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エピローグ(4)

 スザクはゆっくりと目を開けると、アリスとフラン、アヤカの姿が目に入る。

 三人ともスザクが目覚めるのを興味深そうに見つめている様子だった。


「え? なんだよ?」

「何でもないですよぉ?」

「おう。……やっぱ無理、気になる」


 フランの返事に一度頷くものの、すぐにスザクは意見を翻す。


「どうやら成功みたいだな。完全に目が覚めてるようだ」

「え……あ、ああ。これのことか。っていうか、二度目なんだから慣れろって」


 アヤカの言葉の意味をスザクは即座に理解し、自分の耳に付けられている十字架のピアスに触れる。

 スザクと同じようにアリスはハート型、フランはドクロ、アヤカは四角い物をそれぞれ付けていた。

 これは今回の依頼達成後、スザクたちが新たに購入したものである。


 スザクは知らなかったが、アリスたち三人の中ではピアスを買うことが決定していたらしく、魔法で現在位置と無線機能を付与させたとのこと。もちろん、スザクも魔王が復活した現在いま、その機能は大切だと思い、賛成した。

 今回、スザクを起こしたのはその無線機能である。現実世界はともかく、仮想空間にまで反映されると思っていなかったスザクも最初は驚きを隠せなかった。

 それは魔法をかけた本人であるアリスも驚きを隠せないほどの出来事だったらしい。


「いやー、二回目だけどすごいよねー。人間やる気を出せばやれるものなんだってことを実感できる。うん、私って本当はすごかったんだ」

「自画自賛してどうするよ?」


 なんてスザクが突っ込みを入れると、


「じゃあ、ワタシが褒めてることにしましょう」

「私も褒めよう」


 とフランとアヤカが乗っかってくる始末。

 スザクとしてはそのことはどうでも良いと考えて、改めて周囲を確認する。

 今まで並べられていた物は片付けられ、宿屋に初めて来たような状態へと戻されていた。


「片付け終了したのか」

「はい、もういつでも大丈夫ですよぉ!」

「買い物も済んだしな。というか、あの依頼の報酬が凄かったな……」


 アヤカは満足そうな笑みを浮かべ、苦笑いを漏らす。

 それに同調するようにアリスとフランも苦笑い。

 もちろん、それはスザクも同じだった。


「魔王の奴、いったいどういうつもりなんだろうな」

「本当は良い人なんですかねぇ?」

「いや、それは絶対にないだろ」


 フランの間抜けな発言にスザクは即座に突っ込みを入れた。

 しかし、そう思いたい気持ちが分からなくもなかったからだ。

 なぜなら、ゴーレム討伐の依頼の報酬がしっかり支払われていたからである。ちなみにアリスはその依頼の報告をしなかった。しなくても、魔王が復活したという事実が依頼者である幹部には分かったはずだから。


 それなのにきっちり依頼が払われていたのだ。

 だからこそ、フランの発言も仕方のないことだった。

 ちなみにそのお金で、アヤカの刀も前と同じように両刃の剣を鍛冶屋で造ってもらい、アリスが封印をかけて、危なくないようにしている。再び封印した理由はアヤカ曰く、「最後の手段」だかららしい。


「でも、私たちって魔王のこと何にも知らないんだよねー。なんで、この世界を手に入れようとしてるのかも」

「この旅で分かると良いんだがな。昔みたいに悪いから倒すだけじゃなく、話し合いで解決に持っていくのも一つの手段だろう」

「話し合いで解決って……丸くなりすぎだろ」


 アリスとアヤカもフランに賛同するかのような発言に、スザクは思わず頭を抱える。倒さないといけない相手に対し、甘すぎる発言をするほど、この三人の心境の変化がスザクには分からなかったからだ。


「私たちの変わりにように驚いているみたいだな」

「手に取るように分かりますぅ」

「こうなったのもスザクのせいなのにね」


 三人の言葉にスザクは間抜けな表情を取ることしか出来なかった。スザクはそんな行動を一度もしたつもりはなかったからである。


「人は見た目じゃないんだってことだよ」

「そうですよぉ。いくら普段が不真面目な態度を取ろうとも、その中に持つ心の強さが大事って事ですぅ」

「そういうわけで、私たちも変わろうと思っただけだ。いくら、魔王といえど中身は分からないだろう? 話せば通じる相手かもしれない。スザクの戦闘時の頼りがいと同じようにな」

「なに、その平和主義者的発言。つか、魔王は人じゃないと思うぞ?」


 スザクが反応できる範囲を超える発言をしていた三人に、スザクは呆れてしまっていた。

 それでも気持ちはよく分かる。

 なぜなら、スザク自身ものんびりゲームをしていたい、という思いがあったからだ。戦闘なんて辛いだけだし、ゲームみたいに馬鹿なことを出来るような生活を送りたいのは今も変わらない。


 だからこそ、話し合いで解決する決着も一つの終わり方だと思っていた。実行するにはかなり大変そうだし、何よりも三人がそんなことを許すとは思っていなかったため、口には出さなかったのだが……。

 そんなスザクの気持ちを知らずか、


「さ、そろそろ行こっか?」


 アリスが代表して、そう言うと


「ああ、そうだな」

「行きますかぁ!」


 とアヤカとフランが賛同し、スザクを見つめる。


「冒険者じゃなくて『勇者』として出るか。じゃ、改めてよろしく頼むな」


 スザクが三人を順番に見た後、スザクは今まで使っていたこの部屋を振り返ることなく、部屋を出た。

 三人もスザクの後に続く。

 こうして、新たな勇者たちの物語が今、始まる。


 今まで読んで頂き、本当にありがとうございます。この作品を無事に完結させることが出来ました。

 この作品を完結させた理由は何個かありますが、一番の理由は『区切りを付けたい』という理由からです。何かしらの理由があって、続きがかけなくなることもあると思います。そういうのをなくしたいからこそ、ここで完結させて頂きます。もしかしたらシリーズ物として続編を書くかもしれません。未だに未定ではありますが……。

 その時があれば、またぜひともよろしくお願いします。


 以上、あとがきでした。

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