表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰(キャ)騎士と兎の少女  作者: 羊の迷宮
6/24

小話①

魚の月初めの日 うっとうしい霧模様


「ナナシ様。」

「ん?」

食後、リビングでのんびりしているとメイプルが話しかけてきた。

「なんだ?」

食器洗いを終えた彼女がとととっとリビングにやって来た。

「以前クレアさんにナナシ様の好物をお聞きして、お弁当に入れたのですけど。」

「あぁ、唐揚げか、美味かったよ、ありがとう。」

「えへへ、ありがとうございます。」

彼女は嬉しそうに笑い大きな耳をピコピコっと揺らした。

「それでですね、他にもナナシ様の好きなものがあればお聞きしたんですが。」

「んー、そうだなぁ…。」

ステーキは高いし、ラーメンはこの世界にはないっていうか弁当には無理だろう、餃子…も無理そうだな。あぁ、こっちの世界に来てあんまり後悔は無かったけどこういうときばかりは向こうが恋しくなる。

こころの中で溜息をつきながらしばし考えた後に思いつく。

「竜田揚げも好きだな。」

「タツタアゲ?」

彼女が首を傾げた、から揚げはあっても竜田揚げはないのか。

「えーっと、唐揚げの仲間だよ。鶏肉なんかを片栗粉でまぶして揚げるのさ。」

俺も詳しい作り方は覚えてなかったけど確かそうだったはずだ。

「なるほど、それは初めて知りました…ナナシ様の"故郷"のお料理ですか?」

「そうだな。まぁ無理そうなら…。」

「いえ、大丈夫です!…多分。おつくりします!」

彼女はふんっと鼻を鳴らして勢いよく身を乗り出してきた。

「お、おう、わかった…。楽しみにしてるよ。」

「はい!」

「………。」

「…?どうかしましたか?」

「あー、うん。メイプルは好きなものはないのか?」

「私ですか?ヴィアンヌベントが好きです!」

「ヴィ、なに?」

「えーっと、人参やお野菜をですね、お肉で巻いたお料理なんですけど。」

「ふーん。」

アスパラ巻きのようなものだろうか?

「…よし。」

「?」

「明日は休みだし、二人で買い物に行こうか。」

「あ、はい!何を買いましょうか?」

「今言った料理の材料、竜田揚げとヴィアン、えーなんとかのさ。」

「え!?本当ですか?」

彼女は耳をピンと立てて椅子の上で跳ね上がった。まるで本物の兎の様なリアクションに笑みがこぼれてしまう。

「あぁ、金も入ったしな。たまにはいいだろ。」

「あ、じゃあ、えっと…孤児院の他の子たちにも…?」

「んんっ…あぁ、まぁ…足りるだろ。」

急いで頭の中で計算する…。うん、足りる足りる。多分、俺がまたすぐ仕事に行けばいいだけだ、うん。

「やったぁ!ありがとうございます、ナナシ様!」

彼女は満面の笑みを浮かべてデレっとした表情を浮かべた。

うん、この笑顔の為なら大したことは無いな。

自分にそう言い聞かせることにした。

その夜は、買い物にテンションを上げる彼女と共に遅くまで会話を楽しんだ。


本日の日記を終える

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