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リセット系青年の場合

「やっちまった!人を跳ねちまった!やべーよどーしよ!捕まらったらおしまいだ!あんなオッサン一人ハネたせいで俺の人生終わりとかあり得ねーだろ!どーしてこんな所で歩いてるんだよ!」


 いつもの峠ドリコースをアニソン全開で流し終わった帰り道、お気に入りのアニメを見ながらソシャゲのイベントを走ってた。


 そんな俺の前に、誰も居ないはずのカーブを抜けた先で目の前に汚い格好のおっさんがぼーっと立っていた 俺は避けようと頑張ったけど、流石にどうしようも出来ず轢いてしまった。


 一瞬おっさんと目が合った、マヌケな面してこっちを見てた、その後は崖に飛んで消えていった。


「でも……、良かったのは目撃者が居ないことだよな……、こんなので通報されて捕まるとか、イベント最中なのに勘弁して欲しいし助かったわ、きっと真ん中でぶつかったし殆ど部品が落ちてなだろうから、上手くごまかせそうだな……」


 ボンネットとフロントの一部がぶっ壊れたけど、運がいい事にライトの破片とかは散らばっていない、これなら注意してゴミを拾っておけば大丈夫だと思う、あのおっさん崖の下でも死んでいるだろうし、俺が捕まることはないと思う。


「よし、俺はツイてる!俺みたいな若者が、おっさん一人のために人生を棒に振るなんて間違っている!これは神様がそう言ってるんだ!」


 カーナビの画面では丁度、異世界物モノ青い髪のの女神が俺に微笑みを浮かべている、ここは逃げるべきだ!そして車を早く直してごまかそう、親父に言えば自分の経歴を傷付けたい訳無いだろうし協力するだろう!


「この素晴らしい考えは間違いなく祝福されるはずだ、よし早く帰ろう~」


 自分のたった一つの冴えたやり方、俺はさすがだと自画自賛する、そしてこの計画を実行に移すために素早くゴミを拾う、ここで誰かに見つかれば俺の計画は失敗してしまう、それに時間が遅くなれば色んな人見られてしまう。


「へへ、なんかスニーキングミッションみたいで少し楽しいな……、俺ゲームは得意だし、きっと大丈夫だな」


 俺は結構なやりこみゲーマーだと自負している、ソシャゲーなんかも課金なんてせず当たりを引くまで努力を怠らず何度でもリセマラをする程の本格派プレイヤーだ、この俺の灰色の頭脳を持ってすれば、今回のミッションだって楽勝だ。


「さて大体、綺麗になったし、これでOKか」


 落ちた部品を拾ったし後は逃げるだけだ、全く朝からこんな迷惑を掛けるおっさんなんて社会の底辺以下のゴミでしか無い、若者にこれ以上迷惑をかけんじゃねーよって真剣に思う。


 家で待っている美少女達をこれ以上待たせる訳にはいかないし、さっさと帰ってクソ親父に車の修理を手配させよう、アイツは大手企業の役員だし、こういう時くらいは俺の役に立つからな、とりあえず先に電話しとくか。


 今回は自分のためだと思い、仕方ないので久しぶりにクソ親父に電話をする、俺が大学を一年浪人した時だから約1年振りだ、あんまりうるさいので相手しない様にしてたし。


「ちっ、いらん時とか邪魔な時はバカみたいに電話してくるのに、こう言う大事なは取らねーとか、マジ使えねーわ、これだからおっさんは糞だって言われるんだよ」


 全く、クソオヤジの使え無さにため息が出る、これだだからゴミは……、しょうがない、とりあえず自分の部屋に戻ろう、車はなにか掛けておけばバレねーだろしな。


 おっさんになると使え―奴ばっかりで困るぜ、宅配のおっさんも俺の受け取る時間を覚えねーから毎回イライライラさせられるし、何度も使ってやってるんだからいい加減覚えろって、マジおっさんは社会のゴミとしか思えない。


「あ~まじで、おっさんとか居ない美少女ばっかの異世界に行きたいわ―、こんな面倒なことなんて無いだろうしよー」


 カーナビ画面に映る世界は、楽しそうで羨ましい、主人公だってろくに努力なんてしないで、すげー楽しそうだ、それにピンチになっても転生特典のチートでラクショーに勝てる、クソみたいなおっさんが絡んできても一瞬で倒せるのは正直羨ましいわ。


 あ~めんどくせー、とりあえずさっさと帰って、昨日のアニメの確認しないとな、やっぱカーナビの小さい画面だと見た気がしないしな。


 今季はスマホを持った若者が異世界チートをする話があるし、俺が望む展開っぽいからいい感じだわ、テンプレじゃないとかまじありえん。


 家に戻る道で見直すアニメのことを考えていると、一台のパトカーとすれ違う、やべ、これは職質くるか?俺の車はめっちゃ気合の入った痛車だから、何かあるごとに声を掛けられたりする、まぁ武器とか載せてないから、だいたい音がうるさいから静かにしろって言われる程度だ、せっかく音響にカネかけてるんだから爆音で聴きたいし、流してるのも神アニメの神曲だから問題ないだろうに、芸術を理解しない奴は俺によく文句を言ってくる、ああいうのが税金の無駄遣いだと思う、こんな事しているくらいなら、もっと悪いやつ捕まえてくれ、国会議員とかさ。


