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翌朝。
「お世話になりました」
小さな家を出て、ベルサージャに挨拶をする。
勿論、ティアも一緒だ。
すっかり元気になったティアの左手首で、銀色の腕輪が光る。ベルサージャがティアに与えた物だ。触れた人間に、言葉を伝える為の魔法が、その腕輪には掛かっている。ティアに腕輪を渡す際、ベルサージャはこう言って、笑った。
そして。
「これも」
ベルサージャが、ティアに錦の細い袋を渡す。ティアが袋を開くと、金色の横笛が出てきた。この笛をティアが吹けば、ティアが『呪歌』を歌うのと同じ効果が現れる。これからのことの、助けになるだろう。そう言ってから、ベルサージャは更に付け加えた。
「これはあんたの母親の形見だ。ティア」
昨夜とはうって変わったベルサージャの表情に、ヴァリスは正直戸惑っていた。ティアがヴァリス達と一緒に森の外へ戻ることを許してくれた、その現れだろう。ヴァリスはそう思うことにした。
そして。ベルサージャは更に一言、付け加える。
「但し、貸すだけだよ。……必ず、返しにおいで」
呟くようにそう言ったベルサージャに、ヴァリスはこれまでの蟠りを忘れ、思わず大声を、出した。
「大丈夫です、ベルサージャ。必ずここへ、ティアと一緒に帰って来ます!」




