学一年生にして入学早々噂の尾ひれにさらに尾ひれがついたような状態で学校から英雄扱いされ生徒会長になり、それがさらに拡大解釈され住んでいた市からも英雄扱いされ、市内の高校に通っても変わらず当然のように生徒会長を三年間勤めあげて全国にこのことが報道され、今に至る。

 自分ではただ気まぐれで助けただけだったのだが、あまりに反響が大きすぎて親など、貴族にまで取り立てられていた。


 教師になってからもそれは変わらず、生徒たちにまで広まっている事実であるが故に何かあったら厳島先生という風潮が根付いてしまった。さすがに恥ずかしい。



「先生この後どうします?」


 頼れる生徒の一人が訪ねてきた。


「では我々は各階の部屋を一つ一つ確実に見ていこう」


「わかりました」


 こうして厳島達は二手に分かれて最上階を目指して進むことになった。



           ─────     ─────



「よし!行くぞ‼」


「「「おおーー‼」」」


 大和たちは皇宮の大門正面まで来ていた。

 こちらは大和と幹部生徒たちを先頭に菱型の陣形で周囲に警戒しつつ進んできた。


「ハンナ。念の為、地図の確認をしておいてくれ。まちがってたりこっちの方がいいんじゃない?とかっていうのがあれば伝えて。他の人は周囲に警戒しつつ進むよ。じゃあ、大門を開けるから気を抜かないでね」


 大門を開けて俺たちは驚いた。この中だけはほとんど無傷で荒らされたような跡もなかったのだ。これはおかしい。というよりも異常だ。皇宮周辺までは大きなビルが倒壊していたり、道路がえぐれていたりしていたにもかかわらず皇宮内は人類が地球から追い出される以前の姿を保っている。


「写真で見た姿と全く変わりねぇ」


「ほんとね。まるで、ここだけは何者かの手によって細工されているようだわ」


 響磁と和音がそれぞれこの場にいる全員の代表する言葉のように呟いた。

 他の人も同じ思いだったみたいで皆、声には出さないが何度もうなずいたりして同意しているようだった。


 ゆっくりと慎重に正門をくぐっていた大和たちだったが、しんがりを務めていた軍人の一人が突然叫んだ。


「皆、急いで中に入るんだ!大和君少しこっちに来てくれ。状況を見てほしい」


 そういわれて、一番後方の大門をくぐって直ぐの所に移動して、門の柱の陰からこっそりと状況を確認した。


「見てごらん。どうやら奴らは大きなビルや人間を襲っているみたいだ。そして奴らの先頭で奴らを率いてる人間を見てくれ。傷一つ負っていないどころか何やら指揮をしてるようにも見える。ここからだとどういうやつらかはわからないが、だんだんこっちに向かってきている」


「ほんとですね。明らかに怪しい。今後、皇宮内で鉢合わせる可能性もあるので慎重に行動しましょう」


「だね。その方がいいだろう」


「皆!緊急事態だ。急いでこの場から移動する。速やかに俺についてきてくれ」

何とかそれなりに早く投稿できました。

毎回遅くなってごめんなさい。


今後も温かい目で見て頂けると幸いです。

次回もぜひよろしくお願いします


何か意見・アドバイスがあればお願いします


☆用語集☆彡

肆条正武(しじょうまさたけ):帝立高校教師、厳島の学生時代の同級生

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