『そこの白のアニメステッカーのお車の方、左に寄せて停車して下さい』


 案の定、俺に止まれってパトカーが言ってくる、乗ってるのはおっさんだ、も~マジおっさんめんどい、まぁしょうがないから止まっておく、これで逃げてしまえばさっき轢いたおっさんのことがバレるかもしれないしな。


 そう思いながら端に寄せて止まる、音は絞って置く、こうしておく方が早く済む、あっちもどうせポーズで止めているだけだから、協力的な姿を見せればすぐにどっか行く。


「すいませんねぇ停まって頂いて、おはようございます私、神山警察署の山田言います、コレ警察手帳ね」


 どうやら自己紹介するタイプのおっさんだ、こういうのは結構面倒くさいと俺の今までの経験が訴えてくる。


「はぁ……、どうも……、それでなにか?俺眠いんで、さっさと要件言ってくれません?」


 窓を半分だけ開ける、こうしとけば話は出来るしもし手を出してきても窓を締めて対応が出来るので、安全だからだ。


「ああ、その前に免許証お願いしてもいいですか?」


 どうやら疑われているらしい、免許の提示を求めるのは任意なので拒否してもいいが、面倒なので見せるだけはする。


「はい、免許持っています、名前と写真見えたでしょ?」


「すいませんねぇ、しっかり確認したいのでこちらに渡すか、もう少しだけ見せて頂けませんか?」


 薄ら笑いを浮かべたおっさん警察官が俺にさらに要求するのでめんどくさいので止めた理由を聞いてみる、これが不当なものであれば無視してもいいってネットで読んだ。


「なんでですか?アニメのステッカー貼って走っちゃいけないって法律なんて何処にもないですよね?俺普通に制限速度守って走ってましたよ?免許も持っている、なにか問題有りますか?しょっちゅう警察に無駄に停められてマジ迷惑なんですよ」


 これを言うとだいたいの警察官は面倒くさいと思って、捨て台詞を吐いて帰ることが多い、車内の確認中をしてくる奴も居るがそんなのは稀だ。


「いえいえ、アニメのステッカーではなくて、おたくの車のフロント凹んでるでしょ?それが気になって停めさせてもろたんです、ちょっと確認してもいいですか?」


 まずい、そっちは疑われるとは思ってなかった、だけど見た限り血痕とかなかったし、動物を轢いたって言えば何とか成るはず、落ち着け、クールに行くんだ。


「ああ、さっき山で動物とぶつかっちゃって……、どうぞ……、確認して下さい」


「じゃ、なんかあったら危ないんでエンジン切ってもらえますか?エンジン掛かったままだと轢かれたら怖いんで」


 また気持ち悪薄ら笑いを浮かべて、田中だったか山田だったか言ってくる、ここで焦るとやましく見えるだろうし、エンジンを切る。


「これでいいですか?めっちゃ眠いんで、早く終わらせて下さいね」


「すいません、ご協力感謝します、直ぐ終わらせますんで」


 おっさんは車の前に行って、事故の様子を見ている、暫らく見ていたと思ったらこっちに戻ってきた。


「すいません、ちょっと、このままお返しするのは駄目ですね、車から降りてもらえますか?」


「はぁ?なんで?ただの動物とぶつかっただけでしょ?何も問題ないじゃないですか?」


 やばい!バレたか?俺の中に焦りが走る、その焦りに気づいていないのかおっさんはゆっくり口調で返してくる。


「いえ、作業着みたいな布が引っかかっていましてね、その辺を少し聴きたいんですよ、本当に貴方が轢いたのが本当に動物だったのかをね?」 


 やばい!ばれた、ここは逃げないと!俺の超絶ドラテクならこんなおっさんが運転する車なんて、余裕でチギって、バックミラーから消せるはず!


 そう考えた瞬間にエンジンを掛ける排気音が鳴り響く、警察官が手を突っ込んでくるが無視して加速する、俺の愛車は親父に買わせた高級車なので、さすがのパワーだ!馬力が違う!一瞬でおっさんを振りほどいて加速する、あんな軽のパトカーでは追い付くことすら出来ないだろう!まさに気分はアメリカのゲームみたいな気分だ。


「よし!適当に巻いて逃げればまだどうにでもなる!現行犯逮捕もされてないし証拠も消してしまえば問題ない!、いざとなったら親父がなんとでもするだろう、子供の幸せを守るのが親の仕事だ!」


 そう、完全な計画だった、まさに俺の考えた最強の計画だった、だけど目の前に急に飛び出してきたトラックを俺は避ける事が出来ずに激突した、その運転手もおっさんだった、なんでおっさんてのはこんな害悪しかない存在なのだろうと思いながら、俺の意識は遠くなっていった。

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