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微かな泣き声に、目を覚ます。
首を動かすと、ベッドの傍らで俯いている白い影が、見えた。
〈あ……〉
その影に声をかけようとして初めて、声が出ないことに気付く。戸惑いの感情が、ティアの全身を支配した。
と。
俯いていた白い影が、顔を上げる。銀色の長い髪に縁取られたその顔は、ティア自身によく似ているような気が、した。
もしか、したら。
〈母上……?〉
心の中で、その影に向かって声をかける。
勿論、ティアの母は、ティアがまだ赤ん坊の頃に亡くなっているのだから、ティアは母の顔を知らない。自分に似ていたと、ヴァリスの話で知っているだけだ。それでも、傍らにいるこの影が母親であるような確証が、何となくあった。
不意に、ティアの額に、影の細い手が触れる。初めて感じた母親の手は、微かに冷たく、それでいて温かかった。
だが。
「私は、この子を産んではいけなかったのかしら」
悲しい言葉が、ティアの心を冷たくさせる。
「こんな過酷な運命を持つ子など……」
しかし、母の紫の瞳に見えた、心からの想い、ティアをかえってほっとさせた。母は今でも、僕のことを案じてくれている。
〈僕は、大丈夫です、母上〉
声が出れば、すぐさまこう言えるのに。忸怩たる想いで、ティアは母親の顔を見つめることしかできなかった。
〈僕には、助けてくれる仲間がいます〉
「そう、そうね」
ティアの言葉がうまく伝わったのか、不意に、母が強く頷く。
「一人では越えられない壁も、仲間がいれば大丈夫かもしれない」
〈はい、母上〉
濡れた菫色の瞳で、それでもティアを元気づけるように笑う母。その母に、ティアもにっこりと笑い返した。




