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アヤカとの会話(2)

 二人は再び沈黙した。

 話すことがないというよりはアヤカがスザクの眠気を気遣い、黙っているようだった。しかし、傍に人がいるというのに静かにされているというのも違和感があり、スザクは寝付くことが出来なかった。

 アヤカが何をしているのか気になったスザクは、うっすらと片目だけ開けてみる。

 すると、スザクと同じように横になり、笑顔で夜空を見つめていた。


「ん? 眠れないのか?」


 スザクの視線に気付いたらしく、アヤカはスザクの方へ顔を向ける。再び眠りに就くことが出来ないのは自分のせいなのか、と少し心配そうな表情になって。


「傍に人がいるというのに、そんな風にぼんやりとされてちゃ眠れないんだよ」

「難儀な性格だな」

「うるせぇよ」

「知ってるんだぞ、スザクは私たちが寝静まった後に寝てる事ぐらいな。でも、今回は気にせずに寝るしかないぞ」

「そういう寝方しかして来なかったから、寝つきが悪いのは仕方ないだろ」

「それとも違う方のネタを暴露した方がいいか?」

「あん?」


 思わず、スザクは変な声が出てしまう。

 アヤカの言葉の意味がよく分からなかったからである。

 少なくともさっきの『三人が寝た後に寝ている』というのは知っててもおかしくなかっただろう。それは間違いなく、スザク自身が先に寝ている姿を三人には見せた記憶が全くないから。


 しかし、他に隠していることが思い当たらなかった。

 確かに隠しておきたいことは色々とある。『勇者としての奥の手だから』という理由がないわけではない。というよりは他にもあるにはあるが、アヤカにバレるようなヘマはしていないつもりだった。

 そんなスザクの考えを見透かしたような表情でアヤカは言葉を紡ぐ。


「甘いぞ、私は意外とスザクのことを見てるんだぞ。いや、アリスとフランも同じだけどな」

「はいはい。んで、何に気が付いたんだ?」

「一日ぐらいは寝なくても平気なんだろう? 体質の問題か、それとも鍛えられてそうなったのかは分からないが……」

「不正解。三日は行けるぞ」

「ちっ、ハズレだったか。カスってたから七十五点ぐらいか?」


 アヤカは残念そうに舌打ちを打った。

 日数の正解など僅差過ぎて、スザクはどうでも良かった。一番気になることは、それをどこで気が付いたのか、ということである。

 スザクがそういう顔をしているのに気付いたがアヤカは、スザクが尋ねる前に、


「ゲームのプレイ時間を考えれば簡単に分かったぞ? 普通にあれだけ徹夜をしてたら眠そうな顔をしているものだが、全くそんな素振りを見せなかったからな。単純にゲームをしてるのか、それとも寝ているのか分からないのが難点だったが、毎日プレイしてると考えても、睡眠時間が少なすぎるという結論に至ったのさ」


 まるで推理をし終わった後の名探偵のごとく、自慢気な表情をスザクへと浮かべてみせる。


「それって推理っていうほどでもないと思うけど……、よく分かったな。ぶっちゃけ毎日は寝なくても問題はないけど、三日フル稼働した後のデメリットが大きいからしないだけさ」


 スザクは肩をすくめた。

 そこの答えへの辿り着き方が予想以上に単純だったからである。ゲーム以外に何もしてないと言えば何もしていないのは確かだが、もうちょっと違う方面から見出したのかと期待していた分、がっくりきてしまったのだ。


「デメリット?」

「四日目に入ると同時に眠気がやって来て倒れる。そうなったら一日は絶対に行動不能確定だ。その間は間違いなくアヤカたちに守ってもらうことになる。どんなことをされても絶対に起きないことを考えると、ゲームをしてる時よりも最悪かもな」

「下手したら、最悪なタイミングでピンチになりかねないな。だから、普段から寝ているのか。そうじゃなかったら、寝ない方がスザク的にはかなり都合のいいゲームライフを送れるからな」


「そういうこと。少なくとも一時間、長くて四時間ぐらいは寝た方がコンディションはばっちり……かな。まぁ、一日ぐらいならそれも維持できるけど、二日目からは精神力勝負になるし……」

「ほう、なかなか便利な身体をしてるんだな」

「っていうか、それより聞きたいのは『なんで三日起きていられるか』の秘密だろ? 」

「……いや、止めとこう。なんとなく察する事が出来たからな」

「別に聞かれたところで減るものでもないけど……」

「構わん。言われた所で励ます言葉も見つかりそうにない」


 アヤカは完全に聞く気を失くしたようで顔を再び夜空へと戻し、拒否の意思を示した。

 直感で悟ってしまったのだろう。

 これも修行の一環で手に入れたものだということを。いや、両親から聞いた話を思い出したのかもしれない。

 勇者と魔王の決着が着いた日数が、戦い始めて三日後ということに。それに因んでいるということも。

 その会話以降、二人は喋る事はなかった。

 少なくともアヤカがこの件で気を使ったのか、それともスザクを寝かさせようしてあげるために口を閉ざしたのか分からない。

 ただ、気が付いたらアヤカの方が先に寝ていたというのは確かな事実だった。


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