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夏の終わりに

作者: 理人。

「毎日同じことの繰り返し。何もかもがつまらなく感じるんだよね」


そうぼやいていた、ちょうど1年前。

どこまでも繋がっていそうな広くて青い空を眺めながら片手にスポーツドリンクを握って何をすることもなく過ごしていたあの日。ちょっと前まで漠然としていた未来、分かれ道がすぐそばまできているとは知らずに無駄な時間を過ごしていたんだなと今では思う。


「あと半年かぁ」


「半年って長いな」


「そうでもないよ、あっという間だよ」


まぶしいくらいの太陽の光から目をそむけるように俯いたそのときの友達の言いたいことが今なら痛いくらい分かる。

勉強が嫌いだった僕にとっての半年と何かを受け入れはじめていた友達にとっての半年は同じ長さでも全く違っていたことだろう。


夢がないわけじゃない。

希望がないわけじゃない。

だけど、怖いんだ。何が怖いのかは分からないけど怖いんだ。


友達はどこか遠くを眺めながらそう呟いた。僕は意味が分からずにふぅんと返すことしかできなかった。


半年は友達の言うとおりあっという間に過ぎ去って、窮屈に感じていた制服を脱いで過去になった。

自由というものを手にいれたはず。だけど何故か心は満たされなくてただただむなしさに覆われる日を送るだけの今。まぶしいくらい輝く太陽も、青く広がる空も何も変わりはしない。でもあの頃よりも色あせて見える。


これが大人になるということなのだろうか。


毎日休む暇もなく過ぎていく。時間は何も変わってはいないのに。



約束をせずとも毎日顔をあわせていた日々

つまらないつまらないと言いながらも小さなことで笑えていたあの頃

きっとあれが幸せだったんだろう。


1年前より小さく感じるスポーツドリンクを片手に今を歩く。

隣には誰もいない。ただ僕一人、黒い人波にさらわれながら退屈な日々を歩いている。

あのとき一緒に笑っていた友達もまた、きっとこの波のどこかで同じことを思っているのかもしれない。


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