友達から聞いた話 1 相羽君ちの倉の話
相羽の家には倉があるらしい。
正確には相羽の祖父母の家に倉があるらしい。
毎年夏休みには祖父母宅に遊びに行くついでに、相羽と相羽のお兄さんと一緒に倉の大掃除をするのが恒例行事なのだとか。
ちなみに冬は寒くて掃除どころじゃないらしいので夏にするらしい。
要するにこき使っても大丈夫な人手がほしいんだろ、は相羽の台詞である。
これは夏休み明け、九月の半ば位に相羽に聞いた話である。
相羽は相羽のお兄さんと一緒に毎年恒例、倉の大掃除をしていたらしい。
相羽の家には変な風習や決まりごとがいっぱいある。本人はぶつくさ言うことも多いが、根が真面目な相羽はなんだかんだ守っているようだ。
閑話休題。
変な置物やら壺やら掛け軸やら…相羽はお兄さんと一緒にそのうち某鑑定番組に出してみようといいながら、埃を払ったり雑巾で拭いたり、虫干ししたりしていたそうだ。ちなみに僕も某鑑定番組は大好きだ。いつか生で「いい仕事してますねぇ〜」を聞いてみたい。うちの両親はごく普通のサラリーマンとスーパーのパートで、祖父母も普通の農家なので出品者としては最初から諦めている。僕は皿一枚に万単位のお金は出せない。
話がそれた。
そうやって掃除をしていくうちに大分綺麗になったので、外に出していた物を中になおそうということになったのだそうだ。
お兄さんは先に雑巾を洗って汚れたバケツの水を替えてくるために母屋の方に行ったため、相羽は先に作業を始めることにしたらしい。その中にそれはあったそうだ。
真っ白な陶器の皿。端っこには何かの花が小さく描かれているだけの。先に皿を運んでからその皿を飾るための台をとりにまた倉の外に出たらしいんだ。そしてまた台を持って倉の中に入ると、どこからか水の音が聞こえたんだって。水を入れてたバケツも掃除に使った雑巾もお兄さんが洗いに行ってるから、倉のなかにあるはずがない。
倉の中の物には水気厳禁なものもあるから、相羽はちょっと焦って一生懸命探したんだって。そしたらさ、さっき倉に運び入れた白い皿にいつの間にか水が溜まっていたらしい。びっくりして見てたら、今度は何とその中から白い手が二本でてきたんだって。その手は周りを探るよう周りを触りまくってたらしいんだけど、それを見て相羽、ブチ切れちゃったらしくて。
「ふざっけんなよテメェ!!何考えてやがる!水滴が周りに飛び散ってんじゃねぇか!!」
まぁそうだよね。その手、水の中から出てきてるんだから、当然水びたしだよね。とりあえず手に持ってた皿を飾る台でその手のことタコ殴りにしたら消えたらしいんだけど、周りに置いてあった木箱とか掛け軸とかに着いた水滴とかは完全には拭ききれなくて、幾つかはシミになっちゃったんだって。
当然おじいちゃんにはばれて、怒られた上にお兄さんにもたしなめられたらしくて(ちなみに相羽のお兄さんはとても気の長い温厚なお兄さんだ)。次会ったらタコ殴りじゃすまさんって怒ってたよ。
そういう話じゃなくない?って思ったけど、まぁ本人が気にしてないならいいんじゃないかな…