【バグ】 ~リアリティが大事~
プログラムの規模が大きくなりますと、それだけ【バグ】の混入する危険度も上がります。
今回は、コンピューターゲーム独自の概念である【バグ】についてお話します。
純粋な小説とかアナログゲームとかではほとんど見かけないテーマですので、ゲーム慣れされていない方には少々とっつきにくいかも知れませんがご了承下さい。
▼「ありそうな」【バグ】
作中のゲームにバグ技を導入する場合の注意点としましては、「実際にありそうなバグ」としてリアリティを出すことが重要に思えます。
例えば、何だかよくわからないけど特定の手順で何かを行うと凄く有利な現象が起きるとかだと、読者さんはバグというよりは都合の良い隠しコマンドみたいな印象を受けるでしょう。
この点、実在のバグからヒントを得て応用するなら、よりリアリティのあるバグを産み出せると思います。実際のプログラムでは産み出しちゃいけないわけですが……
また、ネットゲームではバグが発見されてからデバッグまでの時間が短いです。複数のプレイヤーが同時に遊ぶゲームですので、バグ技によって誰か一部の人が不当に利益を得るようなことは不公平であって、迅速・厳格に対応するのが普通ですね。
同様に、ネットゲームの規約ではバグ技の意図的な不正利用は処罰の対象になるものも多いですので、ネットゲームを舞台にした小説の場合はその辺のリアリティにも気を配ると良さそうです。
▼【バグ】の事例色々
過去のゲームで実際にあった、またはありそうなバグの数々をご紹介します。
1.フラグ管理ミス
イベントを管理するフラグの条件にミスが有り、本来必要なものが抜けていたとか、不要なものが混ざっていたとかです。
例えばDQ2で水の羽衣を2着入手できるバグがこの類です。本来「材料」か「完成品」を既に所持しているとそれ以降材料を拾えないのですが、1着目の材料を職人さんに預けて次に受け取るまでの間に2着目の材料を入手できてしまうという原理です。
他にも、フラグのand条件とor条件を間違えて、本来イベントフラグが立たないはずの組み合わせでフラグが立ってしまう事例もあります。
2.オーバーフロー
コンピューターの中身は有限の桁数の2進数で制御されており、加算を繰り返して処理できる最高数に達すると0に戻ったりその際の繰り上がりで隣のフラグに干渉したりします。
この類ですとDQ4の8逃げバグが有名ですね。8回逃げるとカウンタがオーバーフローして隣のフラグが立って凄いことが起きるアレです。
あとはFF6でアルテマの攻撃力を上げすぎるとダメージが計算可能桁数を超えて0に戻るバグもありました。
逆パターンでは、ワイルドアームズでは1個しか持ってないアイテムを2回使うとアイテム所持数が負のオーバーフローを起こして0-1=255個になってしまうバグがあり、ステータスアップの消費アイテムを無限増殖することもできました。
3.データの打ち間違い
激務の中でデータ打ち込みのような単純作業をしているとどうしても打ち間違いが発生します。
例えば本来攻撃力100のはずのスキルが攻撃力1000になっていたり、火耐性のはずの防具が水耐性になっていたりです。
豪快なミスであればデバッグの過程で発見されますが、微妙な数字の違いや誰も使わないようなマイナーなスキルでは検査漏れが発生し易いです。
世界樹の迷宮のスキル周りで頻繁に発生する不具合がこの類ですね。
4.存在しないものを参照する
いわゆる「『無』を取得する」とか「ぬるぽ」とか呼ばれる類のバグです。
実体が存在しないアイテムのIDを取得しようとしたり、本来存在しないはずのキャラクターに話しかけようとしたり、中身を作っていない場所に移動しようとしたり、することでコンピュータの内部処理で不具合を起こします。
この手のバグはデータの実体が無い物を無理やり取得したり参照したりするので、何が起きるか予測がつかないものが多いです。プレイヤーの有利になることもあれば不利になることもあり、最悪ゲームがフリーズしたりハードディスクの中身を書き換えたり冒険の書が消えたり夏休みが終わったはずなのに8月32日が始まったりします。
良くも悪くも効果は絶大ですので、小説で出す際はここぞという時の切り札的活用をお勧めいたします。
5.誤字、誤訳
本来はバグとは違いますが、ゲーム中の台詞やモノローグ、或いはゲームの説明書やルールブックでの誤字誤植が伝説を産み出すケースも有ります。
特にクイズゲームで正解となる回答データに誤字が含まれていたら正答率はぐっと下がることでしょう。
あとは初期のD&Dで、「Platinum Pieces(プラチナ貨)」を「プルトニウム貨」と誤訳したネタは今でも語り継がれており、ゲームが現実化する展開でそういう貨幣が本当に登場する一発ギャグなんかも考えられるかも知れません。
▼紹介コーナー
『この世界がゲームだと俺だけが知っている』
(http://ncode.syosetu.com/n9078bd/)
バグゲーと言えばまず最初に思い浮かべるのが猫耳猫でしょう。
実際にありそうなバグの数々のアイディアに圧倒されます。
『TAS (ツール・悪役令嬢・スピードラン)』
(http://ncode.syosetu.com/n1228cq/)
悪役令嬢がバグ技を駆使して好感度上げに奔走するお話です。
短編なので気軽に読めます。ヤッフー!
2015/10/25:アンダーフローの意味を取り違えていたので、負のオーバーフローに表記訂正。