【世界】 ~大きな世界症候群~
今回は少しシステム的なお話を離れて、【世界】、或いは【ワールド】、【フィールド】についてです。
定番の「中世ヨーロッパとは~」とか「冒険者ギルドは~」といった世界観方面ではなく、移動手段や移動距離そして世界の広さのお話がメインになります。
初心者さんは世界を広く大きくしたがる傾向があるようですが、大きすぎると結構手に余ってきますのでご注意下さいませ。
▼徒歩
人間が普通に歩く場合、一般的な目安としては時速4km前後で、1日に進む距離は大体30~40kmです。
ただ、この数字は舗装された道を軽装で安全に歩く場合の数字なので、重装備で道なき道を進む場合はもっと遅くなります。
長旅の場合、単純に40km×日数にはならず、例えば1週間のうち1日は身体を休めた方が良いですし、悪天候やら体調不良やら関所で足止めやら色々な要因を考慮しますと1ヶ月で800~1000kmぐらいでしょうか。
拙作『レベル99の女勇者~』でも主人公達は何かと理由をつけては冒険を休んでますが一応この辺りの事情に配慮したつもりです。
ちなみに日本地図で見てみたところ、北海道から鹿児島までを道なりに進むと約2500kmだそうです。(直線距離だと約1800kmですが、日本海を突っ切る進路になってしまいます)
車だと数日の距離ですが、徒歩の旅だと2ヶ月半~3ヶ月ぐらい。思ったより長いと思われますでしょうか、それとも短いと思われますでしょうか。
勿論上記の計算は「普通の人間」で考えた時のもので、例えば【敏捷】が常人の10倍あるチート主人公を想定した場合は移動力も10倍になってもおかしくありません。(普通に考えるとおかしいですがみんなもう慣れたと思いますし)
世界が広すぎると感じたら、主人公の移動力を上げてみては如何でしょうか。
ただ、複数人数で旅する場合は、どうしても一番遅い人に歩調を合わせて進むことになりますのでご注意を。
▼馬・馬車
馬で旅をする場合、1日に約50~60kmが目安になります。意外と遅いように思えるかも知れませんが、馬だって全速力で何時間も走り続けられる訳ではないのです。
但し、中継地毎で馬を乗り捨てて新たに買い換えるようなリレー方式で上記よりも速く移動することは可能です。その場合は事前に地図と睨めっこしてルートや中継点を決めておくべきでしょう。
実際、古代ローマの情報通信用の早馬はこの方式で1日に300km程を走ったそうです。整備された道路網とシステム化された情報網があって初めてこれだけの速度を出せました。実はこれが中世ヨーロッパになるとシステムが後退したせいで情報の速さはもっと遅くなっていたようです。
あとは、チート主人公の場合は自分で走る方が馬より速いことも多々あると思います。足の遅い仲間が居る場合も、自分が馬の代わりに馬車のワゴンを引けば解決です。ビジュアル的な問題はさておき。
勿論、異世界特有のファンタジック騎乗生物(ユニコーンとかスレイプニルとか)の見せ場をここで作るのも良いと思います。
▼海の旅
基本的に、海の旅は船を使う人が多いと思います。船の利点は乗客が休んでいても24時間進み続けるため1日辺りの移動量が多いところです。
帆船の場合、風の具合が速度に直接影響しますので正確な数字は出せませんが、1日に100km前後は進むと言われています。
また、船旅には陸路で味わえないロマンが溢れています。
定番だと、海賊との戦闘や、沈む豪華客船や、嵐でヒロインと二人きりで無人島に流れ着くドキドキイベント等でしょうか。
あとは、船が一種の密室状態なので事件が起きたりしてミステリー仕立てのスパイスを加えられそうです。「ミシシッピー殺人事件」が有名ですね。(そうでもない)
まあ、主人公がチートだとこの手のイベントがいともあっさり解決したりするんですが……
▼空の旅
飛行魔法、空飛ぶ箒や絨毯、鳥や竜の背に乗る、飛空船、浮遊大陸、etc.
移動力等については、この辺まで来ると前例が当てにならない領域ですのでこちらも無責任な事が言えないです。作者さんが自由にデザインされると良いでしょう。
参考までに、渡り鳥のオオハクチョウは時速約50~70km程で飛行し、2週間ほどかけて北極海から日本までの約4000kmを旅するそうです。
また、ジェット飛行機は時速約800km程で、東京からだと大体1時間半あれば国内の大抵の空港には到着するみたいです。
▼転移門
街から街に一瞬で転移できるゲートがデフォルトで備え付けられている世界もあります。
現実ではなくゲーム寄りで考えると、街から街への移動で無駄に時間をかけるのはプレイアビリティを損なうために発展した設備だと思われます。
小説の舞台として流用するなら、使用制限とか防犯とかだけは気にかけておいた方が良いと思われます。例えば街の中ではなく正門から少し離れた地点に設置するとか。
また、ルーラみたいに一度行った事のある場所に飛べる魔法も転移門の亜種と言えるでしょう。
その場合は、その魔法が有名で使える人が多数居れば当然、街の防犯もその魔法の存在を想定したものになると思われます。
▼まとめ
まとめとしては、「あなたの小説の世界の広さ」を決める際は「主人公達がメインに使う移動手段」とセットで考えるのが良いと思います。
例えば徒歩メインの世界観だとだと日本ぐらいの陸地でも十分広いですが、自動車相当の移動手段があれば手狭になりそうです。
高速飛行手段を手に入れれば、ヨーロッパ大陸もひとっ飛びで横断できそうですね。
移動手段が便利すぎると今度は道中の旅の楽しみが薄れてしまいますので、毎度毎度投げっぱなしで申し訳ありませんが書き手の皆様のお好みのバランスで仕立て上げるのが良いと思います。
▼紹介コーナー
『フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~』
(http://ncode.syosetu.com/n6768bf/)
生産チート系で、移動手段がやたら多いのが特徴です。
徒歩、馬車、ワンボックスカー、船、潜地艦、バイク、飛空船まで確認。あとは宇宙に出れば完璧かと。
『マギクラフト・マイスター』
(http://ncode.syosetu.com/n7648bn/)
こちらも移動手段が豊富です。いわゆる工学チート系。
あと世界の広さとかそれに伴う重力問題の解とかをきちんと作中で説明している希少な作品です。