【スキル】1 ~そんなバランスで大丈夫か~
ゲームが好きな方でしたら、【スキル】を使って敵を吹っ飛ばす瞬間だけでなく、例えば膨大な【スキル】のデータを読んでどうやって使うか思いを馳せる時とか、スキルツリーを前にどれを取得するか悩む時とか、あとは書き手さんでしたら自分の小説の舞台になるゲームにどんな【スキル】を搭載するか考える時に、ワクワクと心が躍るものじゃないでしょうか。
そんな訳で、今回から【スキル】の話に入ります。長くなりそうなので何回かに分けてお送りいたします。
▼【スキル】を作る際に決めておくこと。
安易に技名と演出だけ決めておけば大丈夫、とか考えていませんか?
それだけでも技量や勢いがあれば「バトル物」として成功することは可能でしょうけど、「ゲーム物」としてはデータ面で弱い感じがします。
ざっと考えて、スキルを作る際に必要そうな項目を以下に並べてみます。
1.スキル名
スキル名を括弧で括るとそれっぽく見えます。《烈空斬》とか【ファイアバレット】とか。
スキルの数が多くなってくると作者でも執筆時にスキル名を間違え易くなりますので、特に難しい漢字の組み合わせや面倒臭いルビが有るものは、別テキストにスキルリストみたいなのを準備しておいてコピペするのが安全でしょう。
2.効果
ゲーム的に考えるなら、対象は単体か複数か、威力はどれくらいか、射程や効果範囲は幾らか、持続時間があるなら幾らか、等に気を配る必要があります。
特に威力は意外と作中で語られない例が多いです。スキルを使う時と使わない時の差を描写で表すよう意識してみては如何でしょうか。
3.修得条件、スキルツリー上の位置
そのスキルを覚えるのに前提条件として他に修得しなければならないスキルが必要かどうか、または武器熟練度を幾らまで上げれば覚えられるかといった、そのスキルを修得するまでの道のりの遠さに関わります。
一般的に強力なスキルほど前提条件が厳しくなり、大技の多くは修得するのはゲームの後半になってからでしょう。
4.コスト
MPやTPの消費量です。当たり前ですが、強力なスキルほどコストは大きくなる傾向になります。
また一部のスキルでは特殊なコストを要求することがあります。(HPやお金やアイテムや経験値等)
例えばドラクエのメガンテは、消費MPは僅か1ですが使うと術者本人が死んでしまう豪快な自爆呪文です。
またWizardry等には、使うと術者のレベルが下がる(経験値を失う)魔法が存在します。
5.技後硬直
元は格闘ゲームの概念だと思いますが、「強力な技を放つと隙ができる」ことをゲームシステムに組み込む物もあります。簡単に言うなら「あるスキルを使用した直後は一定時間身体が硬直して動けない」という制約です。
この概念を採用するのであれば、スキルごとの硬直時間も決めておくのが良いでしょう。
強力な技だから硬直時間が長い……とは限らず、硬直時間を短くする代わりにコストがやたら重いスキルとかあっても良いと思います。
あと、VR(仮想現実)では硬直はきっとストレスの溜まる仕様になると思います。システム的な制約で動けなくなる訳ですから。
なのでここは人気のゲームや小説をそのまま流用するのではなく、むしろ作者の好き嫌いを反映させた方が作品として面白くなるんじゃないかと思います。例えばゲームシステムに頼らずに柔道みたいな技術を駆使して相手のバランスを崩しに行く路線も有りかと思います。
6.クールタイム(再使用禁止時間)
上の技後硬直とよく似た概念ですが、スキルの連続使用ができないよう、スキル使用後は一定時間使えなくなる制約があるものもあります。
ゲームによって制約はさまざまで、「同じスキルだけが使えない」だったり「同系統のスキルが使えない」だったり「全てのスキルが使えない」だったりします。
当然、「同じスキルだけ」の制限ならクールタイムはその分長めに、「全スキル」の制限ならクールタイムは短めに設定する方が良いでしょう。
また、特別に強力なスキルだと使用制限が1日に1回とか定められるものもありますので、こういった回数制限もクールタイムの亜種に入れられます。
7.フレイバーテキスト
フレイバーテキストとは、ルール上の効果は無く雰囲気や世界観を表すための文章のことです。
カードゲームではお馴染みのテキストですが文章媒体である小説とも相性が良いのではと思います。
▼バランスを取る
スキルを自分で考える際にはバランスが重要な訳ですが、そのバランスにも考えるべき要素が2通りあります。
1.スキル間バランス
あからさまに強くて有利なスキルがあるのはゲームバランスとして望ましくありません。
強いスキルは、それだけ消費が重かったりクールタイムが長かったり、相応の不便さを持っているものです。
勿論、MPがバカ高い等の理由で強力スキルを主人公が連打する展開は有ると思います。その場合でも、たまには消費の軽い初級スキルに脚光を当ててみるのも良いアクセントになるでしょう。
2.クラス(職業)間バランス
クラス毎に修得スキルの強さにバラつきがあるのも、同様に望ましくありません。
小説では「不遇職で成り上がる」展開が人気ですが、ゲーム物でそれをやると「不遇職が出ること自体ゲームデザイナーが無能なことの証拠」という印象になります。ストーリーの展開のためにゲームバランスをわざと崩すのは本末転倒です。
勿論、初級職より上級職が総合的に強かったり、戦闘職より生産職は戦闘面で弱かったりするケースはあります。ですが、あらゆる局面で不利なクラスはゲーム物では避けたほうが無難でしょう。