【敏捷】 ~跳躍力が増えると実は面倒~
今回は、【敏捷】、或いは【素早さ】、【AGI】の能力値の話です。
【敏捷】の主な用途は、身のこなし、反射神経、バランス感覚を必要とする行動全般になります。
頻繁に使うのは、速く走るとか、敵の攻撃を華麗に回避するとか、あとは宮廷物だとダンスを踊るのもこの能力値でしょうか。
ゲームによっては、水泳や跳躍や登攀なんかも【敏捷】で判定することがあります。【筋力】とどちらがしっくり来るかはその世界のデザイナーさん次第。
あと、「ターン制」のRPGでは【敏捷】の高い順から行動するものが多いですが、ターン制バトルは小説に落とし込むと扱いに苦労しますので考えない方が良いと思います。
(正直、拙作『レベル99の女勇者~』でも物語として違和感無いようにターン制バトルを再現するのに相当苦労しました……)
▼高く・遠く跳べることの面倒さ
跳躍距離が【敏捷】に依存するようなゲーム世界の場合、【敏捷】が高すぎるキャラは扱いが面倒になります。
具体的には砦を護る壁やらお城を取り囲むお堀やらを跳び越えられるなら、わざわざ正門から乗り込まなくても建物の中に入れます。
勿論お城の場合は正規の手続きを踏んで正面から入る事に意義がある場合もあるでしょうけど……
まあ要するに、本来侵入者を防ぐ防壁になるはずの壁やら崖やら川やらが【敏捷】を人外まで高めた奴相手だとあっさり破られてしまい、用意したストーリーを破壊する要素となりうるのです。
他にも、街中で囲まれた時にジャンプして近くの建物の屋根に飛び移ることもできますし、逃げに回った時に非常に捕まえ辛いですのでストーリーを組む上で注意しないといけません。
勿論、高い【敏捷】に限らず飛行魔法みたいなのがあれば同じ事ができますが、その辺は別の記事で改めて書きたいと思います。
▼数値的実例
例として、「成人男子の平均的な身体能力を【敏捷】100とする」&「【敏捷】の数値に単純比例して跳躍距離が変わる」ようなルールのゲーム世界を仮定しましょうか。
(今適当に考えた計算ですので、もちろんあなたの小説ではここでの計算は気にせず、あなたの望むままに数値やルールを決めて下さい)
そうすると、【敏捷】が100の平均的なキャラクターの跳躍距離が、走り幅跳びで約5m、垂直跳びで約60cmぐらいになりますでしょうか。
オリンピックのメダリストの記録が走り幅跳びで約9mですから、この計算だと人類の頂点の【敏捷】は180ぐらいです。
あと、一学年に一人ぐらい居るスポーツ万能系男子生徒で大体140前後、インドア派の女子生徒だと50前後、生まれたての赤ん坊だと0近いと思います。
この例だと、人類の取りうる値として【敏捷】は0~200の範囲内に入ることになりそうです。
同じ計算だと、例えば【敏捷】1000のキャラが居たとして走り幅跳び50m、垂直跳び6mです。
能力値が僅か一桁上がるだけで、ストーリーを考える側としては持て余しそうなスペックですね。城も砦も落とし放題!
例えて言うならスペランカーの世界にスーパーマリオをぶち込むような物です。(判らない人すみません)
要は「敏捷は迂闊に上げ過ぎると大変ですよ!」というのが結論です。
▼日本人は【敏捷】がお好き?
非力ではあっても敵の攻撃を華麗に避けながら的確に急所を突いて倒すような軽戦士スタイル、日本では人気ありますよね。
RPGの本場であるアメリカだと、どちらかと言えばマッチョなタフガイが足を止めて殴り合うような戦闘スタイルが多いようですが。
日本では漫画とかでもパワー型の巨漢はやられ役だったりすることが多くて割と不遇です。パワー型だと最近は大男よりも怪力+幼女みたいなギャップ狙いが多いかも?
そんな訳なので、やはり日本の読者を想定して主人公を格好良く魅せるには【敏捷】を高目に振るのが鉄板ですかね。
その分【筋力】が不足して攻撃力に悩むもよし、手数やスキルで補う戦い方で勝負するもよし、だと思います。