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集められた理由

「あのさ、俺たちがパーティを結成してから、ずっと聞きたいと思ってたんだけど……」


 町を出て、草原を歩いている最中にスザクは三人に尋ねた。

 全員が、「何事か?」という感じでスザクを見つめる。


「なんで、こんなに早く集まったんだ?」

「『魔王がもうすぐ出る』とおばば様に言われたからですよねぇ?」


 フランが答え、二人が頷く。

 おばば様というのは、先祖の勇者時代からずっと生きているとされる占い師のことである。年齢不詳。知ってもしょうがないので、スザクからすれば聞く気もない。

 そのおばば様から、『近い将来、魔王が出るから旅立つのじゃ』などと言われて、集まったのは分かり切っている。

 スザクが聞きたいのはそういうことではないのだ。


「三人とも疑問に思わないわけ?」

「何が?」

「分からんな」

「うーん、何が言いたいんですかぁ?」


 三人とも何も疑問に値する事がないらしく、首を傾げ、改めて考える素振りを見せる。

 その様子を見て、スザクは少しだけ呆れながら尋ねたかった質問を口にした。


「だからさ、集めるなら『魔王が名乗りを上げてからでも良かったんじゃないか?』って俺は言いたいんだよ」


 その質問に三人はきょとんとした表情を浮かべ、すぐに納得がいった表情に変わる。


「あー、それもそっか」

「言われてみればそうですねぇ。もうちょっと修行期間が増えたかもしれないですし、もうちょっと修行を頑張って完璧に調整したかったですぅ」

「私としては武者修行感覚に今の旅も近いけどな。しかし、言われてみればそれもそうかもしれん」

「案外、お前らも場の流れに身を任せるタイプだったか」


 自分のことは棚にあげ、スザクはため息を吐いた。

 フランはそういう場の流れに流されやすいタイプだというのは雰囲気からして分かっていたが、アリスとアヤカも流されていたというのはちょっと意外だった。


「そんなこと言われたってしょうがないでしょ? さすがに両親に追い出されるように凄まれたら……」

「アリスもか。私もだったな」

「ワタシもそんな感じでしたよぉ」


 三人はその時のことを思い出したようにげっそりとした表情。


「へー。なんだかんだで大変だったんだな」

「え?」

「スザクは違うのか? お前こそ、一番に親に追い出されるタイプの人間だろう?」

「勇者としての自覚がその頃はあったんですかぁ?」


 スザクの他人事のような言い方に、アリスとアヤカが意外そうな顔つきで尋ねる。

 しかし、フランだけはスザクのことを褒めたいのか、それとも貶したいのか、よく分からない中途半端な質問がスザクへ向けられた。


「失礼な言い方をするな、フラン。自覚とか別にして、さっさと家を出たかったのは本音だぞ。朝から晩まで……下手したら徹夜で修行させられてたせいで嫌気がさしてたしな。正直、お前らよりも俺は自由がなかったと思う」


 その言葉で、三人はスザクがゲームに固執する理由が分かったらしく、


「あー、その反動のせいね」

「同情しようと思ったが、現状が最悪だから同情できんな」

「ですねぇ。駄目駄目勇者ですし……」


 と残念そうに言った。


「俺はこれでいいの。どうせ、魔王が出たら、戦いの日々になるんだからさ」


 そう言って、スザクは三人を無理矢理納得させることにした。

 本音は魔王が出たところであまり働くつもりはない。『勇者が魔王を倒せ』というのはあくまで昔や童話、はたまた劇の話で十分と思っているからだ。魔王を倒し、世界を守れるという結果が欲しいのなら、この三人のうちの誰かが魔王を倒しても良いわけで。それだったら、スザクは自分の世界を守るために戦うことを優先することにしていた。それが、今はゲームのためだとしても。

 瞬間、スザクの頭にアヤカの剣(鞘付き)が落とされる。


「いたっ、なんだよ!?」

「今、ロクでもないこと考えてたろ?」

「は?」

「暗殺者としての直感がそう告げたんだ」

「ワタシも感じましたよぉ」


 と、フラン。


「感じるというか顔に出てたよね」


 さらにはアリスまで続く。


「何を考えようが俺の自由だろ」

「考えるだけならばいいのだがな」

「考えるだけならね」

「考えるだけでしたら問題なしですよぉ」

「……それを行動にも移すから駄目だ、とでも言いたげだな」


 三人はあっさりと頷く。

 この三人はどれだけ自分のことを分かっているんだ、とスザクは思う。その通りではあるけれど。


「俺のやる気はほっとけ。つか、敏感すぎ」

「それほどまでにやる気がないのが悪いだろう」

「史上最悪な勇者かもね」

「そんな勇者も好きですよぉ」


 アリスとアヤカの毒舌、フランの愛情表現を無視するかのように、スザクは歩みを少しだけ早める。

 目的地の洞窟まで距離はまだまだあるらしく、くだらない話をしながらも四人は目的地に向かって歩き続けた。


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