14話 柚木と李津
『拾貮』 乙女☆ユキ
大和を先頭に脇に八咫。大和の右後ろに響磁、左後ろに和音、万能なハンナは真後ろ。さらにその後ろに狙撃がうまいアリス先輩が続き、後ろに麻倉柚木と浅井李津が二人並走しており、続いて他の生徒たちもついていく。その後ろにしんがりとして付き添いの軍人小隊がついてきている。大和たちとともに行動することになった体育科の先生、厳島拳伍は大和の横にぴったしついてきている。
「行くぞ!ここを突き進めば皇宮だ。両サイドを十分に警戒しつつ進むんだ‼」
―――――
「柚木様、左から敵が来ます。お気をつけて。」
「わかったわ。左は私に任せて右の敵を先にかたずけてらっしゃい」
「かしこまりました。柚木様、お気をつけて」
「大丈夫よ。李津は心配性なんだから」
左からの敵はまだ遠い。李津が早くに知らせてくれたおかげだ。
「アリス先輩!狙撃お願いします。俺は正面のヤツから手が離せない」
「OKです。ヤマト。まかせてください」
「お待ちください。あれは僕が相手をした方がよさそうだ」
そういうと李津は左腰に携えていた扶桑刀を鞘に合わせて奇麗に抜き放ち、右にいた敵に先手必勝と言わんばかりに斬りつけた。
しかし、相手はうろこ状に亀の甲羅のような皮膚で覆われており、内部にまで傷をつけることはできなかった。それどころか甲羅にも線一つ付いていない。
「やはりこうなりますね。ではっ!」
李津は敵の後ろに素早く回り込み、背中を駆け上った。しかし、背中の真ん中あたりで動きを急停止し、少しジャンプしてその勢いで甲羅と甲羅のわずかな隙間に扶桑刀を突き立てた。
「一刀、響鳴連華。これを耐えられるのなら褒めてあげましょう」
李津が敵の背中から飛び降りた直後その一帯に赤い雨が降り注いだ。見ると、敵の体中の鱗のような甲羅の隙間から赤い液体が滴っているのが分かる。敵は李津に血しぶきを浴びせながら静かに倒れた。
倒した後も李津は倒した敵を見ていた。
「我が存在に気付くとはなかなかのものよ」
「何者だ!」
「安心しろ。我が声は、お前にしか聞こえぬよ。我が使命は試すこと。我が正体を知りたくば、大和という小僧とその仲間たちとともにこの地の城まで来るといい」
それきり李津の感じたいやな雰囲気はその敵から感じなくなった。
李津は隊列に戻り再び周囲を警戒しながら、先ほどよりもいっそう警戒して進んだ。
柚木は、お供の李津の見て“顔が緊張してる。さっきの向こうでの戦いで思う事があったのかしら”と思いはしたもののあまり気にはならなかった。柚木にとって『安心』というのは李津が近くにあるという事だからだ。逆に言ってしまえば、今まで幼い頃から一緒に同じ時を過ごしてきた李津がいなくなるとは考えたことも無いのだ。
だからあえてこう言う。
「李津。こんな時…いえ、今だから言うのだけれど、今日はいつにも増して頼もしく見えるわ。この後も宜しく頼むわね。」
「はい!僕が必ずや柚木様をお守りしてみせます!お家に誓ってでは無く、柚木様に誓って」
「ええ。宜しく頼むわ」
“もう!私には、李津しか1番信用できる人は居ないというのに……”
大和達は、暫く何度か何度か戦闘を繰り広げながらも皇宮正面入口の橋までたどり着いた。
しかし、直ぐには大和達は皇宮に入らなかった。1度近くの敵の侵入が少なそうで比較的壊れていない大きなビルに入った。そこで1度休息を取る事にしたのだ。
「皆さん。1度ここで休憩します。30分程時間を取りますが、あまり離れないようにしてください。何時敵に遭遇してもいいようにだけは警戒しておいてください。ここをまだ敵地だということを忘れずに休息をお願いします。それと、10分後に生徒幹部メンバーと陸軍の方、先生は俺の方に集合お願いします。今後の予定を話し合いたいと思います」
