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遺跡攻略(1)

 遺跡の中は完全に迷宮と化していた。

 至る所に上る階段や下る階段があり、三人が目指すゴーレムが何処にいるのかすらも分からないような造り。ここまで面倒くさい遺跡を作った人物に対して、アリスたちは苛立ちを感じていた。

 理由は単純である。

 攻略するのにかなりの時間が掛かるから。


 しかも、そこまで強くない魔物からの殺気が三人にガンガン飛んでくるのだ。姿が見えている物はそそくさと逃げていくのだが、物陰から様子を伺っている魔物は奇襲をかけてくる雰囲気を醸し出している。

 先ほど、アリスが結界を張る時にアヤカが言葉を濁した意味を二人は改めて痛感した。


「うわ、これは本当に時間がかかりそう」

「どの道が正解か分からないですぅ」


 フランは周囲を見回しながら、ため息を漏らした。


「まぁ、こういうのはだいたい下る方が正解なんだろうが……下に向かってると思いきや、上に向かってる階段もあるんだよな。例としてあれか?」


 アヤカが近くにある下る階段を指差し、それを指でなぞるように示して行くと最終的には二階に向かう通路に辿り着く。


「見た目に惑わされないように進まないといけないんだね。さ、どうする?」

「どうこうも私の能力で進まないといけないんだろう?」

「それもそうなんだけどさ」

「なーに、いつも通りだから気にするな。一列になって進んだ方がいいだろう。先頭は私が務める。間にフラン、殿しんがりはアリスだな」


 そう言って、アヤカは透視の能力を発動させる。

 名前の通り、壁などを見透かす暗殺者としての能力。

 あくまで暗殺対象の位置を探るのが本来の使い方だが、アヤカの場合は遺跡攻略に使う事が多くなっていた。とは言っても、限界が壁二枚分であり、最終的な判断はアヤカが決めてしまう。

 もちろん、初めての遺跡攻略の時にそのことは三人に説明してある。現在いまでは何の異論もなく全員が大人しく付いて来てくれるため、アヤカは結構気楽に道を選ぶことができ、その結果、迷う事の方が少なくなっていた。


「遺跡って、なんでこんな複雑な造りをしてるんですかねぇ。いつも気になるんですけどぉ……」


 しばらく無言で歩いているとフランがぼそりと口にした。


「んー、なんか大切なものを隠すためじゃないの?」

「それは分かるんですけどぉ、こういう遺跡って先祖さんたちが攻略してると思うんですよぉ。ああいう破壊のされ方とか……。ちなみにあれは斬撃の跡ですよねぇ?」


 フランが指差した方向には粉々になった柱、その奥には引っかき傷にしては深く抉られた跡が残っていた。

 アリスもその跡を見るだけでフランと同じ答えに至る。


「アヤカさんはどう思いますかぁ?」

「んー、あれは貫通してると思うぞ?」


 アヤカはおもむろに身構えると抜刀。振るった軌跡から真空刃が生まれ、壁にぶつかるもそのまま貫通し、魔物の絶命の雄叫びが部屋に響き渡る。


「私ぐらいの実力がないと駄目ということだろうな」

「さすがですぅ。ということは、あれも何かによる破壊ですよねぇ」


 フランはアヤカの腕前に拍手しつつ、床と柱を抉ったような球体系の攻撃跡を指し示す。


「あれは……こういう魔法になるんじゃない?」


 その質問に答えるようにアリスは小声で呪文を唱える。そして、それより少し奥の場所にある壁に向かって手を向けると、内側から吸収されるようにその部分が消え去る。

 アリスの今使った魔法は重力系の魔法だった。

 本来は上から下に向かって使うのが正しい使い方であるが、今回はあの破壊跡を真似るため、設定した一点に向かって重力を集めるようにしたのだ。つまり、一種のブラックホールのようなもの。ただ、ブラックホールと違うのは、吸収ではなく単純に押し潰しているということである。

 その違いを示すかのように、その魔法が終わると中心には圧縮された石ころが小さな音を立てて落ちた。


「ナイスだな、アリス。今のところに何体か束になった魔物がいたんだ」

「あー、やっぱり? 殺気がガンガン飛んできてたみたいだから、あそこに向かって放ったんだけど……思ったとおりで良かった」

「あー、やっぱりいたんですかぁ」


 完全に他人事のように語るフラン。

 気付いてはいたものの、二人に戦闘を任せるらしく、のん気そうに鼻歌を歌いながら歩いていた。


「さっきから楽してるでしょ、フランさん」

「そういうわけで、次はフランの番だからな。スザクみたいに楽はさせないぞ」

「えー、二人だけでも十分じゃないですかぁ!」


 慌てて、そう反論するも二人は口を閉ざした。

 何を言おうとフランに戦闘をさせることしか考えてなかったからだ。

 いや、それ以上に他の理由もあった。

 それは上から攻撃を仕掛けてくる魔物の存在に気付いたからである。何匹居るのか、把握できないほどの数が落下してくるため、フランが反撃しやすいように集中させてあげようという二人の優しさだった。


「まったくもぉ。タイミング良すぎですぅ」


 フランはアリスのように呪文を唱えるような素振りも、アヤカのような攻撃を構える動きもしなかった。それは普段の腕を掻っ切る行為すらも。それなのに、フランの真上に漆黒の円状の空間が三人を覆うように展開される。

 そして、落下してきた魔物は自ら飛び込むようにその空間に入り、しばらくすると複数の絶命の雄叫びが遺跡内に響き渡った。


「捕獲完了ですぅ」

「酷い捕獲方法だな。生きたまま腐食させるとか」

「しょうがないじゃないですかぁ。こっちの方が手っ取り早いんですしぃ。というよりも魔粉化したのを元の形にするのって、意外と面倒な儀式が多いんですからぁ。まぁ、するとしても相当使える奴しかしませんけどぉ」

「中ではどんな感じの行動が起こっているのか、気になるよ」


 かえって好奇心を刺激されたアリスは思わず、そう漏らす。


「そんなに気になるなら教えますよぅ。中に入ると――」

「あ、やっぱりいいよ」

「なんでですかぁ! 興味を持ったんですよねぇ!?」

「少しだけ興味を持ったんだけどね、そうあっさり答えられると怖いことにしか思えなくなったの」

「確かに怖いと思いますけどぉ」

「だから遠慮するの。それに、それはフランさんだけの能力なんだから、あまり他人に教えるものじゃないよ」

「……それもそうかもしれないですけどぉ……」


 ものすごく残念そうに呟くフラン。

 アリスが珍しく興味を持ってくれたのがかなり嬉しかったようで、その嬉しさ分の反動を受けてしまい、一気に沈み込む。

 その一連の会話を聞いていたアヤカが疲れたようにため息を吐いたかと思うと、


「そう言えば今、女三人しかいないんだよな」


 と白々しく呟いた。


「そうだけど、どうしたの?」

「スザクもいないことだし、今朝、相談したことについて話し合わないか?」

「あー、女の子らしい趣味とかそういうのね」

「そうそう」

「あ、いいですよぉ。どうせ魔物を倒しながらだけなんで暇ですしぃ」


 未だ沈んだままだったがフランも承諾。

 こうして三人は着実にゴーレムの元に向かいながら、再び女子トークを始めた。


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