アクセサリー
「まぁ、さっきまでのは、置いといて⋯もう一度聞くけど、どうしてここが分かったの?」
と、先程の事はとりあえずなかった事にして聞いてくるメイルさん。⋯んー、なんでって⋯
「音ですね⋯」
「⋯音?⋯おっかしいなー。外にはほとんど聞こえないはずなんだけどな〜」
ぼやくメイルさん、結構大きい音がしてたけど⋯?。⋯あ、もしかして
「種族が関係してるんじゃあ⋯」
「あぁ、獣人だから聴力に補正がかかったとか?」
あながち有り得ない話じゃ無いかもしれない。あと、種族といえばもう一つ
「レア種族同士って言ってましたよね?メイルさんって何の種族なんですか?」
そう、メイルさんは、レア種族同士といったのだ。つまり彼女もレア種族ということ、しかし見た目は、人間と同じだ、一体何の種族なんだろう?
「ん?私?私は〔武具精霊〕っていう種族、わかりやすく言うと、〔ドワーフ〕の上位種族かな?生産行動⋯特に装備を作る時に修正がかかったりするんだよ。」
「へぇ〜⋯。生産系なのは分かりましたけど、この店はどうしたんです?確か建物を買うのって結構なお金がかかるんじゃ⋯?もうそんなに貯まったんですか?」
「いやいや、そんなにすぐに大金は手に入らないよ、これは種族ボーナスみたいな物でね、いくつかの店の中から一つ無料で手に入れたんだよ。」
なるほど、僕が装備だった様に、メイルさんは店を手に入れたわけか。でもどうしてこんなに入り組んだ所にある店を?
「あのー。こんな奥の方にある店を選んだのって、どうしてですか?他にもいろいろあったんでしょう?」
「そんなの決まってるよ、だって――」
もしかして目立つからかなぁ⋯なんて予想していると
「――だって隠れた名店ってなんかいいじゃん!」
⋯なんとも軽い理由だった。
「隠れた名店ですか?」
「うんそう。ほら、裏路地とかにある、品質の高い掘り出し物を安価にうるみせ、あれ一度やってみたかったんだよね〜」
語尾に音符がつきそうな感じでニコニコしながら言うメイルさん。⋯迷っていたら隠れた店を見つけたかー⋯すごい幸運。
「それと、私の種族のこと話したんだし、レイくんの種族も教えてよ」
「あぁ、それは⋯」
□ □ □
「⋯という事です」
「⋯⋯⋯⋯⋯何それ?どんなチート?」
まぁ、普通そうなるよねー。当の本人も驚いたし、メイルさんの驚きが覚めるのを待っていると⋯
「⋯まぁ、種族はどうであれ、せっかくお客さん第1号だし、無料でオーダーメイドの装備を作ってあげるよ、何がいい?」
「⋯いいんですか?」
「いいって、いいって、最初に来たお客さんになにかサービスしようとは決めてたし」
「じゃあ、お言葉に甘えて⋯と言いたいとこなんですけど⋯」
そう、僕の場合、装備はもう手に入れてしまっているのだ、そのことをメイルさんに伝えると、
「う〜ん、⋯じゃあアクセサリーかな?」
「アクセサリーですか?」
アクセサリーって⋯よくサブ装備とかに分類されるあれ?
「うん、ステータスが上昇したりするんだよ。それで、どうする?」
「じゃあ、お願いします」
「よーし!見たとこ和服だし、作るとしたら簪かなー⋯」
と、作るものを考えながら、店の奥へと入っていくとメイルさん。
しばらくすると、はじめに聞いた音と同じ金属音が聞こえてきた。⋯簪作るのに叩く必要あったっけ?
と。ゲーム内の矛盾について考えながら、僕は作り終わるのを待った。
□ ■ □ ■
「出来たよー!」
数分後、メイルさんが、店の奥から出てきた。その手にはどうやら桜をモチーフにした簪が握られていた。
見て見てとばかりに簪のステータスを見せてくる、すると、
『簪〔紅桜〕
▫AGI+30 ▫STR+20』
あれ?なんか凄くない?
「メイルさん?⋯これ、凄くないですか?」
「ん?種族補正だよ、作った物の効果がかなり上がるんだよね」
にしてもな気もするが⋯。となんだか腑に落ちない感じを押し殺していると、
「レイくん、ちょっと後ろ向いてくれる?」
「?」
言われた通り後ろを向く、すると、メイルさんが手早く後ろに簪を付けてくれた。⋯まぁ効果はともかく作ってくれたんだし、⋯と、感謝の気持ちを伝えるべく、僕は笑みを浮かべてメイルさんに一言。
「ありがとうメイルさん」
「⋯⋯⋯」(スッ)
「?」
何故かメイルさんが僕に手を伸ばしてきた。そしてそのまま頭をなで始める。⋯何故?と思うものの、まぁ気持ちいいならいいか、と思考を放棄する。
⋯それにしても、撫でられるのって気持ちいいなぁ⋯なんだか落ち着くし。
「⋯⋯⋯はっ!?」
あ、メイルさんが戻ってきたりそれになんだか顔が赤い。ねつかな?でもゲームだし……何だろう?と、考えていると、頭から手が離された。⋯あぁ、もう終わりか⋯と思ったとたん、表情に出ていたのか、手が戻ってきた。⋯やっぱり気持ちいいなぁ♪
それからしばらく、頭をなでられてごきげんな狐人と顔を赤くした人間という奇妙な光景が続いた。




