【経験値】 ~モンスターを倒す以外にも~
「経験値を溜めてレベルアップ!」
これはここ何十年かでRPGの流行と共に急激に広まった言い回しだと思います。特にある程度若い方ですとこれだけでほぼ通じる気がします。
では【経験値】とは何か? 実のところ上手く説明できる人はあまり居ないのではないでしょうか?
そんな訳で、今回はこの【経験値】にスポットを当ててみたいと思います。
▼「経験値」の正体
まず【経験値】とは何でしょうか?
少なくとも「お金」のような物品とは違いますね。お金を払って【経験値】を譲渡したりはできないゲームが殆どです。
一部のゲームでは【経験値】をゲーム内通貨やリアルマネーで買えたりしますが、少なくともプレイヤー同士がお金を払って【経験値】を直接受け渡しするようなことは基本的にできないはずです。
では【経験値】はエネルギーの一種でしょうか?
無形資産という点では近い気がしますが、熱量や電力みたいな物理学的なエネルギーに比べると掴みどころがないですね。
「戦いや冒険の経験を判りやすく数値化したもの」と言われる方も居ることでしょう。ある意味模範解答です。
ただそれだけだといわゆる「はぐれメタル」みたいなボーナスモンスターの存在が説明できないです。上の理論だと苦戦すればする程経験値も溜まるはずなのに一部の人は楽して大量の【経験値】を稼げるという状況ですから。
実際、戦いの経験という意味なら、「弱い敵相手に無双する」よりも「強い敵と死力を尽くして戦ったが負けそうになったので逃げた」方が【経験値】が溜まって然るべきですが、ゲームのシステムでは逆になってるのではないでしょうか。逃げ出すと【経験値】は0点、悲しいですね。
さて、貴方の考える【経験値】とは何でしょうか?
もっと突き詰めるなら、貴方の感覚では、どんな行動を取ったときに【経験値】が溜まるのが正しいゲームシステムでしょうか?
▼経験値取得法いろいろ
これも過去のゲームから実例を出してみます。
ゲームによってはモンスターを倒す以外にも【経験値】を溜める手段がありまして、上手く利用すれば危険を冒さずレベルアップできたりもします。
自分の目指す方向と一致するものがありましたら作中で採用してみるのも良いと思います。
・クエストをクリアする
TRPG(卓上RPG)ではお馴染みの手法ですが、最近はコンピュータRPGやネットゲームでも割と見かけます。
冒険者ギルドや酒場の依頼をこなしたり、領主からの命令を遂行したりすると、成功報酬と一緒に【経験値】が入ってくるシステムですね。
小説での描写でも、ギルドのクエスト掲示板に報酬と一緒に『経験値○○点』と添え書きがあったりするとシュールでゲームらしい光景になりますが、その世界の住人が【経験値】をそういうものと割り切っているなら有りだと思います。
・人助けをする
上のクエストクリア型と似てますが、昔のRPG「イース」シリーズで実際にあった手法です。
困っている人を助けると何故か【経験値】が貰えます。その場合【経験値】の正体は「神様からのご褒美で、エネルギーみたいなもの」にしておくとそれなりに整合性も取れる気がします。そう言えば「レベル神」を呼び出してレベルアップの儀式をして貰うちょっとえろいRPGが昔……げふんげふん。
と、ともあれ、日本式のRPGは行く先々で人助けをしながら旅を進めることが多いですので、結構日本人好みのシステムじゃないかと思います。
ただクールでシニカルな主人公には相性悪そうで、登場人物や世界観含めて「優しい」作品向けのシステムですね。
・罠や謎解きを突破する
こちらもTRPGではよく見る手法です。モンスターと同じように罠や謎解きや過酷な自然環境等にも「障害レベル」やそれに応じた【経験値】が設定されているものがあります。
戦闘に限らず「冒険全般の経験」と考えると、登場人物を苦しめるあらゆる要素は、それを突破した時の経験が次に生きるものだと言えます。
人間が様々な要素を考慮して判断するTRPGならではの手法ですが、そういうアナログ的な判断がかえって小説向けになるのかも知れませんね。
他にも、D&Dでお金を貯めるとか、ソードワールドで判定にファンブルするとか、GURPSでキャラクターらしい演技をするとか、トーキョーN◎VAで神業を的確に使うとか、システムによってはユニークなのもありますが小説として考えると色物なのでここでは軽く流します。
▼まとめ
結論としましては、貴方の考える【経験値】の正体=どんな行動を取った時に【経験値】が貰えるのが貴方にとって違和感無く受け入れられるか、ということです。
小説でもレベリングの際に初心者を危険な迷宮に連れて行く描写を結構見かけますが、もし他にもっと安全に【経験値】を稼ぐ方法があればわざわざ迷宮に向かう手間も省けますし、現在主流のレベリング論に一石を投じてみるのは如何でしょうか?