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野宿(2) (アリス視点)

「スザク、こっちに来ないでよ?」


 夕食が終わり、しばらくした後、アリスが真剣な目でスザクにそう言った。

 意味が全く分からないスザクは首を傾げつつ、「はいはい」と流し、興味がないような素振りを見せる。

 その様子が信じられないアリスは、さらに念を押すように、


「本当に分かってる!?」


 と言ってみるが案の定、スザクは本当に興味がないような素振りで木の根元に凭れて、眠そうに欠伸をしている。

 アリスからしてみれば、なぜこんなにも興味がないのか、意味が分からない。


「どうでもいいから、用事があるならさっさと済ませてこいよ」

「分かったよ!」


 アリスはちょっとだけ拗ねたようにスザクの元から離れ、すでにフランとアヤカが待っている場所へと向かった。


「スザクはどうだった?」

「来ないって約束してくれましたぁ?」


 フランとアヤカはタオル一枚で、三人が入るにはちょっと広いぐらいの温泉に身体を浸からせ、ようやくやってきたアリスにそう尋ねた。

 この温泉は野宿の準備した際にアリスが造ったものである。前回の依頼の時、お風呂に入れず、身体が気持ち悪くなってしまったため、それを教訓に今回は準備したのだ。

 スザクはこのことをまだ知らない。

 先ほど、アリス念入りに注意していた理由は不思議がって温泉の方に来ないようにするためである。


「相変わらずの女に対する興味がないみたい」


 アリスは防具と服を脱ぎながら答えるとアヤカが、


「ほう、それはそれで良い度胸だな」


 そんなスザクの態度がイラッときたようで、手をポキポキと鳴らし始める。あとで制裁が起きてもおかしくないぐらいの様子だった。


「ワタシは別に覗かれても大丈夫ですよぉ。なんなら一緒に入っても問題なしですぅ」


 とお湯が気持ち良いのか、のん気そうに言うフラン。


「一緒に入るのはともかく、男に生まれたなら覗きぐらいはして欲しいかも」


 ようやく脱ぎ終わった防具と服を近くの木に置き、アリスは温泉に身体を浸からせると、ホッとした表情を浮かべてそう漏らした。正直、この発言をするのはどうかと思うけれど、全然興味がないよりは少しは興味を持ってほしいという乙女心が働いてしまったのだ。

 なんとなくスザクが居る方向を見るけれど、何かが動くという反応は一切ない。唯一あるとすれば木の葉が風で揺れる程度の音ぐらいのものだった。


「見られたら見られたで怒るんだろうけどな」

「当たり前だよ、タダで見せるほど安い身体でもないし……」

「うむ、私が胸チラしても無反応だから楽しみというものがない。もう少し欲情してもいいと思うんだが……、そんなに魅力がないのか?」


 アヤカは胸を自らの胸を掴み、軽く持ち上げてみせる。この三人の中では一番豊満な胸だけあって、スザクを誘惑できると思っていたのだが、その予想が外れたらしく口を尖らせた。


「いいよねー、その胸」

「ですねぇ。そういうアリスさんもワタシよりも大きいですよぉ」

「そうでもないよ、中途半端だし」


 アリスも胸を軽く寄せてみせる。が、谷間が少し出来る程度であり、アヤカほど大きくはない。そのため、もう少しだけ胸が欲しいと思ってしまう。

 しかし、それはフランの前では絶対に言えなかった。

 フランは少しだけ膨らみがある程度だからだ。服によっては、まな板に見えるものもあるぐらいだった。


「胸が女性の全てというわけではないから、そんなに気にする必要はないぞ」

「何のフォローにもなってないですぅ!」

「すまん。ただ、私はこんなにも胸はいらなかったっていうのは本音だぞ? 剣士として邪魔だからな。剣を振るう時とか特にな」

「邪魔になる胸が欲しかったですぅ……」


 フランは顔半分をお湯に浸けて、ブクブクと空気漏らし始める。お湯から出ている目はアヤカの胸を羨ましそうに見つめていた。


「仕方ないな。こうなったら、私が胸を大きくなる方法を実践教えてやろう」

「本当ですかぁ!?」


 フランは即座に顔を出すどころか、立ち上がった。

 今まで見たことがない反応を見せた事に二人は少しだけ驚く。


「そんなに大きくしたかったんだ」

「じゃ、じゃあ私の前に座ってくれ」

「はいですぅ!」


 フランはそのままアヤカの前にダイブした。そして、大きな水飛沫が出来上がり、アリスとアヤカはその水飛沫に飲み込まれる。

 不意打ちの水飛沫に二人は「ケホケホッ」と咽ながら、フランの頭を軽く小突き、


「飛び込まないの!」

「飛び込むな!」


 注意すると、


「いたっ、すいませんでしたぁ! テンションが上がったんですよぅ!」


 と言ってフランは素直に謝罪した。


「いきなり大きくならないけど、徐々にしていけば大きくなるってことだからな」

「それでもいいんですぅ! ワタシの胸を大きくしてください!」

「よし、分かった」


 アヤカはそう言って、フランの胸を優しくだが揉み始める。しかし、揉むといってもほぐす程度の行動。しかし、それなりの感度はあるらしく、フランは小さく声を漏らし始めた。


「あ……んっ、はぁ……」

「お、意外と弱いんだな」

「あ、アヤカさんもっ……、こう……んっ……やって、おお……きくしたんです、かぁっ?」

「すまない、私のは遺伝だ」

「で、でもぉ……も、もむのうまっ……いですよぅ」

「なんか胸だけじゃなくて乳首も攻めてない?」


 とアリスが尋ねると、


「攻めるというか当たる。小さいからな、こういうことはよくある」


 満面の笑みでアヤカは答えた。申し訳なさが一つもない最高の笑顔で。


「そっか、それならしょうがないね」


 アリスはそう言って、二人から距離を取った。フランが力尽きた後、自分に標的が向かないように拒否の意思を示したのだ。

 この行為は間違いなく、フランの胸の大きくする事よりもアヤカが楽しむことを主にやっていると分かったからである。さっきよりもフランの嬌声が徐々に大きくなっているから。

 フランもフランで口に手で塞いで声を必死に我慢しているらしいが、限度を超え始めている。というより、アヤカの言ったように感度が意外にいいのだ。


「ほどほどにしなよ? スザクに聞こえるし……」

「分かってるさ」

「んぅ……こえ、がま……ん、でき……んっ……ない……」


 アリスはそんな二人から視線を外し、空を見上げる事にした。そして、胸の話になったことを心の底から後悔したのだった。


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