HE・N・TA・I達
⋯そんな事を考えていたからだろうか、僕はこの時場所で起きていたことに気が付かなかった。
少し考えればすぐにわかることなのに、僕は見落としていた。
(⋯ザワザワ)
「⋯⋯何だか周りがうるさいような⋯?」
そう、ある意味で天災とも言える人災、起こるべくして起こる現象。
主に、夏の大合戦(夏コミ)とも呼ばれる場所で観測される、津波のような災害、人で出来た津波、いや――
「「「天使発見っっ!!」」」
「ん?⋯うわぁぁぁっ!?」
――HE・N・TA・Iたちの津波に!!
いきなり僕を中心に出来た人だかり、説明をしようと壇上に上がっていた人も驚きである。逃げようとも思ったが。一瞬で囲まれてしまった。袋の鼠とは、この事を言うのだろう。煮るなり焼くなりしないでください、できればそのまま離してやってください。
段々脇道に逸れていく思考に同調するかのように狭くなっていく包囲網、そしてオロオロしている壇上の女性⋯いや仕事して下さいお願いします。
⋯あの、どれだけ声張り上げてもこの状況じゃあ伝わらないと思いますよ?ちゃんと目の前にあるマイクを使ってください⋯あ、やっときずいた⋯いや、それスイッチ入ってませんよ。
⋯⋯スイッチ入ってないことにきずいてないとか、何ですかこの人、ドジっ子ですか?
誰ですかこの人を推選した人、明らかに人選を間違えてますよ。
僕がおろおろしている司会の人を見てると、そんなの知ったことか!とばかりに、包囲網の中から3人―男の人が2人に女の人か1人だ―がずずいっと出てきた。
その内の1人―男の人だがなんだかやけに真剣な顔で、口を開く。
「あの⋯名前は何ですか?」
「え?⋯レイですけど⋯?」
どうして名前なんか聞くのだろう?と思ったけど、特に問題はないかという事で、一応プレイヤーネーム(と言っても本名と同じだけど)を名乗っておく。
「えっと、年齢は⋯?」
「15歳ですけど⋯」
「⋯⋯⋯えっ?」
⋯「えっ」てなんだよ「えっ」て、そんなに15には見えない?
少し涙目になりつつ⋯いや、泣いてないよ?泣いてないからね?⋯周りを見渡す、するとほかの人達もざわついている。
⋯本当に15歳には見えないようだ。
わかってはいたさ、身長が低いことくらい、でもここまでで露骨に反応されるとショックだ。
必死で目から溢れ出そうになる塩水(涙ではない)をこらえていると、もう一人の男の人が緊張した顔つきで、僕の前に出てくる。
⋯なんだか嫌な予感がするなぁ⋯。
なにせ目の前の男の人がやけに真剣な顔つきで見つめてくるのだ、これを嫌な予感と呼ばずになんと呼ぼう。
その人はキリッとした顔のまま手を突き出し――
「すみませんレイさん⋯俺と付き合ってください!!」
―あ、この人ヤバイ人だ。
目の前の人は僕に手を出したまま、腰を直角におる見事な礼を決めている。それにその状態から微動だにしない。このままだと僕がなにか言うまでずっとこのままなんじゃないだろうか⋯?なんて思わせるほどの礼である。
どう答えるべきか、僕が迷っていると。
「いや、俺と付き合ってください!!」
「いやいや、レイさんは俺と付き合うべきだ!!」
「ぼっ僕と付き合ってください!!」
ヤバイ人が増殖した。
増えていくヤバイ人、それに比例して増えていく見事な礼の数。一体なんですか?ゲイバーですか?いえむしろ G・E・I☆BARですか?いつの間にここは魔物の巣になったんですか?
ヤバいです、ここはヤバイですもう嫌です誰か助けてくれませんか?⋯いやだからマイクのスイッチ入ってませんよ?まだ気づいてないんですか?誰か教えてあげましょうよ。
涙目の僕を囲む様に展開されたカオスな空間。そしてそれを見てさらにオロオロする司会の人、ほんとにもう何なんですか?そろそろ目からの塩水がこらえられなくなりそうですよ?
そろそろ眼球を洗うための水(絶対に涙ではない、断じて違う)が出そうになった時、そこに天使が出現した。
「何言ってるのよ、零くんは私のよ?」
「え?⋯綾?」
天使⋯かなぁ?⋯⋯⋯。




