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信頼してるから出来る事

「ねぇ、アヤカの予想で良いんだけどさ。遺跡に入ったとして、何分ぐらいでここに戻って来れそう?」


 アリスはそう言って、アヤカを見つめる。

 アヤカは一度遺跡の中に入り、すぐに出てきた。ちょっとだけ悩んだ表情をしており、簡単には結論を出せないような雰囲気を出している。

 そのことを察したアリスは、


「やっぱり長時間持つやつにしないといけないみたいだね。ま、それまでにスザクが起きて、私たちを追って来る可能性も計算しないといけないのかー……」


 と腕を組みぼやく。

 そして、再びスザクを見つめながら一番の問題を呟いた。


「スザクの実力が分からないんだよねー。それのせいで、どんな結界だったらスザクが解除できるのかが分からない」

「ああ、その通りだな。私も未だに把握出来ていない。つか、見せようとしないんだよな」

「あれ、意外ですぅ。アヤカさんなら、もうある程度は把握できてると思ったんですけどぉ」


 とフラン。


「二人に言っておくが、前にスザクと組手をした時のことを覚えているか?」

「地獄の組手ですかぁ? 『参った』と言わない限りは止めさせてくれないという恐怖のぉ……」

「酷い言われようだな。少なくともスザクの脚色も入ってるんだがな。面倒だし、正直認めたくないことがあるから言いたくなかっただけだ」

「え、なにそれ。そんな裏話があるの?」


 アリスが興味津々で目を輝かせる。

 というよりも、アヤカが認めたくないほどの事実があることに興味があるようだった。


「裏話というか――少なくとも、スザクは全力じゃなかったってことは間違いない真実だ。生身としての限界だったのかもしれないが、私たちでさえ本来とは別の能力を手に入れているのに、スザクだけ『ただの勇者』ってことはないだろう。そして、先に気絶したのは私だったってことだ。部屋に戻ったのは深夜だったし、二人とも既に寝てたから分からないだろうが、私が自力で部屋に戻った記憶が一切ない」

「つまりそれって――」

「私の記憶に間違いがなかったら、スザクが運んだということになるな」

「なんで本当の実力を隠してるんですかねぇ」


 フランは呆れたように呟く。

 それはアリスとアヤカも同じ気持ちだった。自分たちにいくら実力があったとしても、やっぱり戦闘にはなるべく参加して欲しい。それだけで負担が少しで減るからである。

 かと言って、戦闘に関しての負担を三人が今まで感じたことがないのも事実だった。


「じゃあ、手っ取り早く単純な結界にしとこうかな」


 アリスはそう言って、スザクに手をかざして準備をし始める。


「どんな結界にするんですかぁ?」


 フランがその様子を見ながらアリスに質問してきたため、


「反射結界の外部からの攻撃に強いタイプ。ついでに結界を一撃で消すことの出来る消失点を、移動させて壊れにくくする系かな。消失点も、ある程度強い衝撃を与えないと壊れない感じにしたら問題はないと思うよ? あくまでスザクが自力で割れるほどの実力はいるけど」


 後半は苦笑いしながら答える。


「ほう、じゃあ……その結界にある能力も付加できるか?」

「どんな能力?」

「そういう結界を三重ぐらい張って、スザクに近い結界は、二枚目が破壊された時に頬を擦れるような砕け方にしたらどうだ? それなら、外側のはかなり強固なもので問題ないだろう?」


 アヤカの提案にアリスは少しだけ唸る。

 そういう結界を作れないわけではない。理論上は作れるが、そこまでのものを作った経験がないので不安だったのだ。


「無理ならしなくても大丈夫だからな。所詮、アリスが張る側であり、私の考えは提案に過ぎない」

「そういう結界を作るのも良い機会だと思うし、ちょっとスザクで実験してみようかな? 防具着てるから身体に当たっても大丈夫だと思うし」

「おいおい、それはちょっと可哀相じゃないか? 目とかに当たったらどうするつもりだ?」

「そうですよぉ! さすがにそれは問題があると思いますけどぉ!」


 フランもアヤカと同じように心配そうに見つめるが、アリスは構わず準備をし始めた。

 小声で呪文を唱え、スザクの周囲を囲むように三個の結界を展開させる。普通ならばそれで結界は完成のはずが、アリスはその後に追加で呪文を加えているらしく、普段より呪文を唱え終わるのに時間が掛かっていた。

 集中しているアリスの邪魔をするわけにはいかないので、二人も自ずとその様子を大人しく見守る事になる。

 展開が完了した合図を知らせたのは、アリスの一言だった。


「はい、完成!」

「ワタシたちは止めたのにぃ……」


 とフランの漏らす愚痴に、


「大丈夫だって、私はスザクを信じてるから」


 とアリスは自信満々に答える。

 アヤカはアリスのその答えに首を傾げた。アリスが自信満々に何を信じているのか、分からなかったからだ。

 それはフランも同じだった。

 二人が質問する前にアリスは続けて、


「スザクだって、さすがに違和感を覚えるでしょ。一時間過ぎても起こさないという状況に気付いたら。だから、アヤカの言う通りの結界を作ってみることにしたんだよ。三枚目はかなり強固に作ったし、それまでに目が覚めると思うよ? 大群で来ないかぎりはそう簡単に破れることもないしね」


 なんて、確証もないのにアリスは笑みを浮かべる。


「じゃ、遺跡に入ろうよ。スザクが目を覚ます前に戻ってくる予定でしょ?」

「ああ、そうだな」

「ですねぇ」


 アリスがそう言って、遺跡の中に入る。

 その様子を見ながら、アヤカはフランに向かって小さく呟いた。


「信頼度ではアリスが上手だったな」

「負けないですぅ」

「私もさ」


 アリスを最大のライバルと再認識した二人は、アリスに続き、遺跡の中に入る。


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