各々最も親しい人達で集まって落ち着いて休息を取った。大和達もいつものメンバーに加え、今回は柚木と李津も一緒だ。
「このあとのことなんだけど、李津からある事を聞いてこのメンバーと陸軍の人達の少人数で行こうと思うんだ」
「やはりそうなるじゃろうと思ったわ」
「八咫さんがなにか知ってそうな風だけど、もしかして神様達の事?」
「当たりだよ、和音。実は……というわけで李津が伝言を受けたらしいんだ。だからこのメンバーじゃなきゃダメなんだ。柚木さんはまだなんの事か分かっていないと思うので後で、アリス先輩と李津さんに聞いてください。で、響磁も何か言うことがあるんじゃないの?」
「あはは。やっぱりバレてたか」
「そりゃあ、戦闘中にあんな動きするなんて響磁らしくないしな」
「俺の方もだいたい李津さんと同じだと思うぜ。だけど俺の場合はもう試練を受ける必要はないんだとよ。っていうかもう能力の一部は使える」
「「「ええっ!?」」」
「それがよ。なんかわかんないけどいつの間にか監視されてたらしくて、ほんの少しだけ能力を解放してくれたらしいんだ。だから、あとはその神様を探して会えば全部の能力を使えるみたいだぞ」
「やっぱり神様に会ってたんだな。でもまさか響磁が既に能力持ちだとは思わなかったな」
「ホントにビックりデスね~♪」
「さては先輩知ってましたね?俺たちがここで神様に会うことを」
「ノータッチでーす。それよりもそこのカラスちゃんに聞くのが1番早いですネ」
「そうじゃよ。妾が例の如く案内した。あとは精々頑張ることじゃな」
――――― 10分後 ―――――
かれこれ話しているうちにあっという間に時間が経った。
「今後のことですが、俺たち主力メンバーと陸軍の人達で先に皇宮ないの調査を少数精鋭で行こうと思います。その間先生は他の生徒たちと待機してもらいたいのですが、どうでしょうか?」
「いいと思うぞ」
陸軍のひとが前に出て来て話し始めた。
「すまない、自己紹介が遅れた。俺は陸軍の堂島という。よろしく。さっきの話なんだが、少数精鋭で中を探索というのは合理的で良いと思うぞ」
「先生は何かありませんか?」
「今回は何も言わんよ。君達が決めたことだ。頑張ってやってきなさい。陸軍の方々、申し訳ないがこの子達をよろしくお願いします」
「引き受けました!」
思った以上に会議は進み、細かいことを決めて休憩時間が終了した。
いよいよ皇宮に入り大和達の心の目的の続きがなされるのだ。
「みんな!休息を終わって俺の前に集まってくれ!今後の行動の詳細を説明する!!」
大和が説明をしていたが、詳細を知っている柚木は外を眺ていた。
「李津、見て。雪よ。綺麗だわ」
「本当ですね、柚木様。まるで柚木様の髪のように白くて温かみを感じる雪です」
「照れちゃうわ。李津ったら。今は冬なのね。」
「そのようですね。あちらの星では四季が曖昧で季節もいまいち感じられませんからね」
「今年の雪はこれで最後かしら」
「来年も見れると良いですね。この地球にあるあのお屋敷で」
「ええ。今年こそは……」
こんにちは
皆様お久しぶりです(`・ω・´)ゝ
約2ヶ月ぶりの投稿となります。不定期で申し訳ないm(_ _)m
何とか以前宣言した月に1~2話投稿するという約束を守れました。ホンっとにギリギリww
来月も守れるように頑張ります
☆用語集☆彡
・皇宮:クロニクル・アースにおいての地球で扶桑城が建っている皇王が寝居にしていた場所。扶桑軍隊とも関わりがある
・一刀、響鳴連華:浅井李津の剣技。